アルバート・アイラーのラストレコーディング。このフランスでのライブ演奏の4ヶ月後、1970年11月25日、アイラーは自分自身の命を絶った。34歳だったアイラー。
中上健次は『破壊せよ、とアイラーは言った』(文春文庫)を書いたが、そんなことをアイラーは決して言っていない。健次は、「破壊せよ、とアイラーは言った(ように受け止めた)」のである。それはそれで正しい。ジャズに限らないが、演じる側と受けて側が全く同じベクトルになるはずがない。ある意味、健次の鋭い感性と言えるだろう。
このアルバムでのアイラーは、素直に自分をさらけ出し、演奏する喜びを表現している。「破壊」ではなく「歓喜」の世界を演じたのだ。熱狂的なフランスの観客はそれを受け止めた。ラスト曲Music Is ...では、アイラーと女性ボーカルの掛け合い。ボーカルと言うより詩の朗読。英文ライナーノーツでは、こう紹介している。Mary Maria's sanctified vocal echoed by a series of bubbling haiku-like statements from Ayler with a tone(メアリー・マリアの祈りのようなボーカルは、アイラーのフレーズに合わせ俳句のように溢れ響き渡った)。そんなパフォーマンスを繰り広げたにもかかわらず、アイラーは何故に死を急いだのか。自分の中では、アイラーの死は永遠の謎なのである。
1. In Heart Only
2. Spirits
3. Holy Family
4. Spirits Rejoice
5. Truth Is Marching In
6. Universal Message
7. Spiritual Reunion
8. Music Is The Healing Force Of The Universe
Albert Ayler - soprano saxophone, tenor saxophone
Mary Maria (Parks) - vocals, soprano saxophone
Call Cobbs - piano
Steve Tintweiss - bass
Allen Blairman - drums
Recorded on July 25 & 27, 1970 at the Foundation Maeght, Saint-Paul de Vence, France.