Cecil Taylor / The Great Paris Concert

所有していた国内盤LPはVol.1とVol.2に分かれていたが、輸入盤CDは1枚に集約。LPには、パリのどこで録音されたのか記載がなく、しかも、セシル・テイラーのディスコグラフィーでも不明だった。CDの英文ライナーノーツを読み込んだが同様。ただし、O.R.T.F.(仏:Office de Radiodiffusion Télévision Française、フランス放送協会)による録音ということが分かった。スタジオライブだったのかも知れない。だとすれば、タイトルのGreatが虚しい感じになってしまう。

LPのVol.1に収録されていた2曲(Student Studies Part 1 & 2)は、タイトル通りで学生の練習に近い。Vol.2にあった後半2曲は非常にアグレッシブ。これこそセシル・テイラーという感じで、Greatに恥じない演奏。

1. Student Studies (Part 1)
2. Student Studies (Part 2)
3. Amplitude
4. Niggle Feuigle

Jimmy Lyons - alto saxophone
Cecil Taylor - piano
Alan Silva - bass
Andrew Cyrille - drums

Recorded on November 30, 1966 in Paris.

Cecil Taylor / Conquistador!

Conquistadorとはスペイン語で「征服者」。特に15世紀から17世紀にかけてのスペインのアメリカ大陸征服者を指すらしい。だが、セシル・テイラーは、この曲を通して何を伝えたかったのかは不明である。さらに、2曲目のWith (Exit)も意味不明。そもそも、ジャズ(少なくともモダンジャズ)における曲のタイトルは、概ね符号でしかない。「あれ、やろうか?」では分からないので、「ウィズいくぞ!」的な感覚。

このアルバムが録音された1966年。ボブ・ディランはBlonde On Blonde、ビートルズはRevolver、コルトレーンはColtrane In Tokyo、チャールス・ロイドはForest Flowerを録音。ジャズとロックに大きなうねりがあった。そんな中、テイラーは独自の路線を切り開こうとしたのだが、ますます出口を失ってしまった。だからこそ、出口を見つけるために(Exit)と括弧書きにしたのではないだろうか。CD化で、その「出口」の別テイクが追加された。17分10秒である(マスターテイクは19分17秒)。Rudy Van Gelder(ルディ・ヴァン・ゲルダー)による録音の仕方には納得しなかったテイラー。自身の演奏にも納得できなかったようだ。

1. Conquistador
2. With (Exit)
3. With (Exit) [alternate take]

Jimmy Lyons - alto saxophone
Bill Dixon - trumpet
Cecil Taylor - piano
Henry Grimes - bass
Alan Silva - bass
Andrew Cyrille - drums

Recorded on October 6, 1966 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Cecil Taylor / Unit Structures

セシル・テイラーがブルーノート・レーベルに残したアルバムは、このUnit Structures(1966年5月録音)とConquistador!(同年10月録音)の2枚のみ。それぞれのライナーノーツを読むと、テイラーはレコーディング・エンジニアRudy Van Gelder(ルディ・ヴァン・ゲルダー)と全く意見が合わなかったようだ。それでも2枚のアルバムをリリースしたということは、テイラーは「音」よりも「音楽」を優先したということなのだろう。ちなみに、ミンガスはゲルダ―を全く評価せず、ブルーノートからは一枚も出していない。

さて、一般的にはセシル・テイラーはフリージャズに分類される。しかし、このアルバムでの音楽が自由かと言うと、かなり計算されている感じだ。アルバムには、テイラー自身による1,600語による長文ノートが記載されている。Google翻訳の結果を読んだが、Unit Structuresを概念めいて説明していることだけが分かった。詳細は意味不明。CD化でEnter, Eveningの別テイクが入った。フリージャズでの撮り直しとは、そもそもフリーでないことを物語っていて、一発勝負ではない。まるで、方程式を解こうとしているようだ。彼の音楽を『数学ジャズ』としたい。

1. Steps
2. Enter, Evening (Soft Line Structure)
3. Enter, Evening [alternate take]
4. Unit Structure / As Of A Now / Section
5. Tales (8 Whisps)

Jimmy Lyons - alto saxophone
Ken McIntyre - alto saxophone
Eddie Gale Stevens Jr - trumpet
Cecil Taylor - piano
Henry Grimes - bass
Alan Silva - bass
Andrew Cyrille - drums

Recorded on May 19, 1966 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.