このアルバムは、麻薬所持の疑いでニューヨークのジャズクラブで演奏できないときに、パリで録音されたもの。LPでの油井正一氏のライナーノーツによると、この麻薬所持はある種の冤罪だったようだ。バド・パウエルの車に乗せてもらった時に検問に会い、車内からヘロインがでてきた。モンクはパウエルを助けるために黙秘したが、結局のところ二人とも有罪。モンクはニューヨークで6年間演奏が出来なくなり、収入源が絶たれた。
そして、初めてのピアノソロにパリで臨んだ訳である。必死に生き抜こうとするモンクがここにいる。3曲目のSmoke Gets In Your Eyes(煙が目にしみる)以外は、全てモンクのオリジナル曲。'Round Midnightでは音を探しているモンクの姿が浮かび上がってくる。所有していたLPと、新たに購入したCDではジャケットが異なり、恐らくCD化でオリジナルジャケットに戻したのだろう。CDのライナーノーツで原田和典氏が、ジャケットのセロニアスの綴り間違いを指摘していて、初めて気が付いた。モンクといえども、このアルバムが録音された1954年頃は、まだまだ無名だったことが分かる。
1. 'Round Midnight
2. Evidence
3. Smoke Gets In Your Eyes
4. Well, You Needn't
5. Reflections
6. Wee See
7. Eronel
8. Off Minor
9. Hackensack
Thelonious Monk - piano
Recorded on June 7, 1954 in Paris.