Keith Jarrett / Backhand

キースの前作Death And The Flower(邦題『生と死の幻想』)と、同じメンバーで同日に録音されたアルバム。しかし、評価は全く異なった。前作はスイングジャーナルでゴールド・ディスク賞を受賞。本作は蚊帳の外に追い出された。CDのライナーノーツでは、杉田宏樹氏がキースのいくつかのベストアルバムに、このアルバムからの曲がほとんど取り上げられなかったことを長々と書いている。そんなことは、素人でもデータを調べれば簡単にできる。大事なことは、前作が大いに評価され、本作が評価対象にすらならなかったことだ。

自分の分析は、ジャケットにあったと言いたい。前作には多額の費用をつけたが、もう予算が残っていなかった。気合を入れて2日間スタジオに入り込み、充実した演奏をしたつもりなのに、2枚のアルバムに分けられ勝手な評価をされたのである。芸術をビジネスにつなげるのは難しい。バックハンドで決めようとしたら空振りだった。確かに、キースの得意のうなり声はこのアルバムからほとんど聴こえてこない。

1. Inflight
2. Kuum
3. Vapallia
4. Backhand

Keith Jarrett - piano, flute, percussion
Dewey Redman - tenor saxophone, musette, percussion
Charlie Haden - bass
Paul Motian - drums, percussion
Guilherme Franco - percussion

Recorded on October 9 & 10, 1974 at Generation Sound Studios, NYC.

Keith Jarrett / Death And The Flower

レコードという媒体に価値があった時代。そこに詰められた音楽だけでなく、それを包むジャケットにも芸術的な要素が大きかった。アルバムタイトルは『死と花』(邦題は『生と死の幻想』)。ジャケットの表はカラーで、裏は同じデザインでモノトーン。しかし、よく見ると微妙に異なっている。表はバラしか描かれていないが、裏には他の植物が葉を出している。地面は表と裏で連続し、バラの影は裏面のほうが濃い。

見開きのLPジャケット内にはキース自身の詩DEATH AND THE FLOWERが書かれている。「私たちは誕生と死の間で生きている。そして、日々の体験が誕生であり死でもある花のように、私たちは生きて行かなければならない」と解釈したが、どうだろうか。

1. Death And The Flower
2. Prayer
3. Great Bird

Keith Jarrett - piano, wood flute, percussion, soprano saxophone
Dewey Redman - tenor saxophone, musette, percussion
Charlie Haden - bass
Paul Motian - drums, percussion
Guilherme Franco - percussion

Recorded on October 9 & 10, 1974 at Generation Sound Studios, NYC.

* * *
DEATH AND THE FLOWER

We live between birth and death,
Of so we convince ourselves conveniently,
When in truth we are being born and
We are dying simultaneously
Every eternal instant
Of our lives

We should try to be more
Like a flower,
Which every day experience its birth
And death,
And who therefore is much more prepared
To live
The life of a flower

So think of Death as a friend and adviser
Who allows us to be born
And to bloom more radiantly
Because of our limits
On Earth

Think of this until you realize
Eternity
And cease to need
The illusion of Death

But do not do this
Before you lose the first great illusion:
The illusion of Life
Because
To do this
You must die
Many times
And live to
Know it

- Keith Jarrett / December 5, 1974

Keith Jarrett / Belonging

キースはソロ・コンサートを前年に終えて、次の名作Death And The Flowerへ向かう途中だった。で、「頑張って」ピアノを弾くキースがここにいる。CD帯から。「キースと北欧の気鋭の演奏家による通称ヨーロピアン・クァルテットはここから始まった。フォーク~ゴスペル色を強調した音作りが圧巻」。さらに、杉田宏樹氏がライナーノーツで以下のように書いている(2011年2月付け)。キースの声を評価する視点にニヤリとしてしまう。

全6曲はいずれもキースの優れた作曲の才能を示しており、とりわけ2曲にそれが顕著だ。オープニングを飾る「スパイラル・ダンス」は曲名通りよじれた旋律が特徴的で、ダニエルソンがベースソロで存在感を示す。そしてハイライトとなるのが5曲目の「ザ・ワインドアップ」。カリプソ調の明るいテーマの中にキースらしいメロディー・ラインが認められる。ピアノソロではキースの声をよく出ていて、北欧の素晴らしいミュージシャンを得た喜びが絶好調のピアノプレイと共に表出している。

1. Spiral Dance
2. Blossom
3. 'Long As You Know You're Living Yours
4. Belonging
5. The Windup
6. Solstice

Jan Garbarek - tenor saxophone, soprano saxophone
Keith Jarrett - piano
Palle Danielsson - bass
Jon Christensen - drums

Recorded on April 24 & 25, 1974 at Arne Bendiksen Studios, Oslo, Norway.