Ray Bryant / Here's Ray Bryant

身構えずに正座することもなく、ゆったりとピアノトリオを聴けるアルバムは意外に少ない。エバンスやキースなどを聴くときは、何かをしながらBGM的に聴く自分は許せない。レイ・ブライアントは全くの逆で、まぁ一杯やりながら気軽に聴いてくれよと彼自身が語っているようなのだ。

本作もそんな雰囲気で、インタープレイがどうだとか、原曲の解釈の仕方がなどと語る必要一切なし。素直に楽しめるアルバムで、70年代後半にリリースしたことも重要。ジャズ界の様々な動きに捉われず、ブライアントは自分のやりたいジャズをやっていたということ。だが、せめてジャケットだけは工夫して欲しかった。さらにデビューアルバムでもないのに、タイトルにHere'sを入れるとは…。ブライアントは、そんなことさえ気にしない性格なのかもしれない。

1. Girl Talk
2. Good Morning Heartache
3. Manteca
4. When Sunny Gets Blue
5. Hold Back Mon
6. Li'l Darlin'
7. Cold Turkey
8. Prayer Song

Ray Bryant - piano
George Duvivier - bass
Grady Tate - drums

Recorded on January 10 & 12, 1976 at RCA Recording Studios, NYC.

Ray Bryant / Alone At Montreux

ピアノソロと言えば、キース、エバンス、モンクと浮かんでくるが、モントルーの聴衆を見事に巻き込んでしまったのが、レイ・ブライアントのこの一枚。ピアノソロで、文句なしに楽しめるアルバムはそう多くないだろう。だが、このアルバムは十分に評価されていないような気がする。それはジャケットのせい。ライナーノーツには千人以上の大聴衆とある。大きな舞台にピアノ一台という写真を使っていれば、もっと印象に残るアルバムになったと思うのだが。

いろいろと調べると、本来ならばオスカー・ピーターソンがピアノソロで出演するはずだったが、準備不足を理由にキャンセルし、ブライアントが代役を果たしたそうだ。しかし、この情報は信憑性があるのだろうか。体調不良なら分からなくはないが、プロとしては恥ずべき行為。しかも、ピーターソンのディスコグラフィーによると、このライブの2か月後の8月17日、レバノンのベールベックでソロ・コンサートに臨んでいる。なんとなく怪しい情報なのだ。

1. Gotta Travel On
2. Blues #3 / Willow Weep for Me
3. Cubano Chant
4. Rockin' Chair
5. After Hours
6. Slow Freight
7. Greensleeves
8. Little Susie
9. Until It's Time For You To Go
10. Blues #2
11. Liebestraum Boogie

Ray Bryant - piano

Recorded on June 23, 1972 at the Montreux Jazz Festival, Montreux, Switzerland.

Ray Bryant / Ray Bryant Plays

「ジャズを聴き始めようと思っているんだけど…」と尋ねられたら、相手の年齢や性別に関係なく、このアルバムを勧める。60年近く前の録音。全12曲、どれを聴いても心に染み入る。その中で気になる曲は、Doodlin'でホレス・シルバー作。1956年10月にリリースされたアルバムHorace Silver and the Jazz Messengersに収録。レイ・ブライアントは、ジャズピアニストとしての同業者ホレス・シルバーの曲をその3年後に録音した訳である。

いわゆるジャズ・スタンダードは、当然の如く初めからスタンダードではなく、多くのジャズミュージシャンが演奏し認知されたものである。だが、Doodlin'はファンキー色が強く、ピアニストの巨匠パウエル、モンク、エバンス、ジャレットなどは演奏しなかった。そのことが、逆にシルバーやブライアントの演奏の価値を高めていると言えるのだ。

1. Delauney's Dilemma
2. Blue Monk
3. Misty
4. Sneaking Around
5. Now's The Time
6. Wheatleigh Hall
7. Doodlin'
8. A Hundred Dreams From Now
9. Bags Groove
10. Walkin'
11. Take The "A" Train
12. Whisper Not

Ray Bryant - piano
Tommy Bryant - bass
Oliver Jackson - drums

Recorded on October 29 and November 5 & 6, 1959 in NYC.