本田竹曠 / My Funny Valentine

ピアノトリオによるスタンダード集と言えば、キース・ジャレットをすぐに思い浮かべる。キースのアルバムStandards, Vol.1 & 2が録音されたのは1983年1月で、同年中にリリース。それから2年余りが過ぎた85年4月、本田竹曠がアルバムMy Funny ValentineとIn A Sentimental Moodを録音。本田がキースを意識していたかは分からないが、80年代半ばに新しい流れが沸き起こったことは事実だ。

しかしながら、決定的に違うのは、キースがピアノトリオというフォーマットの可能性を長い期間かけて徹底的に追求したのに対し、本田は残念ながら一発花火で終えてしまった。キースのトリオに比べ、より上質であり、かつ重厚さを感じるのだが…。今だから言えるのだろう、継続が前提ではなかったトリオが一瞬輝いたような、ある種の寂しさがここにある。

1. On Green Dolphin Street
2. Stella By Starlight
3. My Funny Valentine
4. Little B's Poem
5. The Shadow Of Your Smile
6. Blues On The Corner
7. My One And Only Love
8. 'Round Midnight

本田竹曠 - piano
井野信義 - bass
森山威男 - drums

Recorded on April 3 & 4, 1985 at CBS SONY Shinanomachi Studio, TOKYO.

本田竹曠 / Salaam Salaam

CD帯から。『強靭なタッチとブルージーなフィーリングを持つピアニストが、米国のリズム隊と組んだ渾身のトリオ・ミュージック。圧倒的な破壊力を持つ「マイナーズ・オンリー」、“平和”を意味するスワヒリ語のタイトル曲など、魅力的なオリジナルが並ぶ』。ここでのリズム隊とは、ベースのJuini Booth(ジュニ・ブース)とドラムのEric Gravatt(エリック・グラヴァット)のこと。

原田和典氏の2014年12月付けライナーノーツによると、このリズム隊が菊池雅章の帰国ツアーに参加して全国縦断している間を縫って、1974年6月16日に本作の録音が企画されたとのこと。そして、「もう少し練習を積んでからやりたかった」と本田が語ったとある。確かに3人は全力投球なのだが、緊張感のある駆け引きに少し物足りなさを感じる。ちなみに、菊池のアルバムEast Windは、日野晧正、峰厚介、ブース、グラヴァットのメンバーで7月3日に録音されている。

1. Minors Only
2. Natural Tranquility
3. Salaam Salaam

本田竹曠 - piano
Juini Booth - bass
Eric Gravatt - drums

Recorded on June 16, 1974 at Victor Studio, Tokyo.

本田竹曠 / This Is Honda

日本のジャズアルバムを代表する一枚。唯一の欠点は、オリジナルの作品がないこと。原材料は輸入なのである。ジャズの演奏において、テーマとなる楽曲はある意味できっかけでしかない。それを基材にしたアドリブが勝負の世界。だが、一つの例として、3曲目の'Round Midnightで原作者のモンクを超えることは決してできなかったはず。

タイトルをThis Is Hondaとしたならば、自身の作品を少なくとも一曲は持ち込むべきだったろう。海外で通用するアルバムにならなかった理由が、ここにあると思う。本作の2ヵ月前に録音されたチック・コリアのアルバムReturn To Foreverが一つの指針だった。厳しい言い方だが、本田の甘さがここにあった。

1. You Don't Know What Love Is
2. Bye Bye Blackbird
3. 'Round Midnight
4. Softly, As In A Morning Sunrise
5. When Sunny Gets Blue
6. Secret Love

本田竹曠 - piano
鈴木良雄 - bass (except track 3)
渡辺文男 - drums (except track 3)