Archie Shepp / Soul Song

2014年2月付けの田中英俊氏のライナーノーツから。「シェップの持ち味の、豪快で身体の底から湧き上がってくるソウルを爆発させたようなブロウがここでも炸裂しているが、そのブロウを支えるマーヴィン・スミッティ・スミスのタイトでパワフルなドラム、バンドを彩るケニー・ワーナーのピアノ、ヘビーなボトムを支えるサンティ・デブライアノのベースが渾然一体となった白熱の演奏が丸ごとパックされている」。

正直、軽い表現だけど、その通りだと思う。そして、ジャケットの写真が、白熱の演奏をうまく表している。ところで、ジャケット裏面にはシェップのボーカルがクレジットされている。歌っているのは、15分を超える1曲目Mama Roseの6分30秒過ぎから14分まで。RevolutionとMama Roseを何度か繰り返しているのが分かるが、あとは意味不明。もちろん、歌詞はジャケットに載っていない。この約8分間は、サックスの音が入っていないので多重録音ではないだろう。即興的な雄叫びという感じ。ただし、坂田明のほうが役者は上である。

1. Mama Rose
2. Soul Song
3. Geechee
4. My Romance

Archie Shepp - tenor saxophone, soprano saxophone, vocals
Kenny Werner - piano
Santi DeBriano - bass
Marvin "Smitty" Smith - drums

Recorded on December 1, 1982 at Studio N, Cologne, West Germany.

Albert Ayler / New Grass

発売された当時、かなり批判があったアルバムらしい。リズム&ブルースとも言えるし、ブラックミュージックと言ってもいいだろう。ソウルシンガーズによるボーカルまで登場する。だが、アルバート・アイラーがやりたかった音楽が、ここにあったのかも知れない。それは、決してフリーキーなジャズではなく。1962年10月にThe First Recordingsを録音し、その6年後に自分自身が解放されるアルバムをようやく作ることができた。そんな解釈もできる。このアルバムにこそ、アイラーの本質があった。そんなふうに聴くと、実に楽しくなるアルバムなのだ。

所有する20枚ほどのアイラーのアルバムの中で、彼の肉声を聴く事が出来るのは、アルバムMy Name Is Albert Aylerと本作。本作には、アイラーのボーカルさえ入っている。彼からのメッセージがジャケットに書かれている。その全文と要約を以下に記載してみた。中上健次が書いたように『破壊せよ、とアイラーは言った』なんて、アイラーは一言も言っていないのだ。

The music I bring to you is of a different dimension in my life. I hope you will like this record. Through meditation, dreams and visions, I have been made a universal man through the power of the creator who made us all. The music I have played in the past I know I have played in another place at a different time. And I was sent once again to give the people of earth a spiritual message.

The message I bring to you is one of spiritual love, peace, and understanding. We must restore universal harmony. Everybody is only thinking of themself, a selfish ego. We must have love for each other and our fellow man. Woe, woe unto the false prophet that prophesies out of his own heart. This is a sin against the Lord. We must understand this. We must get ourselves together soon because there will nothing left. Praise to the Lord, repent, pray again, and repent. Please do that for your sake.

これまでとは異なる次元の音楽を贈ります。気に入ってくれれば良いのですが。思考、夢、未来像を通し、創造主の力によって普遍性を感じました。これまでに演奏してきた音楽とは別次元のものです。何度も精神的なメッセージを受け入れてきました。

ここでは、精神的な愛、平和、共感の気持ちを贈ります。普遍的な調和を取り戻すべきなのです。誰もが自己のことしか考えていません。互いに愛を分かち合わなければならないでしょう。心にもないことを発する偽の預言者には災いを。主に対する罪です。そこには何もなく、すぐに互いに身を寄せ合わせなければなりません。主に賛美し、悔い改め、もう一度祈りましょう。あなたのために。

1. Message From Albert - New Grass
2. New Generation
3. Sun Watcher
4. New Ghosts
5. Heart Love
6. Everybody's Movin'
7. Free At Last

Albert Ayler - recitation, tenor saxophone, vocals, whistling
Seldon Powell - flute, tenor saxophone
Buddy Lucas - bass, baritone saxophone
Burt Collins - trumpet
Joe Newman - trumpet
Garnett Brown - trombone
Call Cobbs - electric harpsichord, harp, organ, piano
Bill Folwell - bass, electric bass
Bernard "Pretty" Purdie - drums
Rose Marie McCoy - vocals
Soul Singers - vocals

Recorded on September 5 & 6, 1968.

Art Blakey / Buttercorn Lady

CD帯から。「当時20歳のキース・ジャレットを抜擢した、ジャズ・メッセンジャーズの白熱のライブ。早世したテナー奏者フランク・ミッチェルを含め、全員の若さあふれる演奏が魅力」。このミッチェルは、1976年版「世界ジャズ人名辞典」に掲載されていないものの、Wikipediaから断片的な情報を得ることができた。1945年生まれで、71年に27歳で殺害されたとあった。そして、「全員の若さあふれる」とあるが、御大アート・ブレイキーは、このライブの時点で46歳。それよりも、チャック・マンジョーネの作品でタイトル曲Buttercorn Ladyとは、どういう女性を意味しているのだろう。ジャケットと関連がありそうなのだが。

ブレイキーのディスコグラフィーを調べると、キースがメッセンジャーズに参画したのはこのアルバムだけ。そういう事実を知って聴くと、なんとなく理解できる。キースはブレイキーから声が掛かってライブ出演したものの、自分の居場所はないと感じたはずだ。翌67年5月には、自分名義の初アルバムLife Between The Exit Signsを録音している。つまり、ライブとしては成功した印象を受けるアルバムであるが、メンバーはご祝儀をもらいに来るのが目的だった。66年1月1日と9日のライブなのである。

1. Buttercorn Lady
2. Recuerdo
3. The Theme
4. Between Races
5. My Romance
6. Secret Love

Frank Mitchell - tenor saxophone
Chuck Mangione - trumpet
Keith Jarrett - piano
Reggie Johnson - bass
Art Blakey - drums

Recorded on January 1 & 9, 1966 at The Lighthouse, Hermosa Beach, CA.