Archie Shepp / Four For Trane

フロント4管でピアノレス。自由なアンサンブルを期待したくなるのだが、スコアを作り過ぎた感じだ。フロント4人が自分の出番を待っている。言ってみれば、不自由なフリージャズ。もちろんアーチー・シェップが主犯なのだが、従犯はコルトレーンとプロデューサーのボブ・シール。シェップはコルトレーンのオマージュ作品を作ろうとして、全5曲中のコルトレーン作の4曲を選んだ。それはよしとして、ジャケットにはコルトレーン。さらに、そのジャケットを開くと、打ち合わせ中のシールとシェップの横にコルトレーンが座っている。

コルトレーンのディスコグラフィーによると、アルバムCrescentは1964年4月27日と6月1日、A Love Supremeは12月9日と10日に録音。本アルバムが録音された8月は、A Love Supremeの構想を練っていた時期ではないだろうか。なので、シェップにアドバイスする余裕はなく、「好きにやればいいよ」で出来上がってしまったアルバム。

1. Syeeda's Song Flute
2. Mr. Syms
3. Cousin Mary
4. Naima
5. Rufus (Swung His Face At Last To The Wind, Then His Neck Snapped)

Archie Shepp - tenor saxophone
John Tchicai - alto saxophone
Alan Shorter - flugelhorn
Roswell Rudd - trombone
Reggie Workman - double bass
Charles Moffett - drums

Recorded on August 10, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Anthony Braxton / Town Hall 1972

『CDジャーナル』データベースより。「オーネット・コールマンと肩を並べるアバンギャルド系アルト奏者の1972年のライブ盤。チック・コリアとの〈サークル〉の解散後1年ほどの作品で、当時、ポスト・フリージャズとして大いに注目された」。ポスト・フリーとは具体的に何を指すのかよく分からないが、「濃いジャズ」であることは確か。音の密度が濃い訳ではなく、比重が濃い。「胃袋」で聴くジャズ。

1曲目と2曲目のフロントは、アンソニー・ブラクストンのアルトのみだが、3曲目のラストになると、ジョン・スタッブルフィールドが加わり、フロントの2人は様々な楽器を持ち替える。タウンホールの観客は、その頻繁な持ち替え作業に違和感を持ったのではないだろうか。演奏が終わり、会場からの拍手は「お疲れ様でしたね」といった感じ。

1. Composition I / Composition II
2. All The Things You Are
3. Composition III

Anthony Braxton - soprano saxophone, alto saxophone, soprano clarinet, clarinet, contrabass clarinet, flute, percussion
Dave Holland - bass
Phillip Wilson - drums (tracks 1 & 2)
John Stubblefield - tenor saxophone, flute, bass clarinet, gong, percussion (track 3)
Jeanne Lee - vocals (track 3)
Barry Altschul - percussion, marimba (track 3)

Recorded on May 22, 1972 at The Town Hall, NYC.

Andrew Hill / Point Of Departure

全5曲、アンドリュー・ヒルの作品。それら全てを完璧に表現するため、リチャード・デイビスのベース、トニー・ウィリアムスのドラム、そしてフロントを3管にしてヒルは厚みを出したかったのだろう。しかし、3管の中にエリック・ドルフィーを入れたことで、他の2管の存在が薄くなってしまった。これは、アルバム全体から受ける印象。ケニー・ドーハムやジョー・ヘンダーソンの印象が薄いのではなく、聴き終わって残るのはドルフィー独自の憂鬱な響き。それを承知でヒルはメンバーを配置したはず。

ドルフィーのディスコグラフィーを見ると、ヒルとのスタジオセッションはこのアルバムだけ。ドルフィーは、この録音の3日前にミンガスのグループでコーネル大学でのライブ演奏に参加。そして、録音3ヶ月後の6月29日にドルフィーは亡くなっている。それを考えて聴いてしまうと、ヒルにとってはPoint Of Departure(出発点)であっても、ドルフィーにとっては「帰着点」へ近づいていたことになる。

1. Refuge
2. New Monastery
3. Spectrum
4. Flight 19
5. Dedication

Joe Henderson - tenor saxophone (all tracks), flute (track 3)
Eric Dolphy - alto saxophone (tracks 1-3), bass clarinet (tracks 3-5), flute (track 3)
Kenny Dorham - trumpet
Andrew Hill - piano
Richard Davis - bass
Tony Williams - drums

Recorded on March 21, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.