Charles Lloyd / Lift Every Voice

2枚組、全18曲、収録時間2時間10分。力作であり、全体的に大河がゆっくり流れるような雰囲気を醸し出している。しかしながら、いまひとつメリハリが足りない。全体を通してリズムに大きな変化がないから、流されていく感じだ。そして、曲によって二人のベーシストを使い分けているが、その効果がよく分からない。一曲だけは、その二人が同時に参加しているので、単純に録音スケジュールによる使い分けとは思えない。

また、クレジットを見ると、ロイドはtarogato(ターロガトー/タロガトー)という楽器も演奏している。Wikipediaで調べたところ、ハンガリーの大衆音楽で使われる木管楽器で、ソプラノサックスに似た形をしていて柔らかい音が出るとのこと。ロイドのソロによるDisc 1のラスト曲Hafez, Shattered Heartで、この楽器を使っている。蛇足ながら、ECMらしくないアルバム。CDのラベルがDisc 1とDisc 2で逆になっていて、製造工程でのミス。Amazonに返品するのも面倒で、しかも、最後の在庫一枚だったのだ。

Disc 1
1. Hymn To The Mother
2. You Are So Beautiful
3. Amazing Grace
4. East Virginia, West Memphis
5. What's Going On
6. Angel Oak
7. Te Amaré
8. I'm Afraid
9. Hafez, Shattered Heart

Disc 2
1. Rabo De Nube
2. Blood Count
3. Go Down Moses
4. Beyond Darkness
5. Nocturne
6. Wayfaring Stranger
7. Deep River
8. Lift Every Voice And Sing
9. Prayer, The Crossing

Charles Lloyd - tenor saxophone, flute, tarogato
Geri Allen - piano
John Abercrombie - guitar
Marc Johnson - double bass (disc 1 tracks 1,3-7, disc 2 tracks 1,3,5,9)
Larry Grenadier - double bass (disc 1 tracks 2,8, disc 2 tracks 2,4-8)
Billy Hart - drums

Recorded in January and February 2002 at Oceanway and Cello Studios, Los Angeles.

Charles Lloyd / The Sky Will Still Be There Tomorrow

輸入盤見開き紙ジャケット内側に、チャールス・ロイド自身による解説が掲載されている。その中に、下記のようにこのアルバムの制作に至る経緯が書かれていた。そこでの2020年の暴力行為とは、ミネソタ州ミネアポリスで、黒人男性が白人警官に膝で首を押さえつけられ死亡したことと、その後の全米規模のデモを指しているのだろう。

繰り返される人種差別。それに対して、何らかの形で表現したかったロイドは、新型コロナで3年間の音楽活動が制限された。The Sky Will Still Be There Tomorrow(明日も空はあるだろう)とは、「希望を捨てずに」を意味していると受け取りたい。

Under the imposed seclusion of COVID and the intense rise of violence over the Spring & Summer of 2020, I became increasingly agitated. Emotions gone haywire. My heart in knots, my mind at war with the situation. I came to the lunch table one day and told Dorothy that I wanted to go into the studio with Jason, Larry and Brian to make an offering of tenderness. She sent out smoke signals which created an endless back and forth. 2020 slid into 2021, 2022... 2023, before finally getting all of the calendars to overlap and lock.

新型コロナによる強制的な隔離と、2020年の春から夏にかけて暴力行為が激しくなったことを受け、私はますます動揺した。感情が狂ってしまった。心は混乱し、そんな状況と戦っていた。ある日、ランチの席で、感情を取り戻すためにジェイソン、ラリー、ブライアンと一緒にスタジオに行きたいと(プロデューサーの)ドロシーに伝えた。彼女は根気よく調整してくれた。2020年が21年、22年、23年へとスライドしたが、ようやくスケジュールが固まったのだ。

Disc 1
1. Defiant, Tender Warrior
2. The Lonely One
3. Monk's Dance
4. The Water Is Rising
5. Late Bloom
6. Booker's Garden
7. The Ghost Of Lady Day
8. The Sky Will Still Be There Tomorrow

Disc 2
9. Beyond Darkness
10. Sky Valley, Spirit Of The Forest
11. Balm In Gilead
12. Lift Every Voice And Sing
13. When The Sun Comes Up, Darkness Is Gone
14. Cape To Cairo
15. Defiant, Reprise; Homeward Dove

Charles Lloyd - tenor saxophone, alto saxophone, bass flute, alto flute
Jason Moran - piano
Larry Grenadier - bass
Brian Blade - drums, percussion

Recorded in March 2023.

Charles Lloyd / Voice in the Night

このアルバムの存在は、最近になって知った。購入は少し迷ったが、収録曲の中に名曲Forest Flowerを見つけ、迷いは吹き飛んだ。所有するアルバムForest FlowerとMontreux 82では、チャールス・ロイドはピアノトリオをバックに従え、この曲をライブで演奏した。本作はギタートリオがバックで、スタジオ録音。ジョン・アバクロンビーとの共演にも興味が湧いた。ロイドのディスコグラフィーを見ると、アルバムとしては、2人の共演は初めて。デイヴ・ホランドもしかり。ちなみに、ビリー・ヒギンズとは2回目である。

アルバム全体を通して、サックスとギターがほぼ同格にフロントを演じている。前述の「ギタートリオがバックで」という表現は当たらない。逆に言えば、ロイドのサックスが炸裂する場面はなく悠々と流れ、アバクロンビーのギターがそれに絡んでくる。その反対もある。そして、Forest Flowerは、先の2枚のアルバムと比べると、Deep Forest Flowerという感じだ。

なお、全8曲でたっぷりと68分23秒。また、5曲目のPocket Full Of Bluesには、副題として、”Island Blues, Little Sister’s Dance, Shade Tree, Mud Island”と、ジャケット内に記されている。Island Bluesは、アルバムLove-Inなどに収録された曲。それをもとにして、「ポケットに詰め込んだブルース」ということだろうか。

1. Voice In The Night
2. God Give Me Strength
3. Dorothea's Studio
4. Requiem
5. Pocket Full Of Blues
6. Homage
7. Forest Flower: Sunrise / Sunset
8. A Flower Is A Lovesome Thing

Charles Lloyd - tenor saxophone
John Abercrombie - guitar
Dave Holland - double bass
Billy Higgins - drums, percussion

Recorded in May, 1998 at Studio Avatar, New York City.