Gerry Mulligan / Night Lights

疲れた体を癒してくれる一枚。アルバムタイトルとジャケットが、深まった夜に聴いて欲しいと言っている。1970年代、FM東京で深夜に放送された『アスペクト・イン・ジャズ』。司会は油井正一氏。よく聴いていた。ラジオが一つの文化だった時代である。4曲目のPrelude In E Minorが、この番組の冒頭で流れた。受験勉強とラジオが切り離せなかった時代。自分がジャズにのめり込んだ理由はいくつかあるが、その一つがこの番組であり、Eマイナーのこの曲。つまり、Aから始まる5段階の最後で、しかもマイナー。高校の成績も落第に近いEだった。浪人するのは必然であった。

ジェリー・マリガン名義のアルバムながら、フロント3管にギターが加わり、バリトンサックスが中心ではない。しかも、マリガン作のタイトル曲Night Lightsでアルバムは始まるが、マリガン自身によるピアノの演奏で幕が開ける。いや、夜が更けていくのだ。

1. Night Lights
2. Morning Of The Carnival (from "Black Orpheus")
3. In The Wee Small Hours Of The Morning
4. Prelude In E Minor
5. Festival Minor
6. Tell Me When
7. Night Lights

Tracks 1 - 6
Gerry Mulligan - baritone saxophone, piano (track 1)
Art Farmer - trumpet, flugelhorn
Bob Brookmeyer - trombone
Jim Hall - guitar
Bill Crow - bass
Dave Bailey - drums
Recorded on September 12 and October 3, 1963 at Nola's Penthouse Sound Studios, NYC.

Track 7
Gerry Mulligan - clarinet
Jond Gray - guitar
Pete Jolly - piano
Jimmy Bond - bass
Hal Blaine - drums
Plus, a ten-piece string section, concert master - Harry Bluestone
Recorded in October 1965 in NYC.

Gerry Mulligan / Presents A Concert In Jazz

スイングジャーナル選定ゴールド・ディスク。それに釣られてLPを購入したが、新品か中古だったかは覚えていない。タイトルから、当然ながらライブ演奏と思って針を落としたらスタジオ録音で、騙されたと思ったのはよく覚えている。ジェリー・マリガンのビック・バンドは「コンサート・ジャズ・バンド」と呼んでいたことを、LPとCDのライナーノーツから改めて知った。

CDの帯から。「作編曲者としても活躍した名バリトン奏者が率いたコンサート・ジャズ・バンドの最高傑作。ジョージ・ラッセル、ゲイリー・マクファーランドらの優秀な才能にスポットを当てた意欲的なナンバーが並ぶ。絶妙なアンサンブルがソロリストたちの妙技を際立たせる」。その通りだと思うのだが、いま一つ厚みに欠ける。何度も聴き直して気が付いたのは、和音楽器はピアノのみ。しかも、マリガン自身がピアノを弾いているので、出番はほとんどない。

1. All About Rosie
2. Weep
3. I Know, Don't Know How
4. Chuggin'
5. Summer's Over
6. Israel

Doc Severinsen, Don Ferrara, Nick Travis - trumpet
Allan Raph, Bob Brookmeyer, Willie Dennis - trombone
Gene Quill - alto saxophone, clarinet
Bob Donovan - alto saxophone, flute
Jim Reider - tenor saxophone
Gene Allen - baritone saxophone, bass clarinet
Gerry Mulligan - baritone saxophone, piano
Bill Crow - bass
Mel Lewis - drums

Recorded on July 10 & 11, 1961 in NYC.

Gerry Mulligan / Mulligan Meets Monk

バリトンサックスの名手ジェリー・マリガンがモンクに闘いを挑んだ一枚。なのだが、凍り付くような緊張感はなく、それぞれが自分自身を表現しながら、セッションを楽しんでいる感じ。録音当時、マリガン30歳、モンクは40歳間近であった。10年離れた先輩後輩だが、互いを認め評価していたのではないかと思う。モンクのディスコグラフィーを見ると、モンクとマリガンの共演は、1955年7月17日のニューポート・ジャズ・フェスティバルでのマイルスグループへの参加。それ以外は、本アルバムしかない。

CD化で別テイクが3曲追加された。その中の1曲であるマリガン作のDecidedlyは、LPではtake 4が採用され、CDにはtake 5が追加。テイクを重ね、4回目のセッションでは満足できず、さらに続けた訳である。だが、必ずしもテイク毎に完成度が高まるのではなく、緊張感を継続するのは難しいということが分かる。

LPのライナーノーツは佐藤秀樹氏が担当しているが、1曲目の'Round Midnightに関しては、油井正一氏の次の文章を引用している。「この曲におけるマリガンには明らかに作戦が感じられます。最初は憂鬱なムードに始まって、中頃以後は背後のモンクが何とかして暴走をとめようとピアノを叩き出している姿が目に浮かびますが、完全に乗った快活なマリガン・ペースに引きずりこみ、他の同曲の演奏にみられなかった成果を収めている点で、珍重すべきセッションです」。こんな深い聴き方は、まだ自分にはできない。

1. 'Round Midnight
2. Rhythm-A-Ning
3. Sweet And Lovely
4. Decidedly [take 4]
5. Decidedly [take 5]
6. Straight, No Chaser [take 3]
7. Straight, No Chaser [take 1]
8. I Mean You [take 4]
9. I Mean You [take 2]

Gerry Mulligan - baritone saxophone
Thelonious Monk - piano
Wilbur Ware - double bass
Shadow Wilson - drums

Recorded on August 12 & 13, 1957 in NYC.