Cecil Taylor / Unit Structures

セシル・テイラーがブルーノート・レーベルに残したアルバムは、このUnit Structures(1966年5月録音)とConquistador!(同年10月録音)の2枚のみ。それぞれのライナーノーツを読むと、テイラーはレコーディング・エンジニアRudy Van Gelder(ルディ・ヴァン・ゲルダー)と全く意見が合わなかったようだ。それでも2枚のアルバムをリリースしたということは、テイラーは「音」よりも「音楽」を優先したということなのだろう。ちなみに、ミンガスはゲルダ―を全く評価せず、ブルーノートからは一枚も出していない。

さて、一般的にはセシル・テイラーはフリージャズに分類される。しかし、このアルバムでの音楽が自由かと言うと、かなり計算されている感じだ。アルバムには、テイラー自身による1,600語による長文ノートが記載されている。Google翻訳の結果を読んだが、Unit Structuresを概念めいて説明していることだけが分かった。詳細は意味不明。CD化でEnter, Eveningの別テイクが入った。フリージャズでの撮り直しとは、そもそもフリーでないことを物語っていて、一発勝負ではない。まるで、方程式を解こうとしているようだ。彼の音楽を『数学ジャズ』としたい。

1. Steps
2. Enter, Evening (Soft Line Structure)
3. Enter, Evening [alternate take]
4. Unit Structure / As Of A Now / Section
5. Tales (8 Whisps)

Jimmy Lyons - alto saxophone
Ken McIntyre - alto saxophone
Eddie Gale Stevens Jr - trumpet
Cecil Taylor - piano
Henry Grimes - bass
Alan Silva - bass
Andrew Cyrille - drums

Recorded on May 19, 1966 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Cecil Taylor / Nefertiti

かつての山下トリオ(山下洋輔、坂田明、森山威男)と同じ楽器構成のため、どうしても比較したくなる。山下トリオの真骨頂は、あるフレーズ(合言葉と言ってもいい)を元にして、どんどん膨らませていくことにある。その過程で様々な技(わざ)が出て、3人による技の掛け合いが頂点に達すると、膨らんだ風船がついに破裂してクライマックスとなる。

一方、セシル・テイラーの作法は、全体の骨格はすでにできていて、そこに壁や窓をはめ込んでいく感じ。全てをはめ込んだら完成。ジグソーパズルのイメージだろうか。LPのライナーノーツでは、間章(あいだ あきら)氏がこう記述している。「ピアノの歴史の中でテイラーはピアノの解体がピアニストの自己解体かという負性を理知の内に肉体を通してとらえ込んだひとつの局面の極を代表するべき存在である」。全く分からない。かつてのフリージャズを語る時の卑しき表現。いいか、悪いか。好きか、嫌いか。面白いか、つまらないか。音楽なんて、ジャズなんて、それでしかない。それを「自己解体」とか言って逃げる姿勢。フリージャズをつまらなくした連中がここにいたのだ。

1. What's New?
2. Nefertiti, The Beautiful One Has Come [1st Variation]
3. Lena
4. Nefertiti, The Beautiful One Has Come [2nd Variation]
5. Call [MONO 2nd variation]

Cecil Taylor - piano
Jimmy Lyons - alto saxophone
Sonny Murray - drums

Recorded on November 23, 1962 at The Cafe Montmartre, Copenhagen, Denmark.

Cecil Taylor / Love For Sale

前半3曲は、ピアノトリオでのコール・ポーターのスタンダード。後半3曲は、テナーとトランペットを加えたクインテットでのテイラーのオリジナル。この1枚のアルバムに、テイラーの真髄がぎっしり詰まっている。CD化でピアノソロが入ればと期待していたが、それは叶わなかった。

では、テイラーのジャズはどこが凄いか?いろいろ考えるのだが、決定的な言葉が見つからない。ふと、思い付いたのは「迷いのジャズ」。「これでいいのだ!」と終わらずに、「これでいいのだろうか?」と終わる感じ。8分余りのタイトル曲Love For Saleは、ソロでなんとなくテーマが始まり、ベースとドラムが入ってくる。だが、Love For Saleのフレーズに固執するか突き放すか迷っているうちに演奏は進行し、あっけなく終わってしまう。テイラーは何度もライブ演奏を行い、数多くのアルバムを残してきたが、常に「これでいいのだろうか?」と思っていたような気がする。

1. Get Out Of Town
2. I Love Paris
3. Love For Sale
4. Little Lees (aka Louise)
5. Matie's Trophies (aka Motystrophe)
6. Carol / Three Points

Cecil Taylor - piano
Buell Neidlinger - bass (or Chris White, from Album "In Transition ")
Denis Charles - drums (or Rudy Collins, from Album "In Transition")
Bill Barron - tenor saxophone (tracks 4-6)
Ted Curson - trumpet (tracks 4-6)

Recorded on April 15, 1959 at Nola's Penthouse Sound Studios, NYC.