Don Cherry / Symphony For Improvisers

国内盤LPでは、そのものずばり「即興演奏家のためのシンフォニー」とタイトルが付けられた。しかし、よく考えると中途半端である。「即興演奏家のための交響曲」とすべきだろう。さらによく考えると、「交響曲」は多楽章からなる管弦楽曲で、3楽章か4楽章が一般的。このアルバムは2楽章で構成。それ以上に、交響曲が即興で成立するのかという根本的な問題があるのだが…。

そんな理屈は抜きにして、フロント陣が強力であることを今さらながら感じる。ドン・チェリー、ガトー・バルビエリ、ファラオ・サンダース。ベースが2本で、ヴァイブが緊張感を生み出す。要となるのが、エド・ブラックウェルのドラム。ブルーノート・レーベルからのリリースであることにも価値がある。

1. Symphony For Improvisers, Nu Creative Love, What's Not Serious, Infant Happiness
2. Manhattan Cry, Manhattan Cry, Lunatic, Sparkle Plenty, Om Nu

Don Cherry - cornet
Gato Barbieri - tenor saxophone
Pharoah Sanders - tenor saxophone, piccolo
Karl Berger - vibraphone, piano
Henry Grimes - bass
Jenny Clark - bass
Edward Blackwell - drums

Recorded on September 19, 1966 at Rudy Van Gelder Studios, Englewood Cliffs, New Jersey.

Don Cherry / Complete Communion

2つの組曲で構成。それぞれ20分38秒と19分36秒。曲名が付けられた4曲が連続し、各組曲が成り立っている。曲想が大きく転化するのではなく、視点を切り替えていく感じ。ある「塊」に対して視点を変えていき、360度回転して元の位置に戻る。回転軸を決めるのがベース、角速度を制御するのがドラム。

そんなイメージであるが、実態は分からない。ドン・チェリーとガトー・バルビエリが、ベースとドラムに素直に従うとは思えないからだ。注意深く聴くと、4人は見事に反応し合っている。完璧なスコアがあったとは思えないが、曲の進行を示す詳細なスケッチはあったのだろう。だからこそ、LPの片面ずつに収まる演奏時間なのだ。用意周到なフリージャズである。

1. Complete Communion:
 - Complete Communion
 - And Now
 - Golden Heart
 - Remembrance
2. Elephantasy:
 - Elephantasy
 - Our Feelings
 - Bishmallah
 - Wind, Sand And Stars

Don Cherry - cornet
Leandro "Gato" Barbieri - tenor saxophone
Henry Grimes - bass
Edward Blackwell - drums

Recorded on December 24, 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Dollar Brand / Banyana

どのピアノトリオと比べても、全く違ったスタイル。ピアノ、ベース、ドラムが遊離している感じ。それぞれが勝手に自己主張している訳でもなく、寄り添っている訳でもない。かといって、一つの方向を目指しているとも感じない。「遊離感漂う調和」とでも表現してみたい。

「現在はアブドゥーラ・イブラヒムとして活躍する南アフリカ出身のピアニスト、ダラー・ブランドがセシル・マクビー(b)とロイ・ブルックス(ds)という最強のリズム隊をバックに豪腕ぶりを発揮した最強の黒ジャズ・ピアノトリオ作品!」とCD帯にあるのだが、敢えて「黒ジャズ」としたのは何の意味があるのだろう。

1. Banyana - The Children Of Africa
2. Asr
3. Ishmael
4. The Honey-Bird
5. The Dream
6. Yukio-Khalifa

Dollar Brand - piano, soprano saxophone, vocals
Cecil McBee - bass
Roy Brooks - drums

Recorded on January 27, 1976 at Downtown Sound Studio, NYC.