Pete La Roca / Basra

ジャズ・メッセンジャーズを率いたアート・ブレイキーは別として、ドラマーによるリーダーアルバムは決して多くない。日本の富樫雅彦や森山威男のアルバムは世界的に見ても珍しい位置づけではないだろうか。そんなことを思いながら、この「バスラ」を久しぶりに聴いた。

「バスラ」とは、イラク南部の第2の都市。夏場は平均最高気温が摂氏40度を超えるようだ。想像するだけで頭がくらくらしてきて、ここで表現している中東的なサウンドに言いようもない気怠さを感じてしまう。そんな感覚をさらに呼び起こすようなジャケットデザイン。特にLの上にAを載せた配置は、ラロカのビート感覚とも一致しているようにも思えてくる。50年代、60年代を通して、リーダーがドラマーのジャズアルバムの中では最高峰だろう。頂上を極めた浮遊感がここにある。

1. Malaguena
2. Candu
3. Tears Come From Heaven
4. Basra
5. Lazy Afternoon
6. Eiderdown

Joe Henderson - tenor saxophone
Steve Kuhn - piano
Steve Swallow - bass
Pete La Roca - drums

Recorded on May 19, 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Percy Sledge / The Platinum Collection

Percy Sledge(パーシー・スレッジ)のWhen A Man Loves A Womanが聴きたくて購入したアルバム。22曲をたっぷり味わったが、やはりWhen A Man ... が最高。1966年のデビュー・シングルで文句なしの名曲。邦題はそのままで『男が女を愛する時』。無理にこじつけた邦題を付けなかったことも、日本でヒットした理由だろう。残念ながら、この曲以降にスレッジはヒットに恵まれることはあまりなかった。

だが、このアルバムでは、スレッジの暖かみのある歌声を味わえる。ウェス・モンゴメリーはアルバムA Day In The Lifeで、このWhen A Man ... をカバーした。録音が1967年6月なので、ウェスもすぐに感銘を受けた曲だったということがわかる。

1. When A Man Loves A Woman
2. Warm And Tender Love
3. It Tears Me Up
4. Try A Little Tenderness
5. The Dark End Of The Street
6. Take Time To Know Her
7. True Love Travels On A Gravel Road
8. Stop The World Tonight
9. It's All Wrong But It's All Right
10. Out Of Left Field
11. Cover Me
12. Put A Little Lovin' On Me
13. Love Me Like You Mean It
14. I'm Hanging Up My Heart For You
15. Bless Your Sweet Little Soul
16. Sudden Stop
17. Drown In My Own Tears
18. Kind Woman
19. Push Mr. Pride Aside
20. It Can't Be Stopped
21. Love Me Tender
22. Rainbow Road

Released on March 24, 2009.

Paul Desmond / First Place Again

CDジャケット裏(非常に小さい英字)を読めば、アルバムタイトルFirst Place Againの理由が分かる。1958年、59年と連続してPlayboy Readers' Pollと記載されている。2年連続、プレイボーイ誌による読者投票のアルトサックス部門でトップとなったことで制作されたアルバム。いまさら異を唱えても仕方がないが、その時期のアルトと言えば、キャノンボール・アダレイがSomethin' Else、オーネット・コールマンがSomething Else!!!!をリリース。どちらのタイトルも現状を突き破ろうとしていた訳である。

一方のブレイボーイ読者は意外にも保守的であった。潜在的な人種差別があったのではないかと勘繰ってしまう。そして、ジャケット。以前は、よくもこれだけの人を集めて人文字を作ったものだと感心していた。ところが、よく見ればトリックであることが判明。タイトルの黒、ポール・デスモンドのオレンジが全く同じ色。屋外の撮影なので、人々が手にしたボードは角度によって色合いが変わるはず。明らかに上塗りした写真である。タイトルとジャケットを陳腐にしたことで、一流の演奏が三流以下になってしまったアルバム。

1. I Get A Kick Out Of You
2. For All We Know
3. Two Degrees East, Three Degrees West
4. Greensleeves
5. You Go To My Head
6. East Of The Sun
7. Time After Time

Paul Desmond - alto saxophone
Jim Hall - guitar
Percy Heath - bass
Connie Kay - drums

Recorded on September 5, 6 & 7, 1959 in NYC.