Miles Davis / The Man With The Horn

6年の沈黙を破って復活を果たしたマイルス。生気に満ち溢れたマイルスがここにいる訳ではないが、ジャズ界が活気づくと期待したのを憶えている。1981年夏発売後の10月2日から11日まで来日コンサートが行われた。自分自身は4日の新宿西口特設会場でのコンサートを体感したが、演奏そのものはあまり覚えていない。会場にはレーザー光線が飛び交い、足を引きずって舞台に登場したマイルスを見ることができただけで大満足だった。マイルス自叙伝②では、本作のリリースについて以下のように書かれている。

「コロンビアは、1981年の7月に〈ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン〉を出した。よく売れたが、オレの演奏には十分な力が感じられず、批評家連中も過去のオレの影にしかすぎないとか言って、受けは良くなかった。オレだって、唇の調子を取り戻すには、時間がかかることくらいわかっていた。それでも毎日、吹くたびに力がついてくるのが感じられたし、練習もしていた。だがコロンビアは、オレがこの先ずっと長い間演奏は続けられないだろうと踏んで、ほとんどのコンサートをライブレコーディングするよう手配していた。文句はなかったが、オレ自身は身体がどうしようもなくならない限り、引退しないつもりだった」。逆に言えば、復活までの間に引退もやむを得ない状態が続いていたということだ。

1. Fat Time
2. Back Seat Betty
3. Shout
4. Aida
5. The Man With The Horn
6. Ursula

Track 1
Miles Davis - trumpet
Bill Evans - soprano saxophone
Mike Stern - electric guitar
Marcus Miller - electric bass / Al Foster - drums / Sammy Figueroa - percussion
Recorded in March 1981 at Columbia Studios, NYC.

Tracks 2, 4 & 6
Miles Davis - trumpet
Bill Evans - soprano saxophone, tenor saxophone, flute
Barry Finnerty - electric guitar
Marcus Miller - electric bass / Al Foster - drums / Sammy Figueroa - percussion
Recorded in January 1981 at Columbia Studios, NYC.

Track 3
Miles Davis - trumpet
Bill Evans - soprano saxophone, tenor saxophone, flute
Robert Irving - electric piano
Randy Hall - synthesizer
Barry Finnerty - electric guitar
Felton Crews - electric bass / Vincent Wilburn - drums / Sammy Figueroa - percussion
Recorded on May 6, 1981 at Columbia Studios, NYC.

Track 5
Miles Davis - trumpet
Bill Evans - soprano saxophone, tenor saxophone, flute
Robert Irving - synthesizer
Randy Hall - electric guitar, celeste, synthesizer, vocals
Felton Crews - electric bass / Vincent Wilburn - drums
unknown singers - vocals
Recorded on May 1, 1980 at Columbia Studios, NYC.

Miles Davis / Pangaea

1975年2月1日、大阪フェスティバルホールで昼と夜のコンサート。午後4時スタートの昼の部がアルバム『アガルタ』、インターバル1時間後の夜の部がアルバム『パンゲア』に収録された。夜の第1部が41分49秒のZimbabwe(ジンバブエ)、第2部が46分51秒のGondwana(ゴンドワナ)。『アガルタ』同様に『パンゲア』もライブ演奏がノーカットで記録されている。LPの両面に収まる曲の長さ。タイムキーパーがいたに違いない。それはマイルス自身だったのか、それとも、この日の録音に同行したテオ・マセロだったのか。

Gondwanaの36分23秒。静寂が訪れ、クライマックスまで続くリズムパターン。40分15秒、45分13秒にマイルスのトランペットが瞬間的に響くだけ。午後4時からのライブ。かなり疲れていたはずだ。LPのライナーノーツにはこう記載されている。「このレコードはあなたの聴覚が麻痺しない範囲まで、ボリュームを上げて、お聴き下さい」。マイルス自身が麻痺していた夜の部『パンゲア』。

Disc 1
1. Zimbabwe

Disc 2
1. Gondwana

Miles Davis - electric trumpet with wah-wah, organ
Sonny Fortune - soprano saxophone, alto saxophone, flute
Pete Cosey - electric guitar, synthesizer, percussion
Reggie Lucas - electric guitar
Michael Henderson - electric bass
Al Foster - drums
James "Mtume" Forman - conga, percussion, water drum, rhythm box

Recorded on February 1 (night part), 1975 at Osaka Festival Hall, Japan.

Miles Davis / Agharta

1975年2月1日、大阪フェスティバルホールで昼と夜のコンサート。午後4時スタートの昼の部がアルバム『アガルタ』、インターバル1時間後の夜の部がアルバム『パンゲア』に収録された。ライナーノーツには、児山紀芳氏によるマイルスへのインタビュー(1/31と2/1)が長文で掲載されている。その終わりに、次のようなマイルスの言葉があった。

「音楽というのは、不思議なものだ。なぜ、こうも変化するのだろう。変化が私の人生だからだろうか。その私の人生は、決してオープン・ブックではない。だから私の音楽も秘められた部分が多い。人々は、モードだのドリアン・モードだのフリジアン・モードだのエレクトロニクスなどなど、を私たちと同じようには理解していない。でも、それはそれでいいのだ。分らないからこそ、人々は驚きを得る。音楽を通して驚きを体験できるなんて、素晴らしいことじゃないか」。

LPのライナーノーツには「このレコードは住宅事情の許すかぎり、ボリュームを上げて、お聴き下さい。」と記載されていたが、CDではカット。中途半端な音量で聴いたら、驚きを体験できないのだが。

Disc 1
1. Prelude
2. Maiysha

Disc 2
1. Interlude / Theme From Jack Johnson

Miles Davis - trumpet, organ
Sonny Fortune - alto saxophone, soprano saxophone, flute
Reggie Lucas - guitar
Pete Cosey - guitar
Michael Henderson - bass
Al Foster - drums
Mtume - percussion

Recorded on February 1 (noon part), 1975 at Osaka Festival Hall, Japan.