Billy Harper / Somalia

決して時代に迎合することなく、自分らしいジャズを切り開いてきたビリー・ハーパー。本アルバムは、ハーパーの代表作と言っていいだろう。明確なメッセージを持ったアルバムだと思う。所有する輸入盤CDの中では、ハーパー自身は何も語っていないが、ライナーノーツを担当したGene Kalbacherによると、こんなハーパーの発言を引用している。

"I simply have to put all my energy into doing the music. The best way I can speak to the world about the conditions in Somalia, or about the conditions in my own life, is through my music."(私はただ単に音楽へ全力を注いでいく。ソマリアの状況、自分自身の状況について世界に伝える最善の方法は、私の音楽を通してなのだ)。本作の録音は1993年10月。ソマリアをWikipediaで調べたら、以下のような記述があった。

「1991年勃発の内戦により国土は分断され、事実上の無政府状態が続いていた。のちにエチオピアの軍事支援を受けた暫定政権が発足し、現在では正式な政府が成立したが、依然として一部地域を他の国家であると主張する政府が統治している」。ちなみに、録音データにあるshekereという楽器。「シェケレは、西アフリカ(ヨルバ族)起源の伝統的な民俗音楽の楽器で、大きな中空の瓢箪の周りに植物の種子・豆・ビーズ・貝などを通した網を編んで張り巡らせた打楽器」とのこと。

1. Somalia
2. Thy Will Be Done
3. Quest
4. Light Within
5. Quest In 3

Billy Harper - tenor saxophone, cowbell, vocals
Eddie Henderson - trumpet
Francesca Tanksley - piano
Louie "Mbiki" Spears - bass
Newman Taylor Baker - drums (right channel)
Horacee Arnold - drums (left channel)
Madeleine Yayodele Nelson - shekere (tracks 1,4)

Recorded on October 18 & 21, 1993 at the Power Station, NYC.

Billy Harper / In Europe

タイトルはイン・ヨーロッパだが、イタリア・ミラノでのスタジオ録音。全3曲、ビリー・ハーパーのオリジナル。LPのライナーノーツ(1983年10月31日付け)では、悠雅彦氏がハーパーの次の言葉を引用している。

「音楽はきわめて重要なものだし、まさに厳粛とでもいうべきものだ。私にとってはいわば宗教であり、生活であり、愛であり、真実なのだ。音楽にはまた少しでも思想と誠実さがなければならない。〈中略〉音楽家が真実や霊的なもののリアリティーに近づけば近づくほど、その音楽はこれにふさわしい内容をもつようになるのだと私は思う」。まさに、この言葉通り、ハーパーの全身全霊をかけたアルバムである。CD化でボーナストラックを期待したのだが…。まぁ、3曲で十分に魂が揺さぶられる構成なのだ。

1. Priestess
2. Calvary
3. Illumination

Billy Harper - tenor saxophone
Everett Hollins - trumpet
Fred Hersch - piano
Louie "Mbiki" Spears - bass
Horace Arnold - drums

Recorded on January 24 & 25, 1979 at Barigozzi Studio in Milano, Italy.

Billy Harper / SORAN-BUSHI, B.H.

コルトレーンの後継者の一人と言われたビリー・ハーパー。1977年末に録音されたこのアルバムを今聴いても、少しも色褪せていない。ハーパーは1943年1月生まれ。現在77歳。今でも現役で演奏しているのだろうかと、数年振りに彼自身のHPを閲覧しようとしたが、HPはすでに消滅していた。さらに、ディスコグラフィーを見ると、最後の吹込みが2016年になっている。2016年制作ドキュメンタリー映画「私が殺したリー・モーガン」には出演していたのだが。

このアルバムの最大の聴き所は、タイトル曲「ソーラン節」。ハーパー自身がライナーノーツに次のように書いている。「私はこのアルバムの録音にあたり、私にとって特別な意味を持ち神聖である曲、ソーラン節を選びました。というのは、私はこの曲に自分の子供の頃“黒人教会”で吸収した、あの“ソウルフルな美しさ”を感じるからです。ここにあるのが私の心から生まれたソーラン節です。みなさまが私の意図するところを理解し、私の心になって、この曲を聞いて下さるよう心から願っております」。

1. Trying To Get Ready
2. Loverhood
3. Soran-Bushi, B.H.

Billy Harper - tenor saxophone

Tracks 1 & 3
Everett Hollins - trumpet
Harold Mabern - piano
Greg Maker - bass
Horacee Arnold - drums
Billy Hart - drums

Recorded on December 15 & 17, 1977 in NYC.