Joe Farrell / Joe Farrell Quartet

Kindle読み放題で見つけた書籍『ジャズ名盤30』。その30番目に紹介されたジョー・ファレルの初リーダーアルバム。この本の著者は、高田馬場のジャズ喫茶『マイルストーン』のマスター織戸優(おりと まさる)氏。本作を次のように評している。ちなみに、『マイルストーン』は2019年7月31日に閉店。

「本作は、ジョー・ファレルをリーダーとしているが、実質はマイルス・バンドを取り込んだチック・コリアのリーダー作だ。マイルスグループの緊張を強いられるハードなセッションで鍛え上げられたミュージシャン達によって強靭なサウンドが組み立てられる。〈中略〉その後におけるチック・コリアの歩みを予言する作品であり、生涯の傑作となった」。

織戸氏の「コリアの生涯の傑作」に魅かれて購入してみたが、自分にはコリア風味があまり感じられない。ましてや、ファレルはマイルスとのアルバムでの共演は全く無いのだ。ファレル以外のメンバーは、本作の1年前、マイルスのアルバムBitches Brewに参加。しかし、ファレルとしては、それはどうでもいいことで、初の自分名義のアルバムに全力投球したはずだ。全6曲中の4曲がファレルの作品であることも、それを示している。

1. Follow Your Heart
2. Collage For Polly
3. Circle In The Square
4. Molten Glass
5. Alter Ego
6. Song Of The Wind
7. Motion

Joe Farrell - tenor saxophone, flute, oboe
John McLaughlin - guitar (tracks 1,7)
Chick Corea - piano (except track 5)
Dave Holland - double bass (except track 6)
Jack DeJohnette - drums (except tracks 5,6)

Recorded on July 1 & 2, 1970 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

コルトレーンの世界 / 植草甚一・鍵谷幸信

白水社 1978年1月20日発行 1,500円。植草甚一と鍵谷幸信の編集による本で、数多くの人が、この本でコルトレーンを語っている。青木和富、清水俊彦、悠雅彦、相倉久人、白石かずこ、中上健次、翠川敬基など。その中で、中上健次は短文で次のように結んでいる。

「コルトレーンとアイラーの死んだ今、絶対にジャズの日々は帰らない事を知っている。私に、ジャズは死んだ。いや、ジャズとともにあったねじ曲がった魂の、虫けら同然の、私の<青春>のようなもの、それがはっきりと死んだ。私にはジャズは無用だ」。Amazonで調べたところ、1991年3月1日再版の古本が数冊販売されているだけだった。中上が言うように、コルトレーンの死と共にジャズも死んでしまったのかも知れない。

John Coltrane / The Olatunji Concert - The Last Live Recording

コルトレーン最後の録音。藤岡靖洋氏の解説や英文Wikipediaによって、このアルバムの詳細がわかってきた。会場はハーレムにあるオラトゥンジ・アフリカ文化センター。オラトゥンジは、コルトレーンと親交があったナイジェリア出身のドラマーで、このセンターの開設者。1967年4月23日のライブは、午後4時と午後6時からの2つのセッション。録音されたのは、前半のセッションのみ。後半のセッションでは、TunjiとA Love Supreme - Acknowledgementの2曲が演奏されたようだ。

結果的に、録音された最後の曲はMy Favorite Thingsとなった。この曲を最初に録音したのは、60年10月21日。6年半に渡って、演奏し続けてきたことになる。このコンサートの数年後、ラシッド・アリは語っている。「彼が病気だとは思っていなかった。なぜなら、彼がサックスを口に当てても、動揺はしていなっかたからだ。そして、火は一気に燃え上がった」。だが、コンサートの約1か月後、コルトレーンは激しい腹痛を訴え始めた。そして、7月17日に逝ってしまった。

なぜにコルトレーンは、死の間際まで咆哮しなければならなかったのか。妻であるアリスは、コルトレーンの病気を知っていたに違いない。彼の健康を気遣って、コンサート活動を制止しなかったのか。早目の手当てをしていれば・・・。

1. Introduction By Billy Taylor
2. Ogunde
3. My Favorite Things

John Coltrane - soprano saxophone, tenor saxophone
Pharoah Sanders - tenor saxophone
Alice Coltrane - piano
Jimmy Garrison - bass
Rashied Ali - drums
Algie DeWitt - bata drum
Juma Santos - percussion

Recorded on April 23, 1967 at Olatunji Center of African Culture, NYC.