Sarah Vaughan / After Hours [Roulette]

サラのボーカルは疲れた体に沁み渡る。特にこのアルバムは、バッグにギターとウッドベースだけ。なので、サラの単なる力強い歌声ではなく、「歌」を「物語」にする力を発揮している。曲が始まった瞬間のサラの歌声に、一種の恐怖を感じてしまう。ドスンと落ちる感覚。ある種の麻薬であって、ジャズを長年に渡って聴かないとたどり着けない。まぁ、結論は「ジャズは麻薬である」ということなのだ。

コルトレーンは、1960年10月21日にMy Favorite Thingsを初めて録音。それから9ヶ月後、この曲をジャズボーカリストが最初に録音したのは本作ではないだろうか。ところで、ジャケットはライブアルバムの感じになってしまい、タイトルAfter Hoursの雰囲気が出ていない。せめて、スタジオでの3人によるセッションの写真にして欲しかった。

1. My Favorite Things
2. Ev'ry Time We Say Goodbye
3. Wonder Why
4. Easy To Love
5. Sophisticated Lady
6. Great Day
7. Ill Wind
8. If Love Is Good To Me
9. In A Sentimental Mood
10. Vanity

Sarah Vaughan - vocals
Mundell Lowe - guitar
George Duvivier - bass

Recorded on July 18, 1961 at RKO-Pathe Studio, NYC.

Sarah Vaughan / At Mister Kelly's

所有する輸入盤CDには、Mister Kelly's(ミスター・ケリーズ)のオーナーであるOscar Marienthalによる紹介文が載っていて、その要約すると次のようになる。63年前の出来事。

「ケリーズの天井の周り隠された52台のスピーカーは、すべての観客にプライベートなパフォーマンスをもたらしてくれる。実は、私はサラのファンではなかった。ファンになる機会がなかったのだ。だが、洗練された音楽セットで彼女の計り知れない描画力を知っていたので、彼女と契約した。彼女は天使のような暖かさでやって来た。そして、40分間の催眠術をかけた(実際にはアルバムの収録時間35分35秒)。私はオーナーであることを忘れ、瞬く間にサラのファンになってしまった」。

1. September In The Rain
2. Willow Weep For Me
3. Just One Of Those Things
4. Be Anything But Darling Be Mine
5. Thou Swell
6. Stairway To The Stars
7. Honeysuckle Rose
8. Just A Gigolo
9. How High The Moon

Sarah Vaughan - vocals
Jimmy Jones - piano
Richard Davis - bass
Roy Haynes - drums

Recorded on August 6, 7 & 8, 1957 at Mister Kelly's, Chicago.

Sarah Vaughan / Sarah With Clifford Brown

本アルバムのキャッチコピー。「驚異的な声域と独特のフレージングで他の追随を許さないジャズ・ボーカルの女王サラ・ヴォーン初期の代表作。〈バードランドの子守唄〉の巧みなスキャットはこの曲の名唱の一つとされる。夭折の天才トランペッター、クリフォード・ブラウンとの器楽的な掛け合いも素晴らしい」。

短い文章で的確に本作を表現しているのだが、掛け合いが素晴らしいのはブラウンだけではない。もし、ブラウンが参加していなくても、サラの代表作となったアルバムである。そして、所有するジャズ・ボーカルのアルバムで「バードランドの子守唄」を歌っているのは、クリス・コナーのSings Lullabys Of Birdlandで、本作とほぼ同時期の録音。いやぁ、どちらも甲乙つけがたく見事なのである。

1. Lullaby Of Birdland
2. April In Paris
3. He's My Guy
4. Jim
5. You're Not The Kind
6. Embraceable You
7. I'm Glad There Is You
8. September Song
9. It's Crazy

Sarah Vaughan - vocals
Clifford Brown - trumpet
Paul Quinichette - tenor saxophone
Herbie Mann - flute
Jimmy Jones - piano
Joe Benjamin - bass
Roy Haynes - drums, snare drum

Recorded on December 16 & 18, 1954 in NYC.