John Coltrane / Giant Steps

まさしく上り坂を駆け上がる巨人の歩みをイメージさせるアルバム。しかしながら、曲としてのGiant Stepsは二度とアルバムで取り上げていない。飛躍を遂げた曲だから、振り返ることはなかったのだろう。一方、NaimaとMr. P.C.は何度となく演奏され、多くのアルバムに残っている。

CD化で別テイクが5曲加わり、本作が完成するまでにコルトレーンは試行錯誤していたことが分かる。まず、1959年4月1日にピアノにシダー・ウォルトン、ドラムにレックス・ハンフリーズを配置して、Giant StepsとNaimaを録音。5月4日には、ピアノをトミー・フラナガン、ドラムをアート・テイラーに替えてGiant Stepsを再録音。さらに、それから半年以上経った12月2日に、ピアノにウィントン・ケリー、ドラムにジミー・コブを配置してNaimaを再度録音している。ベースは、いずれもポール・チェンバース。つまり、Giant Stepsは録り直しをすぐに決め、Naimaは判断に迷ったことになる。だが、コルトレーンがボツにしたトラックを聴くのは、後味が良いとは言えない。

1. Giant Steps
2. Cousin Mary
3. Countdown
4. Spiral
5. Syeeda's Song Flute
6. Naima
7. Mr. P.C.
8. Giant Steps [alternate take]
9. Naima [alternate take]
10. Cousin Mary [alternate take]
11. Countdown [alternate take]
12. Syeeda's Song Flute [alternate take]

John Coltrane - tenor saxophone
Tommy Flanagan - piano
Paul Chambers - bass
Art Taylor - drums
Wynton Kelly - piano (track 6)
Jimmy Cobb - drums (tack 6)
Cedar Walton - piano (tracks 8,9)
Lex Humphries - drums (tracks 8,9)

Tracks 1, 2, 5, 7, 10 & 12
Recorded on May 5, 1959 at Atlantic Studios, NYC.

Tracks 3, 4 & 11
Recorded on May 4, 1959 at Atlantic Studios, NYC.

Track 6
Recorded on December 2, 1959 at Atlantic Studios, NYC

Tracks 8 & 9
Recorded on April 1, 1959 at Atlantic Studios, NYC.

John Coltrane / The Believer

コルトレーンがリーダーのプレスティッジでの一連のセッションは、1958年12月で区切りを迎えた。本作は、その最後を含めた3つのセッションから構成。ただし、57年12月録音の2曲は、CD化でのボーナストラック。つまり、かつて所有していたLPには3曲しか収録されていなかった。

本作では、このボーナス・トラックが興味深い。アルバムThe Ray Draper Quintet featuring John Coltraneからの収録である。Ray Draper(レイ・ドレイパー)は、チューバ奏者。チューバが主役のジャズは極めて珍しい。しかも、フロントはコルトレーンとの2管のみ。コルトレーンは立ち位置が難しかったと思う。

1. The Believer
2. Nakatini Serenade
3. Do I Love You Because You're Beautiful
4. Filidia
5. Paul's Pal

Tracks 1 & 2
John Coltrane - tenor saxophone
Donald Byrd - trumpet
Red Garland - piano
Paul Chambers - bass
Louis Hayes - drums
Recorded on January 10, 1958 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Track 3
John Coltrane - tenor saxophone
Freddie Hubbard - trumpet
Red Garland - piano
Paul Chambers - bass
Art Taylor - drums
Recorded on December 26, 1958 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Track 4 & 5
John Coltrane - tenor saxophone
Ray Draper - tuba
Gil Coggins - piano
Spanky DeBrest - bass
Larry Ritchie - drums
Recorded on December 20, 1957 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

John Coltrane / Stardust

1958年7月11日のセッションがアルバムStandard Coltrane、Bahia、Stardustに、そして、12月26日のセッションがアルバムBahia、Stardust、The Believerに分散されてリリース。従って、これらはコンセプトがあって作られたアルバムでないことは確か。国内盤LPのライナーノーツを担当した岩波洋三氏は、以下のように書き始めている。

「ジョン・コルトレーンが急死して今年(77年)で十年になる。しかし、彼への関心は少しも衰えず、コルトレーンの肉体は滅びたがその音楽は生きつづけている。〈中略〉現在の若手サックス・プレイヤーたちもこぞってコルトレーンを研究しているが、分析したからコルトレーンが理解できるものでもないし、コルトレーンのようなプレイヤーになれるわけでもない。コルトレーンの音楽はコルトレーンという人問が生み出したものであり、コルトレーンという人間を越えなければコルトレーン以上の音楽は生み出しえないのだ。そのへんのことを誤解してコルトレーンの音楽を分析すれば立派な音楽がやれると思っているからDavid Liebman(デイブ・リーブマン)などはつねに二流にとどまっているのだ」。当時、リーブマンは31歳、岩波氏は44歳。紙面を埋め合わせるために、リーブマンは標的になってしまった。岩波氏は2012年10月5日に他界。享年79。リーブマンは74歳で健在。近年まではジャズの教育に力を注いでいたようだ。

1. Stardust
2. Time After Time
3. Love Thy Neighbor
4. Then I'll Be Tired Of You

John Coltrane - tenor saxophone
Wilbur Harden - flugelhorn (track 1), trumpet (track 3)
Freddie Hubbard - trumpet (track 4)
Red Garland - piano
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums (tracks 1,3)
Arthur Taylor - drums (tracks 2,4)

Tracks 1 & 3
Recorded on July 11, 1958 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Tracks 2 & 4
Recorded on December 26, 1958 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.