Max Roach / Drums Unlimited

マックス・ローチはスマート、つまり多彩なドラマーである。確かに、このアルバムにはドラムソロの曲もあるし、そうでない曲でも随所にドラムソロが出てくるのだが、ローチ自身が前面に出過ぎている感じは受けない。リーダーであるローチは、まさしくリーダーシップを取るものの、メンバー全員をバックアップしている。ただし、ジャケットがなぁ。ローチの練習風景の写真でレイアウト。ちっともスマートでない。

ライナーノーツで、後藤誠氏がジャズドラマーKenny Washington(ケニー・ワシントン)によるローチの功績を引用している。プロによる評価は興味深い。

1. 一貫してドラマーの地位向上に貢献した。
2. テクニックをひけらかすのではなく、音の強弱を測った上で、音楽的に意味のあるラインを作った。
3. トランペット、チューバ、テナーの3管、しかもピアノレスといった実験的な編成に取り組んだ。
4. パーカッションだけのアンサンブル・ユニットを作った。
5. モダンジャズで3拍子や5拍子などの変拍子をいち早く取り入れた。
6. ベースの伴奏つきでドラムソロをとるという新機軸を打ち出した。

1. The Drum Also Waltzes
2. Nommo
3. Drums Unlimited
4. St. Louis Blues
5. For Big Sid
6. In The Red (A Xmas Carol)

James Spaulding - alto saxophone
Roland Alexander - soprano saxophone
Freddie Hubbard - trumpet
Ronnie Mathews - piano
Jymie Merritt - bass
Max Roach - drums

Tracks 1 & 4
Recorded on October 14, 1965 in NYC.

Tracks 2 & 6
Recorded on October 20, 1965 in NYC.

Tracks 3 & 5
Recorded on April 25, 1966 in NYC.

Max Roach / We Insist!

音楽兼公民権活動家Oscar Brown Jr.(オスカー・ブラウン・ジュニア)が、奴隷解放宣言100周年にあたる1963年に発表する作品を企画中に、マックス・ローチが参画。その過程で1960年に8月から9月にかけて録音したアルバム。

ジャケットの写真は強烈。黒人3人がカウンターに座る。カウンター内にいる白人のボーイは、「お前らに食わせるメニューはないよ」という目つき。この写真がやらせなのかは別として、当時のアメリカでは、人種差別は避けて通れない問題。ジャズという音楽で、この問題に正面から取り組んだ作品。60年近い前のアルバムなので、今更、問題作などと位置付けることはできないが、時代を象徴する一枚であることは間違いない。輸入盤CDには、60年11月録音のボーナストラックが3曲追加。さらに、ジャケット右上に左手の握りこぶしまで追加された。

1. Driva' Man
2. Freedom Day
3. Triptych: Prayer / Protest / Peace
4. All Africa
5. Tears for Johannesburg
6. Oh Yeah, Oh Yeah
7. Cliff Walk
8. Tain't Nobody's Bizness If I Do

Tracks 1 - 5
Coleman Hawkins - tenor saxophone
Walter Benton - tenor saxophone
Booker Little - trumpet
Julian Priester - trombone
Abbey Lincoln - vocals
James Schenk - bass
Max Roach - drums
Michael Olatunji - drums, percussion, conga, voices
Raymond Mantilla - percussion
Tomas du Vall - percussion

Recorded on August 31 and September 6, 1960 at Nola Penthouse Sound Studios, NYC.

Tracks 6 - 8
Benny Bailey - trumpet (tracks 6,8)
Kenny Dorham - trumpet (track 6)
Booker Little - trumpet (track 7)
Julian Priester - trombone (tracks 6,7)
Walter Benton - tenor saxophone (tracks 6,7)
Cecil Payne - baritone saxophone (track 6)
Eric Dolphy - alto saxophone (track 8)
Kenny Dorham - piano (track 8)
John "Peck" Morrison - bass (tracks 6,7,8)
Max Roach - drums (track 6)
Jo Jones - drums (tracks 7,8)
Abbey Lincoln - vocals (track 8)

Recorded on November 1, 1960 at Nola Penthouse Sound Studios, NYC.

Max Roach / Percussion Bitter Sweet

ブッカー・リトルのアルバムOut Frontと同様、書籍『エリック・ドルフィー』を読み直して、購入したアルバム。運よく、Amazonで安価な中古CDを見つけた。2つのアルバムには共通点が多い。どちらも、1961年半ばの録音。Out Frontはリトル、本作はマックス・ローチの作品を並べている(本作のMendacityのみはローチとC. Bayenによる合作)。そして、この2人以外にエリック・ドルフィー、アート・デイビス、ジュリアン・プリースターが、両方のアルバムに参加。

Out Frontは重苦しい空気が漂うが、本作はアフロキューバンのリズムが根底。では、本作は単純にリズムに主眼を置いているかと言うと、各曲のタイトルに主張があることに気付く。曲順に訳すと、「Gavey(ガービー)の幽霊、ママ、優しい戦士、殉教者を称え、虚偽、南アフリカから来た男」となる。唯一の固有名詞がGaveyで、以下に世界大百科事典・第2版から抜粋。常に人種差別と闘ってきたローチらしいアルバムなのだ。

「Marcus Moziah Garvey, 1887‐1940 ― ジャマイカ生れの黒人運動指導者。1914年万国黒人改善協会UNIAを創設。16年渡米し、ニューヨークを根拠地に黒人大衆運動を展開。20年代前半に〈アフリカへの帰還〉運動を組織したが、リベリア政府の背信により挫折。27年アメリカから追放され、ロンドンで客死。広く欧米・アフリカの黒人に人種的誇りと向上への希望を植えつけた功績は大きい」。

1. Garvey's Ghost
2. Mama
3. Tender Warriors
4. Praise For A Martyr
5. Mendacity
6. Man From South Africa

Booker Little - trumpet
Julian Priester - trombone
Eric Dolphy - alto saxophone, flute, bass clarinet
Clifford Jordan - tenor saxophone
Mal Waldron - piano
Art Davis - double bass
Max Roach - drums, percussion
Carlos "Potato" Valdés - congas (tracks 1,3,6)
Eugenio "Totico" Arango (credited as Carlos Eugenio) - cowbell (tracks 1,3,6)
Abbey Lincoln - vocal (tracks 1,5)

Recorded on August 1 (tracks 1 & 5), 3 (tracks 2 & 3), 8 (track 4) and 9 (track 6), 1961 in New York City.