Don Cherry / Where Is Brooklyn?

1966年11月の録音だが、69年9月リリースなので3年近く費やしたことになる。しかも、初期のタイトルはThe Art Of Smiling(微笑の芸術)だったと、マイケル・カスクーナがライナーノーツに書いている。なぜにリリースに時間を要し、さらにはタイトルも変えたのか。そもそも、Where Is Brooklyn?(ブルックリンは何処?)の意味も不明なのだが…。

CD帯には3項目を列挙。「1.オーネットから独立した鬼才が1965年から66年にかけてブルーノートに残した3傑作中の最終作。 2.コルトレーン・バンド在籍のファラオ・サンダースを加えたカルテット構成。 3.艶やかなトランペットとフリーキーなサックスのコントラストが素晴らしい」。さらに付け加えたいのは、「4.エド・ブラックウェルの躍動感あふれるドラミング」である。

ジャケット裏には、オーネット・コールマンによる長文の解説が掲載されている。その中の一文。These men playing here can always be counted on for a first class performance because love lives in their heart for the true expression of the human warmth.(このプレイヤー達は、人間の暖かさを真に表現するための愛が心に宿っているので、最高のパフォーマンスを期待することができる)。この文章を読むと、タイトルはThe Art Of Smilingの方が適切な感じがする。

1. Awake Nu
2. Taste Maker
3. The Thing
4. There Is The Bomb
5. Unite

Don Cherry - cornet
Pharoah Sanders - tenor saxophone, piccolo
Henry Grimes - bass
Ed Blackwell - drums

Recorded on November 11, 1966 at Rudy Van Gelder Studios, Englewood Cliffs, New Jersey.

Don Cherry / El Corazón

ドン・チェリーとエド・ブラックウェルのデュオアルバム。しかしながら、二人が刺激し合いながらインタープレイを演じている訳ではない。共通のコンセプトを持って音楽を創り上げている。そのコンセプトとは、民族や国境を越えた「自然」である。ナチュラル・サウンドと書いてしまうと、とても軽い感じで、生活に根付いた音楽と言えばよいのだろうか。このアルバムを聴いていると、すーっと吸い込まれていき、気持ちが緩やかになる。

LPのライナーノーツでは、藤本雄三氏が最後にこう書いている。「ジャンルを問わず、一切の先入観を捨てて、己の姿を鏡に写すごとく、このサウンドに身をさらしてみればいいのだ。そこに投影された自己の姿をつぶさに見ればいいのだ」。対峙すべきジャズのアルバムは、それほど多くはない。そんな中で鼓動を感じて聴くアルバムの一つ。

1. Mutron / Bemsha Swing / Solidarity / Arabian Nightingale
2. Roland Alphonso
3. Makondi
4. Street Dancing
5. Short Stuff / El Corazón / Rhythm For Runner
6. Near-In
7. Voice Of The Silence

Don Cherry - pocket trumpet, piano, melodica, doussn' gouni, organ
Ed Blackwell - drums, wood drum, cowbell

Recorded in February 1982 at Tonstudio Bauer, Ludwigsburg, West Germany.

Don Cherry / Brown Rice

録音データは、正確に記されていないものの1975年に作られたアルバムであることは確か。コルトレーンが他界し、マイルスの吸引力がなくなってしまった時、ジャズそのものが彷徨を始めた。誰がイニシアチィブを取るのか。誰がトレーンの後継者となるのか。ドン・チェリーもその一人であったのかも知れない。このアルバムを改めて聴くと、その可能性を秘めていたことが分かる。「解放」とか「沸騰」という言葉が思いつくのだが、残念ながらそこまで。「変革」ないしは「改革」という言葉まではたどり着かない。

所有するチェリーのアルバムEternal Rhythm(68年11月録音)、mu(69年8月録音)、そしてこのBrown Riceを順番に聴くと、チェリーはそれまでのジャズの概念から飛び出してしまった気がする。Eternal Rhythmで滑走、muで離陸、Brown Riceで滑空。そもそも、チェリー自身がジャズを変えようという意識などまったくなかったのだ。

1. Brown Rice
2. Malkauns
3. Chenrezig
4. Degi-Degi

Don Cherry - trumpet, piano, electric piano, vocals
Frank Lowe - saxophone (tracks 1,3,4)
Ricky Cherry - piano, electric piano (tracks 1,3,4)
Charlie Haden - bass (tracks 1,2,4)
Hakim Jamil - bass (track 3)
Billy Higgins - drums
Bunchie Fox - bongos (track 1)
Moki - tambura (track 2)
Verna Gillis - vocals (track 1)

Tracks 1, 2 & 4
Recorded in 1975 at Basement Recording Studios, NYC.

Track 3
Recorded in 1975 at Grog Kill, Woodstock, New York.