Keith Jarrett / The Melody At Night, With You

このアルバムは、慢性疲労症候群で活動を休止していたキースが、2年間の療養生活の後にようやく復活し、1998年末に自宅スタジオで録音したスタンダードとトラディショナル曲を集めたソロピアノ集、と紹介されることが多い。つまり、病み上がりのキースを前提に聴いてくれということ。言い換えれば、リハビリ・アルバムなのである。

ジャズ的な緊張感は一切ない。タイトルの如く、メロディーがゆっくりと流れていく。一歩間違えれば単なるBGM。その中でも、アメリカ民謡Shenandoah(シェナンドー)を収録したことに注目したい。この曲は、キースと縁が深いチャーリー・ヘイデンとチャールス・ロイドが取り上げている。それぞれのアルバムは、2008年録音のRambling Boyと15年録音のI Long To See Youである。3人には共通するルーツがあるようだ。それらに遡って、ボブ・ディランがアルバムDown in the Groove(録音1983-87年)で歌っているのだ。

1. I Loves You, Porgy
2. I Got It Bad And That Ain't Good
3. Don't Ever Leave Me
4. Someone To Watch Over Me
5. My Wild Irish Rose
6. Blame It On My Youth / Meditation
7. Something To Remember You By
8. Be My Love
9. Shenandoah
10. I'm Through With Love

Keith Jarrett - piano

Recorded in December 1998 at Cavelight Studio, New Jersey.

Keith Jarrett / Tokyo '96

アルバムStandards(1983年1月録音)で旗揚げしたキース・ジャレット、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットによるトリオ。やがて「スタンダーズ・トリオ」と呼ばれるようになった。それから13年を経て東京でのライブアルバム。彼らは決してスタンダード曲に固執した訳ではないだろうが、世間がそういうレッテルを貼ってしまった。ジャケットのキースは、それを苦笑いしているかのようだ。

ということは、終わり方、閉め方を彼らに委ねたことになる。つまり、スタンダード曲から脱却した「スタンダーズ・トリオ」は許されなくなってしまったのだ。このライブでも、彼らの演奏以上にスタンダード曲に対して、会場から拍手が沸いてきている感じ。ジャズとは変化することが宿命の音楽。それを封じ込めてしまったのはメディアであり、それを歓迎してきたのが聴き手。このライブアルバムでは、日本の観客の甘さを感じる。「いい加減に、スタンダードから足洗え!」と、ブーイングが出ても可笑しくないのだ。

1. It Could Happen To You
2. Never Let Me Go
3. Billie's Bounce
4. Summer Night
5. I'll Remember April
6. Mona Lisa
7. Autumn Leaves
8. Last Night When We Were Young / Caribbean Sky
9. John's Abbey
10. My Funny Valentine / Song

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on March 30, 1996 at The Bunkamura Orchard Hall, Tokyo.

Keith Jarrett / At The Deer Head Inn

演奏者と観客が一体となった真のライブアルバム。それだけではなく、このアルバムを聴いていると、まるで自分が観客の一人であるかのような気分になってくる。キースのピアノは凄いんだけど、あの唸り声だけは勘弁してくれという人がいる。まぁ、その気持ちは分かるのだが、だったらキースを聴くなよと言いたい。あの唸り声を含めてキースの「芸」なのだ。さて、キースがライナーノーツを書いていて、以下のように締め括っている(訳:坂本信氏)。

「暖かくて湿気が多く、雨模様の霧のかかった秋の夜、ポコノの山間での演奏だった。店の中にはたくさんの人で埋まり、入りきれない人たちは外で網戸越しに聴いていた。友人のビル・グッドウィンがこの模様を、ぼくのためにレコーディングしておいてくれたけど、あとで聴いてみたとき、これはいつか発表しなければと思った。皆さんもこのテープの演奏から、ジャズの何たるかを聴き取ることができると思う」。キース自身が評価しているライブアルバムなのだ。

1. Solar
2. Basin Street Blues
3. Chandra
4. You Don't Know What Love Is
5. You And The Night And The Music
6. Bye Bye Blackbird
7. It's Easy To Remember

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Paul Motian - drums

Recorded on September 16, 1992 at The Deer Head Inn, Delaware Water Gap, PA.