渡辺貞夫 / Sadao Watanabe

ナベサダは、日本のジャズの骨格を作った男。だけど、日本発ジャズを世界に示すことはできなかった。一方の山下洋輔は、大和魂的に彼のパフォーマンスを世界に広めたと言っていいだろう。このアルバムに、その解があるような気がする。アフリカの旅で感じ取ったリズムとメロディー。それをアルバムにしたナベサダ。その後、そのモチーフを発展していったのだが、自分流のジャズにまで到達できなかった。そして、1970年代後半に吹き始めたフュージョン。その波に乗ってCalifornia Showerをリリース。

CD帯から。「1972年、渡辺貞夫は初めてアフリカを訪問する。帰国後に完成した自作曲は40曲あまり。その中から厳選したナンバーを収めたのが本作だ。全編に渡ってアフロ色濃厚なスピリチュアル・ジャズが展開されている。そのテンションの高さ、熱さは今なお圧倒的だ。若き日の板橋文夫を筆頭とするサイドメン陣も充実、50年代からの僚友・高柳昌行も強烈なギター・ソロを聴かせる」。それにしても、タイトルをSadao Watanabeとして、何を伝えようとしたのか。

1. Sasa
2. Mtoto
3. Mtelenko
4. Poromoko La Maji
5. Kijiji
6. Barabara
7. Mombasa
8. Upepo
9. Umeme

渡辺貞夫 - alto saxophone, sopranino, flute, percussion
福村博 - trombone, percussion
高柳昌行 - guitar
板橋文夫 - piano, electric piano, percussion
古野光昭 - bass
倉田在秀 - drums

Recorded on February 24, 1972 at Iino Hall, Tokyo.

渡辺貞夫 / Round Trip

渡辺貞夫37歳の録音。参加メンバーが、チック・コリア、ミロスラフ・ヴィトウス、ジャック・ディジョネットという布陣。失敗作。米国の第一線のプレイヤーとの他流試合であるが、ナベサダが描いていた曲想とは、遠くかけ離れたものになってしまったと思う。

限られた時間で録音を終えなければならない。ナベサダがリーダーシップを発揮できたとして、時間との勝負だったのではないだろうか。名曲「パストラル」が、全く統一感がない。ナベサダの失敗ではなく、企画した事務所の失敗。

1. Round Trip: Going and Coming
2. Nostalgia
3. Pastoral
4. Sao Paulo

Sadao Watanabe - soprano saxophone, flute
Chick Corea - piano, electric piano
Miroslav Vitous - bass
Jack DeJohnette - drums
Ulpio Minucci - piano (track 4)

Recorded on July 15, 1970 at Allegro Sound Studio, NYC.

渡辺貞夫 / Pastoral

1970年代を前にして、ナベサダが「日本のジャズ」の一つの方向性を示したアルバム。当時としては決して珍しくはないのだが、メンバーは全員日本人。ナベサダを中心にして、ジャパン・ジャズの水準の高さを示したアルバムではある。だがそこに、次の時代への示唆があったかというと、結果「ポップ」だったと言われても仕方がなかった。

50年以上経った今だから言えるのだろう。ナベサダが作り上げたスコアにメンバーは縛られてしまった感じで、刺激も緊張感もない。名曲「パストラル」を名盤「パストラル」にできなかったアルバム。

1. Pastoral
2. Bridge
3. Tokyo Suite: Sunrise / Sunset
4. Gary, Outro Samba
5. Someday In Suburbs
6. Fandango
7. Closing Theme From "Kin-Kira-Kin"
8. Ritmo Saboroso

渡辺貞夫 - alto saxophone, sopranino, flute
田中正大 - French horn
松原千代繁 - French horn
松本浩 - vibraphone
増尾好秋 - guitar
八城一夫 - electric piano
鈴木良雄 - acoustic bass, electric bass, piano
渡辺文男 - drums, percussion

Tracks 1, 2, 5, 6 & 8
Recorded on July 8, 1969 at Toshi Center Hall, Akasaka, Tokyo.

Tracks 3, 4 & 7
Recorded on June 24, 1969 at Toshi Center Hall, Akasaka, Tokyo.