高田渡 / 高田渡読本

音楽出版社 2007年5月25日発行 定価1,905円。高田渡は、56歳で2005年4月16日に他界。その2年後に出版された書籍。タイトルに『読本』とあるように、この1冊で高田渡の全体像に迫れる。渡のアルバムを聴き、さらにこの本を読めば、渡にもう一歩近づけるのだ。

「高田渡がいた場所 ー 吉祥寺を歩く」から始まる。渡と関係の深かった吉祥寺の8ページによる写真。次に「高田渡の詩」を6編掲載。「自衛隊に入ろう」「鉱夫の祈り」「自転車にのって」「ボロ・ボロ」「漣」「いつか」。さらに「バーボン・ストリート・ブルースを読む」へつながり、ここまでがプロローグ的位置づけ。

「高田渡の存在」、「高田渡の歌」、「京都時代の高田渡」の3本が本題。エピローグ的に「追悼文一束」、「寄せ書き 高田渡のこの1曲」、CDガイド、DVDガイド、楽譜集で締めくくっている。楽譜は「夕暮れ」「系図」「ブラザー軒」「生活の柄」「告別式」「結婚」の6曲。

高田渡 / バーボン・ストリート・ブルース

2008年4月1日発行 ちくま文庫 720円。単行本720円ならば買いとAmazonで購入。しかし、送られてきた箱は軽かった。開けてみると文庫本だった。正直、失敗したと思った。ネットで詳しく調べると、この自伝は2001年8月に山と渓谷社から単行本で発刊されたが、今は古本市場にほとんど出回っていないらしい。だが、読み進むと面白くて仕方がない。ページが進んで終わりに近づくのが惜しくなる。旅の終わりのようだ。そう、この本で渡と旅をしているような気分になる。以下は、文庫裏表紙の解説。

『フォークソングが一世を風靡した頃、奇妙な曲「自衛隊に入ろう」が話題になった。「あたりさわりのないことを歌いながら、皮肉や揶揄などの香辛料をパラパラふりかけるやり方が好き」な高田らしいデビュー曲である。以後、世の流行に迎合せず、グラス片手に飄々と歌い続けて40年。いぶし銀のような輝きを放ちつつ逝った、フォークシンガー高田渡の酔いどれ人生記』。

高田渡 / 貘

さて、高田渡のアルバムであるが、渡だけのアルバムではない。多くのミュージシャンが関わっている。サブタイトルは「詩人・山之口貘をうたう(監修・高田渡)」となっている。そして、CDの帯にはこう書いてある。「ボクは今、やっと山之口貘さんに逢えた様な気がします。ステキな詩は反芻(はんすう)しながら生きていくと思っています」。

この反芻という言い方が、渡らしい。渡の生き方は反芻だったような。決して唄を作り続けるとは思っていなくて、自分の「唄」を探し続けてきた人生ではなかったのか。ライナーノーツには、こうも書かれている。「山之口貘さんの詩に出会ったのは、ボクが十八の頃。一年程本棚の片隅に眠っていた。…気がつくと貘さんのトリコになっていた、いつの間にか歌っていた」。その代表曲が「生活の柄」。渡が最初に録音したのは、1971年のアルバム「ごあいさつ」。それから人生を終えるまで歌い続けてきた。1曲目「年齢」以外は、全て貘の詩。ブックレットには、その原詩が載っている。いわば、このアルバムは貘の詩集とも言えるのだ。

1. 年齢・歯車
2. 結婚
3. 深夜
4. たぬき
5. 座布団
6. 告別式 I
7. 玩具
8. 第一印象
9. 鮪に鰯
10. 頭をかかえる宇宙人
11. 貘
12. 会話
13. 紙の上
14. 告別式 II
15. ものもらい
16. 石
17. 夜景
18. 生活の柄

・ 参加ミュージシャン:高田渡, 大工哲弘, 佐渡山豊, 石垣勝治, 嘉手苅林次, つれれこ社中, 大島保克&オルケスタ・ボレ, ふちがみとふなと, 渋谷毅, 内田勘太郎(from憂歌団), ローリー, 関島岳朗, 中尾勘二, 桜沢有理
・ 録音:1997.12 - 1998.4 国際貿易スタジオ(那覇・泊), ふぉるく(東京・大森), SPACE VELIO(東京・阿佐ヶ谷)
・ 発売:1998年5月23日