Chico Freeman / Tradition In Transition

岡崎正通氏のライナーノーツはこう始まる。「ジャズの伝統に立脚しながらも、フリーな独自の方法論をもってエネルギッシュなプレイを繰りひろげていったチコ・フリーマン。そんなチコ・フリーマンによって82年、新生エレクトラ・ミュージシャン・レーベルに吹き込まれたホットな1枚である」。

確かに、伝統とフリーを両立してきたチコだと思う。だが、このアルバムでは、1曲目のモンク作Jackie-Ingを除いて、チコ自身やメンバーのオリジナル曲にもかかわらず、フリー的な要素があまり感じられない。むしろ、曲毎に楽器編成を変え綿密に構想を練った感がある。そのことが、逆にエネルギーを削いでしまった。ちょっと消化不良気味のアルバム。そんな中でも、ジャック・ディジョネットがピアノでモンクの曲Jackie-Ingにチャレンジしたのは興味深い。なお、アルバムの邦題は『輪廻学』。輪廻は分かるが、学問なのだろうか。

1. Jackie-Ing
2. Free Association
3. Mys-Story
4. Talkin' Trash
5. Each One Teach One
6. At A Glance
7. The Trespasser
8. In-Spirit
9. A Prayer

Chico Freeman - tenor saxophone (tracks 1-3,5,7,9), flute (tracks 6,8), bass clarinet (track 4)
Wallace Roney - trumpet (tracks 1,2,4,5,7)
Clyde Criner - piano (tracks 1,3,5-9)
Cecil McBee - bass (tracks 1-8)
Jack DeJohnette - drums (tracks 2-4), piano (track 1)
Billy Hart - drums (tracks 1,5-8)

Recorded in 1982 in NYC.

Chico Freeman / No Time Left

原盤はイタリアのレーベルBlack Saintからリリース。国内盤LPは、ディスクユニオンのレーベルDIWから80年代半ばに発売された。ライナーノーツは悠雅彦氏で1983年3月1日付けとなっている。最近、低価格の輸入盤(フランス製)中古CDを見つけて手に入れた。

自分の中では、チコ・フリーマンは、もっとエネルギッシュは印象があった。しかし、改めてこのアルバムを聴き直すと、曲の構成を優先している感じだ。4人のプレイヤーが互いにぶつかり合ってはいるものの、パンチが浅い。「起承転結」の「転び」が「転がり落ちて」いない。用意したスコアが出来過ぎだったのかも知れない。

1. No Time Left
2. Uhmla
3. Circle

Chico Freeman - soprano saxophone, tenor saxophone, bass clarinet
Jay Hoggard - vibraphone
Rick Rozie - bass
Famoudou Don Moye - drums

Recorded on June 8 & 9, 1979 at Fontana Studios, Milano.

Chico Freeman / Spirit Sensitive

セシル・マクビーのベースが、アルバム全体の屋台骨を背負っている。バラード一色でまとめられているが、決してゆるんだ感じがしない。ベースを軸として、ドラム、ピアノ、そしてチコ・フリーマンのサックスが緊張感溢れるまとまりを見せている。気になるのは録音データ。3ヶ月間かけての録音で、セッション回数は不明。岩浪洋三氏が国内盤LPでライナーノーツを担当。岩浪氏も録音データについては一切触れていないので、残念ながらセッションの風景イメージが湧いてこない。

1977年9月に録音されたフリーマンのアルバムKings Of Maliも、詳細なデータは不明。フリーマンは、データなどには無頓着な性格なのかも知れない。ちなみに、本作はCD化されているものの、LPを含めて廃盤状態。中古CDが14,880円で取引されていた。とてもじゃない。心が傷つき、Spirit Sensitiveになってしまうのだ。

1. Autumn In New York
2. Peace
3. A Child Is Born
4. It Never Entered My Mind
5. Close To You Alone
6. Don't Get Around Much Anymore

Chico Freeman - tenor saxophone, soprano saxophone
Cecil McBee - bass
John Hicks - piano
Billy Hart - drums (tracks 1-5)
Famoudou Don Moye - drums (track 6)

Recorded in October 1978 - January 1979.