Eric Dolphy / Here And There

3つのセッションを一つにまとめたアルバム。それぞれのセッションは、独立のアルバムになっているので、それから漏れた曲を集めた構成。決して不出来な演奏ではないが、アルバムとしての価値が高いとは言えない。それを補うようにタイトルに工夫を凝らしている。Here And There(此岸と彼岸)。この曲がある訳ではない。エリック・ドルフィーにとって米国が「此岸」、ヨーロッパが「彼岸」であったと考えるのは、無理があるだろうか。

1曲目と2曲目は、1961年7月16日のファイブ・スポットでのライブ演奏。ドルフィーのディスコグラフィーによれば、この2曲からライブが始まったようだ。となると、2曲目でいきなりバスクラリネットのソロによるGod Bless The Child(邦題:神よめぐみを)を披露したことになる。その日の観客は、圧倒されただろう。本作での最も注目すべき1曲だ。

1. Status Seeking
2. God Bless The Child
3. April Fool
4. G.W. [take 1]
5. Don't Blame Me

Tracks 1 & 2
Eric Dolphy - alto saxophone (tracks 1), bass clarinet (track 2)
Booker Little - trumpet (track 1)
Mal Waldron - piano (track 1)
Richard Davis - double bass (track 1)
Eddie Blackwell - drums (track 1)
Recorded on July 16, 1961 at Five Spot, NYC.

Tracks 3 & 4
Eric Dolphy - flute (track 3), alto saxophone (track 4)
Freddie Hubbard - trumpet (track 4)
Jaki Byard - piano (track 3)
George Tucker - double bass
Roy Haynes - drums
Recorded on April 1, 1960 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Track 5
Eric Dolphy - flute
Bent Axen - piano
Erik Moseholm - double bass
Jorn Elniff - drums
Recorded on September 6, 1961 at Berlingske Has, Copenhagen.

Eric Dolphy / Berlin Concerts

かつて、2枚組LPでリリースされたアルバム。当然ながら、LPは所有していたのだが録音データが曖昧だった。収録された全7曲は、1961年8月31日のベルリンでのライブ。ただし、4曲はジャズクラブ、3曲はコンサートホールの録音で、それらが演奏順を無視して無理矢理押し込められている。LPの収録時間の関係から致し方なかったのだろう。

CDになって曲順がライブ演奏に合わせて見直されると思ったが、LPと変わらず。ドイツの名門レーベルenjaとしては、いかにも手を抜いた形だ。エリック・ドルフィーという、ジャズに大きな痕跡を残したミュージシャンのライブ演奏は忠実に再現すべきだ。コンサートが終わってからジャズクラブで演奏したと仮定し、ドルフィーのディスコグラフィーが演奏順に記載されているとすれば、以下の曲順になる(括弧内は楽器構成と演奏時間)。コンサートでは3分から5分程度の短い演奏の3曲のみ。他の曲の録音に失敗したのか、ドルフィーは前座の扱いだったのか。謎のままである。

< Funkturm Exhibition Hal >
1. G.W. [quintet] (2:54)
2. God Bless The Child [solo] (3:33)
3. 245 [quintet] (5:42)
< Club Jazz Salon >
4. Hot House [quintet] (19:09)
5. When Lights Are Low [trio] (13:07)
6. Hi-Fly [trio] (14:43)
7. I'll Remember April [quintet] (13:32)

* * * * *

1. Hot House
2. When Lights Are Low
3. G.W. [mistitles as Geewee]
4. God Bless The Child
5. Hi-Fly
6. 245 [mistitled as The Meeting]
7. I'll Remember April

Eric Dolphy - alto saxophone, bass clarinet
Benny Bailey - trumpet (tracks 1,3,6,7)
Pepsi Auer - piano (tracks 1,3,6,7)
Jamil Nasser - bass (except track 4)
Buster Smith - drums (except track 4)

Tracks 1, 2, 5 & 7
Recorded on August 30, 1961 at Club Jazz Salon, Berlin, West Germany.

Tracks 3, 4 & 6
Recorded on August 30, 1961 at Funkturm Exhibition Hal, Berlin, West Germany.

Eric Dolphy / Memorial Album [Prestige]

Vladimir Simosko(ウラジミール・シモスコ)とBarry Tepperman(バリー・テッパーマン)の著書『エリック・ドルフィー』(訳:間 章)には、「プレスティッジは1961年7月16日の夜の全ての演奏を録音し、結局はその全トラックを、数年間を要し、エリック・ドルフィーの死とブッカー・リトルの死を間においたとはいえ、発表するにいたった」とある。

リトルは61年10月5日に尿毒症の合併症で急逝。ドルフィーは64年6月29日に客死。そして、本作は65年4月にリリース。つまり、ドルフィーを追悼しMemorialとタイトルしたのだろうが、むしろ、リトルの死の直後に出すべきであった。どちらがリーダーという訳でなく、双頭コンボだったから。エリック・ドルフィーのディスコグラフィーに記載されたマトリクス番号が正しければ、当夜の最後の2曲を収めたアルバム。そう思って聴くと、無事に一日のステージを終えられそうだという雰囲気が伝わってくる。

1. Number Eight (Posta Lotsa)
2. Booker's Waltz

Eric Dolphy - alto saxophone (track 1), bass clarinet (track 2)
Booker Little - trumpet
Mal Waldron - piano
Richard Davis - bass
Ed Blackwell - drums

Recorded on July 16, 1961 at Five Spot, NYC.