1983年9月、増上寺ホールでの富樫雅彦とスティーヴ・レイシーのデュオを聴きに行ったことがある。演奏する彼らの周りに椅子が並べられて、一つの音楽空間を共有するちょっと不思議な体験だった。コンサート会場やライブハウスとは違う形式の演奏会。非常に緊張感があり、集中し過ぎたせいか疲れたなぁというのが本音だった。
このアルバムでは、富樫とレイシーにケント・カーターのベースが加わることで、緊張感に開放感がプラスされている。つまり、曲の道筋が予感できることで安心感があり、肩に力が入らずゆったりと聴けるのである。しかし、3者のインプロビゼーションは、聴く者を凍らせるほどの緻密さが潜んでいる。
レコーディングに立ち会ったベーシストの翠川敬基の解説から抜粋。「今こうしてアルバムになったものを再び聴き返してみても、その熱い雰囲気が甦ってくる。それどころか、一つの音のカケラさえもおろそかにしない彼等の演奏ゆえに、一曲一曲のニュアンスや音の密度といったものが新たな空間を構築して凄まじい呪縛力で聴くものをとらえるのだ」。
1. It's Freedom Life
2. The Window
3. Poem In The Shadow
4. Steps
5. The Crust
Steve Lacy - soprano saxophone
Kent Carter - bass
Masahiko Togashi / 富樫雅彦 - percussions
Recorded on October 15 & 16, 1981 at King Records Studio No.2, Tokyo.