Thad Jones / The Magnificent Thad Jones

1956年録音のアルバムは、ついつい気になってしまう。このアルバムは、自分が生まれる半年近く前の録音。初めて聴いたのは学生時代のジャズ喫茶。新宿、中野、吉祥寺だったのかは思い出せないが、マイルスやクリフォード・ブラウンのトランペットに馴染んで自分の耳には、新鮮に感じたことは覚えている。暖かみというか、聴き手をゆったりと包んでくれる感じがした。

だが、タイトルがイケナイ。Magnificentとは「堂々たる」のような意味。決して、サド・ジョーンズが先頭に立ってセッションを引っ張っている訳ではない。全体のバランスを意識している。だから「堂々たる」なのだろうか。それにしても、ジャケットはなんと貧相。仕事がなくて、広場で時間をつぶし鳩にエサをやっているように見えてしまう。しかし、かなり計算されたショットであることは間違いなし。サドの体に隠れている女性の姿。そして、右足元には誰かのサイン。左手にタバコ。堂々たる左利き。

1. April In Paris
2. Billie-Doo
3. If I Love Again
4. If Someone Had Told Me
5. Thedia

Thad Jones - trumpet
Billy Mitchell - tenor saxophone
Barry Harris - piano
Percy Heath - bass
Max Roach - drums

Recorded on July 14, 1956 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Tete Montoliu / Live At The Keystone Corner

テテ・モントリューは生涯盲目。まさしく「音」だけを頼りにジャズを創造してきたピアニスト。ライブでは、特に目線で合図を送り、ソロの交代や、曲の終わりを決めるのだが、テテの場合は、どんなサインを他のメンバーに送ったのだろうか。このアルバムの演奏から、何かヒントを掴めるかと思ったが、数回聴いただけでは分からなかった。綿密なリハーサルをやっているとも思えない。

ライブの様子を捉えたと思われるジャケットの写真を見ると、テテはドラムとベースに背を向けてピアノを弾いている。そして、ドラマーとベーシストはテテに視線を向けているのだ。つまり、テテからの合図は、首の振り方にあったと想像する。決して緊張感が緩むようなことがないライブアルバム。ピアノ、ベース、ドラムのバランスの取れた録音も悪くない。ジャケットにも工夫あり。

1. Autumn In New York - Scrapple From The Apple
2. I'll Remember April
3. You've Changed
4. Lady Bird

Tete Montoliu - piano
Herbie Lewis - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on September 28 & 29, 1979 at The Keystone Corner, San Francisco.

Tete Montoliu / Secret Love

CD帯から。「盲目のピアノ巨人テテ・モントリューが、1977年にオランダでサム・ジョーンズ、ビリー・ヒギンスと繰り広げた白熱のライブアルバム。グルーヴィーなリズムセクションに乗ったテテがスタンダードを熱く熱く弾きまくる」。

確かにその通りで、熱いライブなのだが、テテのピアノに触発されてベースやドラムがピアノ絡み合う瞬間は、そう多くはない。それは、盲目のピアニストとして、彼らにサインを送れないハンディなのだろう。熱いけれど、爽快感が残らないのは仕方がないと思う。また、その要因の一つとして、ジョーンズのベースを捉えたアンプに厚みがなく貧弱だったこともある。

1. Secret Love
2. Airegin
3. Confirmation
4. Four
5. Stella By Starlight

Tete Montoliu - piano
Sam Jones - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on March 31 & April 1, 1977 at DE BOMMEL Breda, Holland.