Donald Byrd / A New Perspective

奇抜な視点でヘッドライトとドナルド・バードを撮影したジャケット。タイトルA New Perspectiveからの発想であることが分かる。しかも、演奏内容も新規性に富んでいる。全5曲にコーラスが入る。所有するアルバムで、コーラスで思い付くのは1977年9月録音のマッコイ・タイナーのInner Voices。2つのアルバムの狙いは全く違っていて、本作はコーラスをホーン的な効果として使っているが、マッコイはコーラスが軸になっている。

では、本作のコーラス入りに効果はあったのだろうか。フロント陣には、トランペット、テナーサックス、ギター、ヴァイブを構え十分過ぎる体制。そこにコーラスをぶち込んだ。バードのトランペット1本にコーラスをからませるならば、触媒作用が働いたかもしれないのだ。つまり、役者が多過ぎてジャケットが狙ったような視点が定まっていない。結果的に後味が残るのはコーラスのみ。バードのトランペットはもみ消されてしまった。ところで、バードのアルバムは9枚所有しているが、本作を含めた3枚のジャケットが、バードと車のツーショット。コーラスにこだわり、車にこだわったアルバム。だが、こだわり過ぎたようだ。

1. Elijah
2. Beast Of Burden
3. Cristo Redentor
4. The Black Disciple
5. Chant

Donald Byrd - trumpet
Hank Mobley - tenor saxophone
Kenny Burrell - guitar
Donald Best - vibraphone, vocals
Herbie Hancock - piano
Butch Warren - bass
Lex Humphries - drums
Coleridge-Taylor Perkinson - choir direction
Unidentified vocalists - Four men (two basses, two tenors) and four women (two altos, two sopranos)

Recorded on January 12, 1963 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Dexter Gordon / Biting The Apple

Blue Bossa(ブルー・ボッサ)を聴くために購入したアルバム。この曲は大学のジャズ研時代に何度となく練習し、学祭でも演奏した。ところが、ケニー・ドーハム作のこの曲は、プロの間ではそれほど演奏されていない。所有するアルバムで本作以外は、Art Farmer / What Happens?, Joe Henderson / Page One, Michel Camilo / Live at the Blue Note, Tommy Flanagan / Montreux '77の4枚のみに収録。曲想がはっきりしているだけに、個性を出すのが難しいのだろう。なので、アマチュア向きかも知れない。

そんなことが1977年6月付けの英文ライナーノーツに記載されているかと思い流し読みしたが、Bossaの文字は出て来なかった。Wikipediaによると、Georgia On My MindとBlue BossaはCD化で追加されたことが分かった。デクスター・ゴードン自身も、アマチュア向きの曲をLPに入れるのは躊躇したのかも知れない。ところで、アルバムタイトルは、デクスター作の1曲目 Apple Jumpからの連想と今まで思い込んでいた。ライナーノーツの締め括りに以下の記載があった。ニューヨークに噛みついたということ!

This album is titled Biting The Apple. The apple, of course, refers to New York. Based on our first-hand account of the scene, we can tell you that Dexter not only bit the Apple; he swallowed the whole damn thing!(タイトルBiting The AppleのAppleは、もちろんニューヨークを指している。ジャズシーンが置かれている状況から、デクスターはAppleに噛みついただけでない、彼は丸飲みしたんだ!)。

1. Apple Jump
2. I'll Remember April
3. Georgia On My Mind
4. Blue Bossa
5. Skylark
6. A La Modal

Dexter Gordon - tenor saxophone
Barry Harris - piano
Sam Jones - bass
Al Foster - drums

Recorded on November 9, 1976 at Cl Recording Studios.

Duke Ellington / Money Jungle

このアルバムは、聴き手に対して様々な印象を与えるだろう。音の厚みが中途半端ではない。ピアノ、ベース、ドラムを横に並べたのではなく、縦に積み上げた感じ。自分としては、デューク・エリントンのピアノ、マックス・ローチのドラムにしびれる以上に、ミンガスのベースを中心に聴いてしまうのだ。

大学のジャズ研に入った時、ウッドベースをやることにした。特に理由はなかったが、「お前、ベースに向いているよ」と先輩から言われたからである。さて、このアルバムをどこのジャズ喫茶で初めて聴いたのかは覚えていないが、1曲目のタイトル曲Money Jungleでのミンガスのベース奏法に不思議な感覚を持ったことは、今でも忘れられない。弦が共鳴するような演奏スタイル。その奏法が未だに分からない。ジャズ研の頃、弓で弾くだけでなく、弓をベースの弦に連打する奏法にチャレンジしたことはあるのだが。

この奏法に関して、いろいろと調べていたら、ダウンビート2013年6月の記事"Money Jungle: 50 Years After the Summit"に出会った。以下がその一文。これだけでは正確に分からないが、弦をつまみ上げて指板に弾き放つと同時に、ベース本体を揺さぶるようなイメージ。ウッドベースはすでに手放してしまったので、チャレンジできないのが残念。

The bassist plays with uncanny force on that edgy opener, practically mugging his instrument by thumping a single note repeatedly, then literally pulling the string off the fingerboard at one point.(ベーシストは、鋭く弾き放つ超人的な力で演奏し、1つの音を繰り返し叩いて楽器を奪い取り、文字通り指板から弦を一点で引き離す)。

1. Money Jungle
2. Le Fleurs Africaines (African Flower)
3. Very Special
4. Warm Valley
5. Wig Wise
6. Caravan
7. Solitude

Duke Ellington - piano
Charles Mingus - bass
Max Roach - drums

Recorded on September 17, 1962 at Sound Makers, NYC.