Horace Parlan / Speakin' My Piece

国内盤CDでの小川隆夫氏による解説では、ナット・ヘントフのオリジナル・ライナーノーツを引用している。「パーランは決してひとりよがりのピアニストではない。アーマッド・ジャマル、ビル・エバンス、ウィントン・ケリー、レイ・ブライアント、トミー・フラナガンなど、同時代のさまざまなミュージシャンをはじめ、バド・パウエルやジョン・ルイスにも興味を持ってきた。非常に情緒的で、激しくスイングするピアニストである一方、不要な音を極力排し、間を有効に使うことにも気を配っている」。

パーラン特有のブルージーなピアノタッチに耳を傾けてしまうが、無駄な音がないという点が違った魅力なのだろう。本作では、フロントのタレンタイン兄弟が、そんなパーランとの駆け引きを楽しんでいる感じだ。ジャケットも無駄がなく、すっきりとしている。イメージは躍動する黒鍵、その中にいるパーランなのか。

1. Wadin'
2. Up In Cynthia's Room
3. Borderline
4. Rastus
5. Oh So Blue
6. Speakin' My Piece

Stanley Turrentine - tenor saxophone
Tommy Turrentine - trumpet
Horace Parlan - piano
George Tucker - bass
Al Harewood - drums

Recorded on July 14, 1960 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Horace Parlan / Us Three

ホレス・パーラン作、1曲目のタイトル曲Us Threeが、このアルバムの最大の聴き所。そして、最大の疑問点。緊迫した雰囲気で始まり、ぐいぐいと聴き手を引っ張って行く。パーランの世界に引きずり込まれ、いい感じで酔いが回って来た4分過ぎ、あっけなく終わってしまう。ベースソロ、ドラムソロ、4バースなどをぶち込んで、ピアノトリオ自体が酔いしれ、聴き手をとことん酔わすべきだった。

なんとなく欲求不満が残る中、6曲目にWalkin'が登場。この曲はマイルス作ではないものの、マイルスの十八番。本アルバムが録音される3年前の1957年6月にアルバムWalkin'がリリースされている。いまでこそ、Walkin'と言えばマイルスを連想してしまうが、50年代末から60年代に入った頃は、そこまで定着はしていなかったのだろう。レイ・ブライアントもピアノトリオのアルバムRay Bryant Playsに収録している。こちらは、59年10月から11月に録音。

1. Us Three
2. I Want To Be Loved
3. Come Rain Or Come Shine
4. Wadin'
5. The Lady Is A Tramp
6. Walkin'
7. Return Engagement

Horace Parlan - piano
George Tucker - bass
Al Harewood - drums

Recorded on April 20, 1960 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

High Five / Split Kick

High Fiveの前作Five For Fun(2008年1月録音)のCD帯には、「究極の新世代ハードバップ集団! イタリアの最強クインテットが遂にブルーノートからメジャー・デビュー!」とあって、かなりの秀作だった。そして、2010年6月の録音された本作も申し分なし。ホレス・シルバーの作品を3曲(Split Kick, Quicksilver, Peace)を取り上げていることも興味深い。

ところが、このSplit Kick以降のアルバムが見つからない。イタリアのジャズの情報はなかなか入手できず正確なところは分からないのだが、「新世代」と謳われながら、まるで一発花火の如く終わってしまったようだ。「究極の一発花火集団!」である。リーダー不在のコンボだけに、「互いの時間が合えば、またやろうか」というスタンスなのかも知れない。

1. Split Kick
2. Motorizzazione
3. Some Day My Prince Will Come
4. Il Testimone
5. Quicksilver
6. Spirito Libero
7. Sad Day
8. Something Cute
9. Peace

Daniele Scannapieco - tenor saxophone
Fabrizio Bosso - trumpet, flugelhorn
Luca Mannutza - piano
Tomaso Scannapieco - bass
Lorenzo Tucci - drums

Recorded on June 14 - 17, 2010 in Rome.