森山威男 / SMILE

ちょうど10年前。2012年6月28日、このアルバムのブログを書いた。自分としては、下記のノートは残しておきたい。なお、オリジナルのリリースは1981年3月25日。収録曲は全てカタカナ表記に統一していて、ここでの「わたらせ」は「ワタラセ」である。ただし、アルバムタイトルは英語表記。

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ザ・ピーナッツの伊藤エミ死去。衝撃的だった。しかも、死去したのは15日ということで、2週間ほど外部への情報が閉ざされていたことになる。今朝、筑波のホテルで、ネットでのニュースを読んでいて、このことを知った。瞬間、テレビの時代が終わったなと思った。自分が子どもの頃は、テレビの全盛期だった。「てなもんや三度笠」、「ひょっこりひょうたん島」、「サンダーバード」、「コンバット」などなど。そして、「シャボン玉ホリデー」。

次の瞬間、板橋文夫の「わたらせ」のメロディーが耳の奥で鳴り始めた。この曲を知ったのは、ごく最近。2年前の2010年7月に北海道一人旅をしたとき、根室のジャズ喫茶『サテンドール』で聴いた。なので、ザ・ピーナッツとは何の結びつきも無い。ということは、自分の中で「わたらせ」のメロディーは、何かの終わり、終止符というイメージが出来上がってしまったのかも知れない。

板橋のアルバムWATARASEを取り出しても良かったが、森山のこのアルバムに手が伸びた。オンデマンドのCDである。つまり、注文を受けてから1枚単位でも製作するという手法。大量生産・大量消費と逆行するこのビジネスが、今後も成立していくのかはウォッチしていきたい。ラスト曲の「グッドバイ」。今夜は、伊藤エミへの哀悼曲となっている。

1. エクスチェンジ
2. ワタラセ
3. ステップ
4. スマイル
5. グッドバイ

国安良夫 - tenor saxophone, soprano saxophone
松風鉱一 - alto saxophone, tenor saxophone, flute
板橋文夫 - piano
望月英明 - bass
森山威男 - drums

Recorded on November 10, 11 & 12, 1980.

森山威男 / A Live Supreme

「現役で好きなドラマーは?」と聞かれたら、迷うことなく森山威男と答える。コルトレーンのアルバムA Love Supremeをもじったタイトル。それに反発する意見もあるかと思うが、中身はコテコテの森山ジャズ。もう20年近く前のライブ録音。その場に自分がいなかったことが今でも悔やまれる。このアルバムは森山のドラミングを中心に聴くこと。そこからジャズの神髄が分かってくる。ジャケットに大きく陣取った"1"の文字。Vol.1の意味ではない。自分は「一期一会のセッション」と理解している。以下は商品解説からの抜粋。

「森山威男が2003年9月20日、可児市文化創造センター主劇場で行ったライブは、アメリカよりジョージ・ガゾーンとエイブラハム・バートンというツイン・テナーを迎えて、〈至上の愛〉全4楽章をはじめとしたコルトレーン・ナンバーを演奏するというのもので、本作はその模様を捕らえたライブ盤。それにしても凄まじい。〈中略〉何より全編通してリーダー森山威男のドラムの素晴らしさに耳を奪われます。どんなに乱打しても決してバンド・サウンドがにごらない、すっきりと芯の通ったドラム。爆ぜるような勢いを持ちつつもシャープな切れ味も兼ね備えたドラムは唯一無二。本アルバムのタイトル〈至上のライブ〉の名は伊達ではありません」。

1. A Love Supreme
  Part 1: Acknowledgement
  Part 2: Resolution
  Part 3: Pursuance
  Part 4: Psalm
2. I Want To Talk About You
3. Impressions

George Garzone - tenor saxophone
Abraham Burton - alto saxophone
田中信正 - piano
井上陽介 - bass
森山威男 - drums

Recorded on September 20, 2003 at ala - 可児市文化創造センター.

森山威男 / 山

このアルバム『山』の前編である『森』と同様に、ライナーノーツで森山自身が父親のことを書いている。『山のように威厳のあった父のこと。〈中略〉高校生のとき、父は俺を歯医者にしたかったらしい。父にお願いをした。「俺、ドラムをやりたいんだ。東京に習いに行かせてくれ」「本当にそうしたいなら、やりなさい。心配するな」と言ってくれた。死ぬ気でがんばろう、と思った。〈中略〉ドラマーになっても父は俺をだめな息子だと思っていたらしい。初めて俺の演奏を聞いた後、言った。「そんなに汗をかいて、命っきり叩かんと生活できんのか」大笑いした。〈中略〉入院中の父の耳元で「赤とんぼ」を歌ってあげた。じっとしていた。山のように。』

前編『森』は重量感、後編『山』は高揚感。『森』と『山』で、森山威男は一つの頂点に登り詰めた。

1. A Fox In The Woods
2. Sound River
3. Hey, Open Up!
4. Tribute To Trane
5. Sunrise

音川英二 - soprano saxophone, tenora saxophone
George Garzone - soprano saxophone, tenora saxophone
田中信正 - piano
望月英明 - bass
森山威男 - drums

Recorded on March 9 & 10, 2002 at studio F, Tajimi-shi, Gifu.