Tommy Flanagan / The Cats

プレスティッジ・レーベルの特定のリーダーを持たないオールスター・セッション。しかしながら、スタンダード曲How Long Has This Been Going On?(ピアノトリオ演奏)を除く、全5曲中の4曲がトミー・フラナガンの作品なので、フラナガンがリーダー的存在であったことは確かだろう。ジャケットを見ても、タイトルの下にはフラナガンの名前が配置されている。ベースのダグ・ワトキンスとドラムのルイ・ヘイスの名前を割愛した理由はわからない。二人は写真の猫二匹か?

ライナーノーツは、LPが1977年1月4日付けで大和明氏、CDが佐藤秀樹氏。二人とも、タイトルのCatsについて触れている。ジャズの世界で男性ミュージシャンを指す俗語だそうだ。ハナ肇とクレイジーキャッツの意味がようやくわかった。ただし、女性ミュージシャンに対する俗語は見当たらなかった。ちなみに、フラナガンが名盤Overseasを録音するのは、このアルバムThe Catsから4ヶ月後。

1. Minor Mishap
2. How Long Has This Been Going On?
3. Eclypso
4. Solacium
5. Tommy's Time

Idrees Sulieman - trumpet (tracks 1,3-5)
John Coltrane - tenor saxophone (tracks 1,3-5)
Kenny Burrell - guitar (tracks 1,3-5)
Tommy Flanagan - piano
Doug Watkins - bass
Louis Hayes - drums

Recorded on April 18, 1957 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

The Three Sounds / Introducing

ライナーノーツで高井信成氏はこう書いている。『プロデューサーのアルフレッドは、「スリー・サウンズには変化を求める気持ちはまったくなかった。彼らの演奏は何度でも聴きたくなった」と語っている。〈中略〉アルフレッドの言う「何度も聴ける」というところが重要であり、飽きないものを変える必要はなかったわけだ。変えない美学、変わらない美学がよく似合ったバンドだ』。

しかしである、スリー・サウンズは1956年にFour Soundsとして結成し73年に解散。理由は分からないが、17年もやれば、彼ら自身が自分たちの音楽に飽きたのではないだろうか。「変えない」とは信念であり。「変わらない」とは評価である。考え方によっては、17年しか貫き通せなかったのを「美学」とは言えないはずだ。つまり、「ジャズなんて、所詮は大衆音楽である」と主張すべきで、スリー・サウンズの功績はそこにあった。

1. Tenderly
2. Willow Weep For Me
3. Both Sides
4. Blue Bells
5. It's Nice
6. Goin' Home
7. Woody'n You
8. O Sole Mio

Gene Harris - piano, celeste
Andrew Simpkins - bass
Bill Dowdy - drums

Recorded on September 16 & 18, 1958 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Thad Jones / The Magnificent Thad Jones

1956年録音のアルバムは、ついつい気になってしまう。このアルバムは、自分が生まれる半年近く前の録音。初めて聴いたのは学生時代のジャズ喫茶。新宿、中野、吉祥寺だったのかは思い出せないが、マイルスやクリフォード・ブラウンのトランペットに馴染んで自分の耳には、新鮮に感じたことは覚えている。暖かみというか、聴き手をゆったりと包んでくれる感じがした。

だが、タイトルがイケナイ。Magnificentとは「堂々たる」のような意味。決して、サド・ジョーンズが先頭に立ってセッションを引っ張っている訳ではない。全体のバランスを意識している。だから「堂々たる」なのだろうか。それにしても、ジャケットはなんと貧相。仕事がなくて、広場で時間をつぶし鳩にエサをやっているように見えてしまう。しかし、かなり計算されたショットであることは間違いなし。サドの体に隠れている女性の姿。そして、右足元には誰かのサイン。左手にタバコ。堂々たる左利き。

1. April In Paris
2. Billie-Doo
3. If I Love Again
4. If Someone Had Told Me
5. Thedia

Thad Jones - trumpet
Billy Mitchell - tenor saxophone
Barry Harris - piano
Percy Heath - bass
Max Roach - drums

Recorded on July 14, 1956 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.