Keith Jarrett / UP FOR IT

フランス・アンティーブ・ジャズ・フェスティバルでのライブ演奏。世間では、かなり評判の高いアルバムである。しかし、冷静に聴くと音が前に出ていない。それは録音状態ではなく、覇気をあまり感じないということ。それぞれの曲が、予定通りに終わっていく。曲が始まった瞬間に、終わらせ方を考えている。そんな気がする。ステージに立ったのだから、最高のパフォーマンスを演じなければならない。そのことが先行し、集中度に欠けている。

そんなふうに聴きながら、キース自身のライナーノーツ(翻訳)を読んだ。要約すると。「コンサート当日まで雨が降り続き、その日も雨。ゲイリーは癌治療の大手術を受けたばかり。ジャックは前年のステージで壁板にぶつかるというアクシデント。演奏前のディナーは雨の中。ゲイリーは演奏をやりたくないと言う。それでもステージに上がったら、彼のベースの近くで水漏れ。そして、短時間でのサウンド・チェック」。つまり、最悪の状態でのステージだった。そんな演奏のアルバムなので最高の出来になったはずなのだが、凍るような怖さは、ここにはない。ECMのジャケットも相変わらずの手抜き。

1. If I Were A Bell
2. Butch & Butch
3. My Funny Valentine
4. Scrapple From The Apple
5. Someday My Prince Will Come
6. Two Degrees East, Three Degrees West
7. Autumn Leaves / Up For It

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on July 16, 2002 at Festival De Jazz d' Antibes, Juan Les Pins, France.

Keith Jarrett / My Foolish Heart

2007年10月にスタンダーズ・トリオ25周年記念でリリースされたアルバム。しかし、録音は2001年7月。つまり、6年以上も倉庫にしまって置いた音源である。では、なぜにリアルタイムで世に出さなかったのか。謎である。これは自分の憶測。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロによる市場の拒否反応を恐れた。キース自身のライナーノーツに、そんなことは書いていないし、ネットで調べても事実は一切浮かんでこない。翌2002年7月にアルバムUP FOR ITを録音し、2003年にそれをリリース。本作は、リリースする機会を逸してしまい、25周年記念に狙いを定めたと思える。キースは冒頭でこう書いている。

「これは、然るべき時が現れるまでと、手元に離さず置いていたコンサート録音だ。最もメロディックに、スウィンギーに、ダイナミックに浮揚するトリオが捕らえられている。これほど、お客の首根っこを掴んで揺らしても(文字通りにそうしたかったくらいに)、オレたちのやっていることを聴けと、僕たちが言いたかった夜もない(訳:小山さち子氏)」。では、この「然るべき時」をキースはどう考えていたのか。答えてくれていない。いや、機を逸したのは、タイトルMy Foolish Heart(愚かな我が心)ということか。

Disc 1
1. Four
2. My Foolish Heart
3. Oleo
4. What's New
5. The Song Is You
6. Ain't Misbehavin'

Disc 2
1. Honeysuckle Rose
2. You Took Advantage Of Me
3. Straight, No Chaser
4. Five Brothers
5. Guess I'll Hang My Tears Out To Dry
6. Green Dolphin Street
7. Only The Lonely

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on July 22, 2001 at Montreux Jazz Festival, Stravinski Auditorium.

Keith Jarrett / Yesterdays

2001年4月の来日公演はAlways Let Me Goというタイトルで2002年10月にリリースされた。それから約6年後の2009年1月に、同じ公演の続編である本作がリリース。前者が2枚組でフリー・インプロビゼーション、後者はスタンダードである。

来日ツアーで2つのコンセプトを演奏し、別のアルバムにしたことは問題ない。だが、何故に長い期間をおいて発売するという戦略をECMは打ったのか。ちょっと理解できない。さらに、本作の最終曲Stella By Starlightは、公演初日のサウンド・チェックで録音されたもの。正確に言うと完全なライブアルバムではないのだ。フリーがAlways Let Me Go、スタンダードがYesterdaysというタイトルも、何か思わせぶりな感じだ。不満はいくつかあるものの、演奏内容は素晴らしい。

1. Strollin'
2. You Took Advantage Of Me
3. Yesterdays
4. Shaw'nuff
5. You've Changed
6. Scrapple From The Apple
7. A Sleepin' Bee
8. Smoke Gets In Your Eyes
9. Stella By Starlight

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - double bass
Jack DeJohnette - drums

Tracks 1 - 8
Recorded on April 30, 2001 at Metropolitan Festival Hall, Tokyo.

Track 9
Recorded on April 24, 2001 at Orchard Hall, Tokyo.