Johnny Griffin / JG

ジョニー・グリフィンの初リーダーセッション。本作は、1956年初め地元シカゴでの録音。その後、グリフィンはニューヨークに進出。同年4月17日には、アルバムIntroducing Johnny Griffinを録音し、57年2月にブルーノートからリリースされた。一方のシカゴ録音は、58年に入ってからシカゴのレーベル・アーゴがリリース。従って、初リーダーアルバムは、形式上Introducing ...になるのだ。アーゴが決断を迷っている間に、もしくは制作作業に手間取っている間に、ブルーノートに先を越されたことになる。

後追いの結果になってしまったのだから、ジャケットに工夫を凝らし、タイトルもChicago's New Tenorみたいな感じで売りだすべきだった。そういう経緯は別にして、グリフィンのサックスの音色は、初期から確立されていたことがよく分かるアルバム。さらに、Satin Wrap, Bee-Ees, Lollypopの3曲はグリフィンの作品であることにも注目したい。

1. I Cried For You
2. Satin Wrap
3. Yesterdays
4. Riff-Raff
5. Bee-Ees
6. The Boy Next Door
7. These Foolish Things
8. Lollypop

Johnny Griffin - tenor saxophone
Junior Mance - piano
Wilbur Ware - bass
Buddy Smith - drums

Recorded in early 1956, Chicago, IL.

Joe Farrell / Joe Farrell Quartet

Kindle読み放題で見つけた書籍『ジャズ名盤30』。その30番目に紹介されたジョー・ファレルの初リーダーアルバム。この本の著者は、高田馬場のジャズ喫茶『マイルストーン』のマスター織戸優(おりと まさる)氏。本作を次のように評している。ちなみに、『マイルストーン』は2019年7月31日に閉店。

「本作は、ジョー・ファレルをリーダーとしているが、実質はマイルス・バンドを取り込んだチック・コリアのリーダー作だ。マイルスグループの緊張を強いられるハードなセッションで鍛え上げられたミュージシャン達によって強靭なサウンドが組み立てられる。〈中略〉その後におけるチック・コリアの歩みを予言する作品であり、生涯の傑作となった」。

織戸氏の「コリアの生涯の傑作」に魅かれて購入してみたが、自分にはコリア風味があまり感じられない。ましてや、ファレルはマイルスとのアルバムでの共演は全く無いのだ。ファレル以外のメンバーは、本作の1年前、マイルスのアルバムBitches Brewに参加。しかし、ファレルとしては、それはどうでもいいことで、初の自分名義のアルバムに全力投球したはずだ。全6曲中の4曲がファレルの作品であることも、それを示している。

1. Follow Your Heart
2. Collage For Polly
3. Circle In The Square
4. Molten Glass
5. Alter Ego
6. Song Of The Wind
7. Motion

Joe Farrell - tenor saxophone, flute, oboe
John McLaughlin - guitar (tracks 1,7)
Chick Corea - piano (except track 5)
Dave Holland - double bass (except track 6)
Jack DeJohnette - drums (except tracks 5,6)

Recorded on July 1 & 2, 1970 at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

コルトレーンの世界 / 植草甚一・鍵谷幸信

白水社 1978年1月20日発行 1,500円。植草甚一と鍵谷幸信の編集による本で、数多くの人が、この本でコルトレーンを語っている。青木和富、清水俊彦、悠雅彦、相倉久人、白石かずこ、中上健次、翠川敬基など。その中で、中上健次は短文で次のように結んでいる。

「コルトレーンとアイラーの死んだ今、絶対にジャズの日々は帰らない事を知っている。私に、ジャズは死んだ。いや、ジャズとともにあったねじ曲がった魂の、虫けら同然の、私の<青春>のようなもの、それがはっきりと死んだ。私にはジャズは無用だ」。Amazonで調べたところ、1991年3月1日再版の古本が数冊販売されているだけだった。中上が言うように、コルトレーンの死と共にジャズも死んでしまったのかも知れない。