Keith Jarrett / Standards, Vol.2

1983年1月11日と12日のセッションで、14曲を録音し3枚のアルバムに分散された。Standards, Vol.1 & 2、そしてChangesである。Vol.1は1983年中にリリース。Vol.2は85年、Changesは84年。ここにECMレーベルのいやらしさがある。ジャケットに大きくStandards, Vol.1と記載しながら、続編Vol.2をタイムリーにリリースしない。聴き手(買い手)のことを無視した作り手(売り手)のロジックを優先。

そんな不満が残るアルバムであるが、CDのライナーノーツで熊谷美広氏が絶賛。「3人が時に溶け合い、そして時に自由に振る舞い、スタンダードという定番の楽曲に、まったく新たな生命を吹き込んでいる。本当に革命的で、衝撃的で、そしてとても芸術的なピアノトリオ・アルバムだ」。その通り。〈新たな生命〉という表現がぴったりくるアルバムなのだ。

1. So Tender
2. Moon And Sand
3. In Love In Vain
4. Never Let Me Go
5. If I Should Lose You
6. I Fall In Love Too Easily

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on January 11 & 12, 1983 at The Power Station, Manhattan, NYC.

Keith Jarrett / Standards, Vol.1

本作品は、こう紹介されている。「それまでオリジナル曲を中心に演奏していたキース・ジャレットが、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットという究極のメンバーと共に、初めて本格的にスタンダードナンバーに取り組んだ1枚。現代ジャズ・ピアノトリオの礎を築いた歴史的傑作としても特筆される。ピーコックとディジョネットを加えた“スタンダーズ・トリオ”の記念すべき第1作」。しかしながら、所有するLPとCDにはThe Standards Trioの記載はなく、Keith Jarrett Trioとなっている。本作以降のアルバムも同様である。つまり、The Standards Trioとはマスコミが勝手につけた名称なのだ。

油井正一氏によるライナーノーツには、「ピアノプレイヤーとしてのキース・ジャレットは、超をつけてもいいくらいの一流である。そうした意味で、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットという、各楽器の超一流奏者でつくったトリオによる本アルバムは、正直いって〈ケルン・コンサート〉以後僕の最も気に入った作品となった」とある(1983年9月4日付け)。残念ながら、どこが気に入ったのかを書いていないが、自分はこの3人の根底にある「スピード感」だと思っている。

1. Meaning Of The Blues
2. All The Things You Are
3. It Never Entered My Mind
4. The Masquerade Is Over
5. God Bless The Child

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on January 11 & 12, 1983 at The Power Station, Manhattan, NYC.

Keith Jarrett / Invocations The Moth And The Flame

邦題『沈黙への誘惑・夢幻』。邦題を付けたことで、なおさら難解になった感じだ。ここでのタイトルは単なる記号としても、不思議な2枚組である。一枚目が1980年10月録音、二枚目が79年11月録音で、一年近い間があり、しかも年代が逆転している。録音場所も修道院と音楽スタジオ。2つの全く異なる録音を一つのアルバムにまとめた理由が不明。LPのライナーノーツを担当した野口久光氏は、そこのことに一切触れていない。「最近のキースの音楽(演奏)に説明を加えることはいかにも無意味のように思えるので・・・」と書いてあり、逃げられてしまった。このアルバムのコンセプトについて、野口氏なりの意見を知りたかったのだが。

スタンダーズ・トリオが始動するのは83年1月。本アルバムInvocations The Moth And The Flameからスタンダーズまでの3年間は、キースはジャズから遠のいた。ジャズピアニストでないキースの実験開始アルバムである。今だから言えるのだが、この実験は大失敗に終わった。

Disc 1 - Invocations
1. First (Solo Voice)
2. Second (Mirages, Realities)
3. Third (Power, Resolve)
4. Fourth (Shock, Scatter)
5. Fifth (Recognition)
6. Sixth (Celebration)
7. Seventh (Solo Voice)

Keith Jarrett - pipe organ, soprano saxophone
Recorded in October 1980 at Ottobeuren Abbey.

Disc 2 - The Moth And The Flame
1. Part I
2. Part II
3. Part III
4. Part IV
5. Part V

Keith Jarrett - piano
Recorded in November 1979 at Tonstudio Bauer, Ludwigsburg.