John Coltrane / John Coltrane And Johnny Hartman

失敗作。と思っている。1963年の時点で、コルトレーンとボーカルを結びつける理由はどこにもなかった。トレーンは一年後に録音する『至上の愛』の構想に入っていたはず。ボーカルを迎えての録音に必然性はなかったはずだ。

LPとCDのライナーノーツから。『本アルバムをプロデュースしたのはボブ・シールで、彼はジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマンの間に共通する音楽性と資質を見抜いた。それが企画の勝利をもたらし、稀有な名盤を生んだといえる(岩浪洋三氏)』。『当時コルトレーンはマウスピースが気に入らず、手を加えたら一層悪くなり、急速調のプレイをやりたくても思うにまかせず、かわりのマウスピースも入手できなかった。そこで彼の悩みを知ったプロデューサーのボブ・シールがこれら(バラード、エリントン&コルトレーン、本作)の「変わった企画」を立てたのだという(青木啓氏)』。『本盤はあまりにも美しすぎて解説の言葉など全くいらない、ジョン・コルトレーン自身の激しく変化する音楽観や人生観、日常の繁雑な生活な全てを忘れさせるほどの魅力を超えた不思議な魔力さえ感じさせる美しいアルバムである(藤岡靖洋氏)』。

結局のところ、3人はハートマンとの共演の意義を語ることができていない。ホームラン・バッターが「自分に合うバッドがなかなか見つからず、バントヒットを狙いました」ってプロの仕事ではないのだ。

1. They Say It's Wonderful
2. Dedicated To You
3. My One And Only Love
4. Lush Life
5. You Are Too Beautiful
6. Autumn Serenade

John Coltrane - tenor saxophone
Johnny Hartman - vocals
McCoy Tyner - piano
Jimmy Garrison - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on March 7, 1963 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

John Coltrane / The Lost Album

2018年6月にリリースされたアルバムで、その時は先行予約して迷わず購入した。コルトレーンの音源はすでに世に出尽くしたと思っていたからだ。自分はその全てをほぼ掻き集め聴いてきたはず。ところが、新たな音源が発掘されるとは。1963年3月6日のスタジオ録音。集団即興アルバムAscensionへ向かう前である。

モードを乗り越えた無調の世界ではなく、グループのアンサンブルを重視した演奏。しかし、6月28日にAscensionを吹き込まなければならなかったコルトレーン。なぜに55年間も録音テープが眠っていたのかは、いろいろと憶測があるようだ。だが、その答えは演奏の中にある。コルトレーンは次のステップに向かう足掛かりが必要だった。だからこそ、Impressionsのテイクを繰り返すことで、次のイメージを作り上げようとしたのだろう。また、翌日にはジョニー・ハートマンとの共演が控えていて、その肩慣らしだったのかも知れない。「失われたアルバム」ではあるものの、「見捨てたアルバム」とも言える。

Disc 1
1. Untitled Original 11383 [take 1]
2. Nature Boy
3. Untitled Original 11386 [take 1]
4. Vilia [take 3]
5. Impressions [take 3]
6. Slow Blues
7. One Up, One Down [take 1]

Disc 2
1. Vilia [take 5]
2. Impressions [take 1]
3. Impressions [take 2]
4. Impressions [take 4]
5. Untitled Original 11386 [take 2]
6. Untitled Original 11386 [take 5]
7. One Up, One Down [take 6]

John Coltrane - soprano saxophone, tenor saxophone
McCoy Tyner - piano
Jimmy Garrison - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on March 6, 1963 at at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

John Coltrane / The 1962 Graz Concert

1962年11月後半からコルトレーンはヨーロッパツアーに出た。フランス・パリ(土曜17日)、スウェーデン・ストックホルム(月曜19日)、フィンランド・ヘルシンキ(火曜20日)、デンマーク・コペンハーゲン(木曜22日)、オーストリア・グラーツ(水曜28日)、イタリア・ミラノ(日曜12月2日)の各都市での公演がアルバムになっている。本作は28日のグラーツ。敢えて曜日を入れたのは、コペンハーゲンとグラーツの間に週末があるため。この週末を含んだ5日間、メンバーが休養を取ったとは思えない。そこで、新たな音源が発掘されていないかと調べたが、今のところは見つかっていないようだ。

このアルバムの極めつきは「枯葉」。しかもソプラノサックスによる「枯葉」である。2枚組CDに収められた8曲全てが、コルトレーンにとってのスタンダード。そして、「枯葉」はジャズの超スタンダード。観客の割れんばかりの拍手が、最高のライブだったことを証明している。

Disc 1
1. Bye Bye Blackbird
2. The Inchworm
3. Autumn Leaves
4. Every Time We Say Goodbye
5. Mr. P.C.

Disc 2
1. I Want To Talk About You
2. Impressions
3. My Favorite Things

John Coltrane - tenor saxophone, soprano saxophone
McCoy Tyner - piano
Jimmy Garrison - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on November 28, 1962 at Stefaniensaal, Graz Austria.