清水俊彦 / ジャズ・ノート

1981年4月15日発行 晶文社 定価2400円。416ページ。以下の目次から分かるように、清水俊彦氏の『ジャズ・ノート』は限られた範囲のジャズであり、そのジャズ論は極めて概念的である。ゆえに、ジャズをロジックの積み重ねで論じる。読者への呼びかけは何一つない。では、彼は何のために、誰のためにジャズを論じたのか。この本に刻まれた一語一句は、あまりにも自己満足なのだ。

第I章
・ジョン・コルトレーンの破壊と再生についてのノート
・コルトレーンの三つの「マイ・フェイヴァリット・シングス」
・コルトレーン主義
・アルバート・アイラーの想像の博物館のブラック・ユーモア
・アイラーの戦いはまだ終わっていない
・影からきた魔法使い ― エリック・ドルフィー
第II章
・セシル・テイラー/裸になった火の意志表示によるジャズ
・1965年/オーネット・コールマン・トリオ
・ドン・チェリーについての断章
・完全な音楽気狂い ― ジュゼッピ・ローガン
・スティーヴ・レイシー/叫びの探究と新しい構造化
・ジャズにおけるパラレルなディスクール
・空間の予言者 ― サン・ラ
・アート・アンサンブル・オヴ・シカゴと〈偉大な黒人音楽〉
・カーラ・ブレイの「エスカレーター・オーヴァー・ザ・ヒル」
第III章
・60年代後半のマイルス・デイビス
・マイルス・アヘッド
・キース・ジャレットについてのノート
・ヨーロッパの即興音楽
・組織化された攻撃

植草甚一 / ジャズの前衛と黒人たち

1967年5月10日発行 晶文社 定価1200円。423ページ。非常に小さい活字で、隙間なくぎっしりと詰まっている。以下の40章から構成。各章が10ページ程度でまとまっているため、気になる章から読み進められる。『あとがき』で植草甚一氏はこう書いている。「ぼくはジャズは勉強なのだと確信しているし、ジャズを聴いているとき一番いいことは、なにかこうほかの勉強にとりかかりたいという強烈な推進力をあたえてくれることだ」。同感! しかし、帯にある『ジャズ・エリート必読!』のキャッチコピーは、ちょっと威圧的な表現で同意できないのだ。

1. 黒人を排斥するアメリカのジャズ界
2. 1962年1月のことだった
3. たまにはアンドレ・プレヴィンやデイブ・ブルーベックも聴いてみよう
4. カナダのジャズ・ファンが面白い見かたをしている
5. チャーリー・パーカーと仲間たちの話をしよう
6. マイルス・デイビスについてケネス・タイナンが論じた
7. ビル・エバンスとセシル・テイラーとの間にあるものを考えてみよう
8. ニューポートという煙草を買った日は、やっぱりジャズに縁があった
9. 雨降りなので、家にいてフランスのジャズ雑誌を読もう
10. ヨーロッパで四人の黒人ミュージシャンが生きかたについて考えた
11. ある黒人学生がブルースにふれて自分の気持をさらけだした
12. ミンガスのファイブ・スポット事件について
13. モンタレー・ジャズ祭でミンガスが真価を発揮した
14. ハーレムの暴動にふれながら最近の話題へ
15. 黒いリアリズムとユーモアが映画やジャズにも入りこんできた
16. アート・ブレイキーの「ゴールデン・ボーイ」とサミー・デイビスのこと
17. めくらのトランペット奏者を主人公にした「一滴の忍耐」というジャズ小説の話
18. ESPディスクからファッグスの「処女林」という変なものが発売された
19. レナード・フェザーがジャズ界にも「エスタブリッシュメント」があるというのだが
20. オーネット・コールマンのカムバックとジャズの「十月革命」をめぐって
21. 五人の批評家が前衛ジャズについて話合った
22. オーネット・コールマンにたいする理解と誤解について
23. 前衛ジャズにいい味方がついた
24. ESPディスクという前衛ジャズ専門のレコードが出はじめた
25. ESPディスクのアルバート・アイラーには興奮しちゃった
26. エリック・ドルフィの死と「ジャズの十月革命」
27. フランスでも前衛ジャズやアーチー・シェップが話題になりだした
28. 「ジャズ・マガジン」の前衛ジャズ特集をめぐって
29. 前衛ジャズを聴きに行ったフランスのファンの愉快な話
30. 「ヴァラエティ」誌の前衛ジャズ事件をめぐって
31. ESPグループの内部の声を聴いてみよう
32. ニュー・ブラックミュージックとマルカムXの自伝をめぐって
33. 「ダウン・ビート」増刊号と前衛ジャズの対談記事を研究してみよう
34. グリニッチ・ビレッジの新聞を拾い読みしたあとで
35. ブラック・ナショナリズムとジャズをめぐる討論が行われた
36. 「響きと怒り」と「ニュー・レフト・レビュー」に出た前衛ジャズ論について
37. サン・ラの「太陽中心世界」とESPディスクの反響のありかた
38. 前衛ジャズがフランス映画とスウェーデン映画に使ってあった
39. ロンドンにおける最近のオーネット・コールマンと再認識のされかた
40. コルトレーンの演奏をナマで聴いてみて

高田渡 / 高田渡読本

音楽出版社 2007年5月25日発行 定価1,905円。高田渡は、56歳で2005年4月16日に他界。その2年後に出版された書籍。タイトルに『読本』とあるように、この1冊で高田渡の全体像に迫れる。渡のアルバムを聴き、さらにこの本を読めば、渡にもう一歩近づけるのだ。

「高田渡がいた場所 ー 吉祥寺を歩く」から始まる。渡と関係の深かった吉祥寺の8ページによる写真。次に「高田渡の詩」を6編掲載。「自衛隊に入ろう」「鉱夫の祈り」「自転車にのって」「ボロ・ボロ」「漣」「いつか」。さらに「バーボン・ストリート・ブルースを読む」へつながり、ここまでがプロローグ的位置づけ。

「高田渡の存在」、「高田渡の歌」、「京都時代の高田渡」の3本が本題。エピローグ的に「追悼文一束」、「寄せ書き 高田渡のこの1曲」、CDガイド、DVDガイド、楽譜集で締めくくっている。楽譜は「夕暮れ」「系図」「ブラザー軒」「生活の柄」「告別式」「結婚」の6曲。