Tommy Flanagan / Overseas

ようやく安価な中古CDを手に入れることができた。これまでは、ノイズだらけのLPをデジタル化しiPhoneに突っ込み、通勤途中で聴いていたので「名盤」が「冥盤」だった。ようやく光が射してきた感じ。オマケに別テイクが3曲加わった。聴きどころ満載のアルバム。注目はフラナガン作であるEclypso。所有するフラナガンのアルバム10枚の中で、4枚に収録されている。録音順に、The Cats(57年4月)、Overseas(57年8月)、Eclypso(77年2月)、Flanagan's Shenanigans(93年4月)。フラナガンの自信作なのだ。

未だに分からないのは、なぜにストックホルムでこのアルバムを録音したか。ディスコグラフィーを見ても、57年前後で北欧での他の録音はない。オーバーシーズというコンセプトが先に決まり、「じゃあ海外で録音!」とは考えられない。ジャケットのCの数が17×11。素数×素数にその答えがあるのだろうか? ――― 改めて、LPのライナーノーツ(油井正一氏、1976年12月7日付け)を読んだら答えを見つけた。J.J.ジョンソン・コンボのメンバーとしてスウェーデンへの楽旅にしたとき、ストックホルムのメトロノーム・レコードに吹き込んだとあった。

1. Relaxin' At Camarillo
2. Chelsea Bridge
3. Eclypso
4. Beat's Up
5. Skal Brothers
6. Little Rock
7. Verdandi
8. Delarna
9. Willow Weep For Me
10. Delarna [take 2]
11. Verdandi [take 2]
12. Willow Weep For Me [take 1]

Tommy Flanagan - piano
Wilbur Little - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on August 15, 1957 in Stockholm, Sweden.

Tommy Flanagan / The Cats

プレスティッジ・レーベルの特定のリーダーを持たないオールスター・セッション。しかしながら、スタンダード曲How Long Has This Been Going On?(ピアノトリオ演奏)を除く、全5曲中の4曲がトミー・フラナガンの作品なので、フラナガンがリーダー的存在であったことは確かだろう。ジャケットを見ても、タイトルの下にはフラナガンの名前が配置されている。ベースのダグ・ワトキンスとドラムのルイ・ヘイスの名前を割愛した理由はわからない。二人は写真の猫二匹か?

ライナーノーツは、LPが1977年1月4日付けで大和明氏、CDが佐藤秀樹氏。二人とも、タイトルのCatsについて触れている。ジャズの世界で男性ミュージシャンを指す俗語だそうだ。ハナ肇とクレイジーキャッツの意味がようやくわかった。ただし、女性ミュージシャンに対する俗語は見当たらなかった。ちなみに、フラナガンが名盤Overseasを録音するのは、このアルバムThe Catsから4ヶ月後。

1. Minor Mishap
2. How Long Has This Been Going On?
3. Eclypso
4. Solacium
5. Tommy's Time

Idrees Sulieman - trumpet (tracks 1,3-5)
John Coltrane - tenor saxophone (tracks 1,3-5)
Kenny Burrell - guitar (tracks 1,3-5)
Tommy Flanagan - piano
Doug Watkins - bass
Louis Hayes - drums

Recorded on April 18, 1957 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

The Three Sounds / Introducing

ライナーノーツで高井信成氏はこう書いている。『プロデューサーのアルフレッドは、「スリー・サウンズには変化を求める気持ちはまったくなかった。彼らの演奏は何度でも聴きたくなった」と語っている。〈中略〉アルフレッドの言う「何度も聴ける」というところが重要であり、飽きないものを変える必要はなかったわけだ。変えない美学、変わらない美学がよく似合ったバンドだ』。

しかしである、スリー・サウンズは1956年にFour Soundsとして結成し73年に解散。理由は分からないが、17年もやれば、彼ら自身が自分たちの音楽に飽きたのではないだろうか。「変えない」とは信念であり。「変わらない」とは評価である。考え方によっては、17年しか貫き通せなかったのを「美学」とは言えないはずだ。つまり、「ジャズなんて、所詮は大衆音楽である」と主張すべきで、スリー・サウンズの功績はそこにあった。

1. Tenderly
2. Willow Weep For Me
3. Both Sides
4. Blue Bells
5. It's Nice
6. Goin' Home
7. Woody'n You
8. O Sole Mio

Gene Harris - piano, celeste
Andrew Simpkins - bass
Bill Dowdy - drums

Recorded on September 16 & 18, 1958 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.