McCoy Tyner / Extensions

70年代の最初に録音したこのアルバムからマッコイの怒涛の快進撃が始まった。頂点に達したのは1976年1月録音のFly With The Wind。その6年間で10枚ほどのアルバムをリリース。その推進力となったのは、コルトレーン亡き後のジャズ界を自分が牽引しなければという意気込みと、いわゆるエレクトリック・マイルスの幕開けとされる69年7月リリースのIn A Silent Wayへの対抗心があったからではないだろうか。

興味深いのは、前作Expansionsに続いて、マイルスグループのウェイン・ショーターが参加していること。フロントがゲイリー・バーツだけでは厚みに欠けると感じたのか、ショーターのアレンジに期待したのか。ましてや、アリス・コルトレーンのハープを全4曲中の2曲に入れている。この時点では、マッコイの足元はまだ固まっていない。

1. Message From The Nile
2. The Wanderer
3. Survival Blues
4. His Blessings

Wayne Shorter - tenor saxophone, soprano saxophone
Gary Bartz - alto saxophone
Alice Coltrane - harp (tracks 1,4)
McCoy Tyner - piano
Ron Carter - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on February 9, 1970 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

McCoy Tyner / Expansions

マッコイがブルーノートに残したアルバムについては、前作Time For Tynerの項目で書いた。その3ヶ月後に録音されたアルバム。心機一転とまで行かず、ベースとドラムは同じメンバー。しかし、アルバムとしてのコンセプトは少しまとまってきた感じ。Expansionsを日本語にすると、いくつかの意味が存在する。拡大、拡張、発展、膨張、伸長、展開。ジャケットのマッコイの写真を見ると膨張という感じだが、「展開」と捉えたい。

しかしながら、フロント3管はウェイン・ショーター、ゲイリー・バーツ、ウディ・ショウという豪華顔ぶれ。それぞれが自分のグループを持てる役者を揃えている。コルトレーンの死から一年余り。マッコイは彼らから刺激を受けながら、自身の方向性を決めようとしていたのだろう。マッコイの変曲点となるアルバムSaharaまでは、ここから3年以上を要するのだ。

1. Vision
2. Song Of Happiness
3. Smitty's Place
4. Peresina
5. I Thought I'd Let You Know

Wayne Shorter - tenor saxophone, clarinet
Gary Bartz - alto saxophone, wooden flute
Woody Shaw - trumpet
McCoy Tyner - piano
Ron Carter - cello
Herbie Lewis - bass
Freddie Waits - drums

Recorded on August 23, 1968 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

McCoy Tyner / Time For Tyner

マッコイがブルーノートに残したアルバムは次の7枚。括弧内は録音日とプロデューサー。ただし、アルバムCosmosは廃盤状態。

・The Real McCoy (1967/4/21, Alfred Lion)
・Tender Moments (67/12/1, Francis Wolff)
・Time For Tyner (68/5/17, Duke Pearson)
・Expansions (68/8/23, Duke Pearson)
・Cosmos (68/11/22, 69/4/4, 70/7/21, Duke Pearson)
・Extensions (70/2/9, Duke Pearson)
・Asante (70/9/10, Duke Pearson)

このデータを見れば、粗製乱造とまでは言わないが、じっくりとアイデアを温めて製作したアルバムではないことは確かだ。プロデューサーがデューク・ピアソンになってからは、ある種の焦りを感じる。マッコイは自身の構想を練る時間も与えられず、アルバムを作らせられたのではないだろうか。

LPのライナーノーツで青木和富氏はこう評している。「この7枚のブルーノートのアルバムは、当時のマッコイの独自の方向を見つける苦悩の記録とも言える作品であり、どれ1つとっても、その試行錯誤の中にその後のマッコイを決定づける輝かしいオリジナリティの断片を発見することができる貴重な作品群といえるだろう」。まさにその通りだと思う。「断片」がちりばめられた7枚。特に、このTime For Tynerは、全6曲の半分はオリジナルで、残りはスタンダードという構成。「断片」を切り取られた感じだ。

1. African Village
2. Little Madimba
3. May Street
4. I Didn't Know What Time It Was
5. The Surrey With The Fringe On Top
6. I've Grown Accustomed To Your Face

McCoy Tyner - piano
Bobby Hutcherson - vibraphone (tracks 1-4)
Herbie Lewis - bass (tracks 1-5)
Freddie Waits - drums (tracks 1-5)

Recorded on May 17, 1968 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.