Cedar Walton / Pit Inn

シダー・ウォルトン、サム・ジョーンズ、ビリー・ヒギンスというメンバーが、なぜに新宿ピットインに出演したのかと思っていた。2014年12月付けのライナーノーツで原田和典氏が、「飛ぶ鳥を落とす勢いだった当時の笠井紀美子が、この3人を招聘して1974年12月2日から26日まで全国縦断コンサートを行った」と解説している。その合間の23日のライブ演奏。

つまり、日本のジャズレーベルであるイースト・ウィンドが、この機会を逃さないと録音した。だが、どうも音が前へ出てこないで、こもった感じ。サム・ジョーンズのベースって、もっと力強かったはず。ライブを体験した人は十分に堪能できたのだろうが、それが伝わってこない。カレンダーを辿るとこの日は月曜日。学生は別として、サラリーマンは明日の仕事のことが片隅にあったのではないか。さらに、イースト・ウィンド特有の意味不明なジャケットの風船が、そんなふわふわ感を助長している。

1. Suite Sunday
2. Con Alma
3. Without A Song
4. Suntory Blues
5. 'Round Midnight
6. Fantasy In "D"
7. Bleecker Street Theme

Cedar Walton - piano
Sam Jones - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on December 23, 1974 at Pit Inn, Tokyo.

Cedar Walton / Cedar!

シダー・ウォルトンが33歳のときの初リーダーアルバム。ウォルトンは一時代を築いたピアニストではなく、傑出したアルバムを出した訳でもない。だけど、ジャズを長年聴き込んだ人には、彼のピアノは心のどこかに染み入ってくる。このアルバムを聴きながら、「しなやか」という言葉が今浮かんだ。

それに反して、ジャケットの木目は何を意味しているのだろう。刺々しさがなく、木の表面をカンナで綺麗に仕上げたようなアルバムということなのか。ふと思いつき、辞書で調べたらcedarはヒマラヤスギの意味。ちょっとがっかり。デビュー作ならばウォルトンの写真をもっと大きくすべきだった。タイトルのビックリマークが虚しい。

1. Turquoise Twice
2. Twilight Waltz
3. My Ship
4. Short Stuff
5. Head And Shoulders
6. Come Sunday
7. Take The "A" Train

Junior Cook - tenor saxophone (tracks 1,5-7)
Kenny Dorham - trumpet (tracks 1,2,4-7)
Cedar Walton - piano
Leroy Vinnegar - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on July 10, 1967 in NYC.

Cecil Taylor / Garden

セシル・テイラーのピアノソロ・ライブ。全8曲で約90分の演奏なので、2時間ほどのコンサートだったと思われる。この2枚組LPを購入してから、テイラーのアルバム購入は途絶えた。その理由は、かなり期待して購入したにもかかわらず、ほとんど心揺さぶられなかったためである。ライブを体験していれば、また違ったのかも知れないが、1980年代初めのピアニストの自分の興味は、キース・ジャレットや山下洋輔にあった。そのキーワードは「進化」。残念ながら、テイラーのこのアルバムには「進化」を感じ取ることができなかったのだ。

ライナーノーツで、青木和富氏が次のように指摘している(1983年5月付け)。「この〈ガーデン〉の圧倒的な2枚組のソロ・プレイは、さしあたって現在のその闘士ぶりを伝える最も感動的な作品である。70年代初めから、セシルは幾度もこのソロ・プレイに挑戦している。しかし、その頃のプレイとこれを比較して聴けば判るが、この壮大な建築物はいままでにないミステリーがある」。青木氏が闘士テイラーに感動したのは理解できるのだが…。なお、本作はCD化されているが、なぜか2つのCDに分けられジャケットも変えてしまっている。これもミステリーなのだ。

1. Éléll
2. Garden II
3. Garden I
4. Stepping On Stars
5. Introduction To Z
6. Driver Says
7. Pemmican
8. Points

Cecil Taylor - piano

Recorded on November 16, 1981 at Basel Switzerland.