Paul Bley / Blood

本作Bloodの録音から1年前のアルバムTouchingと比べると、ジャケットのイラストはそのままであったが、演奏内容は格段に飛躍した。明らかにインプロビゼーションしている。前作のようなポール・ブレイの一人芝居ではない。そのきっかけになったのは何だったのだろう。ドラムは、どちらもバリー・アルトシュル。ベースは、ケント・カーターからマーク・レヴィンソンに交代。この交代が一つのきっかけになったのかも知れないが、もう55年前の出来事なので資料を探すのは難しそうだ。

Bloodと銘打ったアルバム。ポールは何を表現したかったのか。フリージャズというジャンルに押し込められた感があるポールだが、例えば6曲目のMister Joyを聴くと、ビル・エバンスやキース・ジャレットを連想してしまう。ポールは、ピアノトリオの新たな可能性を追求したのではなく、主導権をベースとドラムに譲り、その中でピアノを泳がせている印象さえ受ける。最近、Touchingは紙ジャケットで再発されたが、本作においてはその様子が無い。同じイラストであることが、災いしている気がする。

1. Blood
2. Albert's Love Theme
3. El Cordobes
4. Only Sweetly
5. Seven
6. Mister Joy
7. Ramblin'
8. Kid Dynamite
9. Nothing Ever Was, Anyway
10. Pig Foot

Paul Bley - piano
Mark Levinson - bass
Barry Altschul - drums

Recorded on September 21 and October 4, 1966 in Baarn, Holland.

Paul Bley / Open, To Love

1983年10月に記された青木和富氏のライナーノーツ(LPとCDは同じ内容)。「このポール・ブレイのソロピアノの世界は、リリシズムの世界だが、ジャズピアノのリリシズムというと、何といってもひきあいにだされるのがビル・エバンスだ。けれど、うすいベールを通したような微妙な濃淡で語られるエバンスのリリシズムとは、このポール・ブレイのリリシズムの世界は基本的に違う。ブレイのそれは、あくまでもハードなタッチの一音一音で構成されるもので、その一音一音はもののかたちの表面をなぞるのではなく、表面をつき抜け、意識の内側に垂直にすべりおち、ある種の生理的な領域まで届く不思議なリリシズムの世界である」。

なるほど。そこまで聴き込んではこなかった。「意識の内側に垂直にすべりおち」という言葉が、まさしく肌に垂直に突き刺さる。聴きたいけど、聴く怖さがここにはある。

1. Closer
2. Ida Lupino
3. Started
4. Open, To Love
5. Harlem
6. Seven
7. Nothing Ever Was, Anyway

Paul Bley - piano

Recorded on September 11, 1972 at Arne Bendiksen Studio, Oslo.

Paul Bley / Touching

ポール・ブレイのピアノを言葉で表すのは非常に難しい。言葉が浮かんでこない。ピアノトリオである。それは単に楽器編成のこと。ベースが楽曲の流れを作り、ドラムがリズムを刻んで、ピアノが旋律を奏でるという典型的なトリオでは決してない。では、三位一体かと言うと、そういうフォーメーションも取っていない。

ドラムが激しいリズムを刻んでも、ポールはそれに乗ってこない。自分の感情のままピアノを弾いている感じを受ける。ならば、なぜトリオで演奏するのだろうか。たぶん、ポールは言うだろう。「一人じゃつまらないから」と。

1. Start
2. Touching
3. Pablo
4. Both
5. Mazatalan
6. Cartoon
7. Closer

Paul Bley - piano
Kent Carter - bass
Barry Altschul - drums

Recorded on November 5, 1965 in Copenhagen, Denmark.