Zoot Sims / Down Home

ジャズ評論家アイラ・ギトラーは、ライナーノーツの冒頭でこう書いている(訳:川嶋文丸氏)。『別にわたしがこのアルバムのタイトルをつけたわけではないが、たとえわたしがつけたとしても、これ以上いいタイトルは思いつかなかっただろう。ズート自身、またはズートの音楽の「土着への回帰」という要素を言い表わすにはいろいろな言葉があるが、「ダウン・ホーム」(素朴で気取りがない)という言葉は、たしかに言い得て妙だ』。

まったくその通りで、さらに言えばバックのピアノトリオも、まさしく「ダウン・ホーム」なのである。つまり、ズートの気分がメンバー全員に伝わって、スイングジャズの真骨頂を表現したアルバム。少しだけ欲を言えば、そんなセッションの雰囲気をジャケットで表現して欲しかった。それから、別テイクの6曲は、ボーナス的な要素はほとんどなく、素朴にボツとなった演奏である。

1. Jive At Five
2. Doggin' Around
3. Avalon
4. I Cried For You
5. Bill Bailey
6. Goodnight Sweetheart
7. There'll Be Some Changes Made
8. I've Heard That Blues Before
9. There'll Be Some Changes Made [alternate take]
10. Jive At Five [alternate take]
11. Doggin' Around [alternate take]
12. Avalon [alternate take]
13. Goodnight Sweetheart [alternate take]
14. Bill Bailey [alternate take]

Zoot Sims - tenor saxophone
Dave McKenna - piano
George Tucker - bass
Dannie Richmond - drums

Recorded on June 7, 1960 in NYC.

Zoot Sims / Either Way

かつては幻の名盤と言われたアルバム。決して高価ではないLPを数十年前に購入し、個人的な隠れ名盤として愛聴してきた。最近、安価な中古CDを見つけて新たなライブラリーに。とにかく、ご機嫌なアルバムで、ジャズが持っている純粋な暖かみを表現。ボーカルがすんなり溶け込んでいるし、4曲目の〈枯葉〉が悔しいほどに「ジャズ」である。

〈枯葉〉というと、マイルスの、というかキャンボール・アダレイのアルバムSomethin' Elseをすぐに思い浮かべる。でも、「Somethin' Else - 何か他のもの」と問われたら「Either Way - どちらにしても」ズートとアルの〈枯葉〉と答えたい。

1. P-Town
2. I Like It Like That
3. Sweet Lorraine
4. Autumn leaves
5. The Thing
6. I'm Tellin' Ya
7. Nagasaki
8. Morning Fun

Zoot Sims - tenor saxophone
Al Cohn - tenor saxophone
Mose Allison - piano
Bill Crow - bass
Gus Johnson - drums
Cecil "Kid Haffey" Collier - vocals

Recorded in February 1961 in Philadelphia, PA.

Zoot Sims / Zoot

ズート・シムズ。この名前の響きからして実に渋い。タイトルも渋さを出すために「ズート」としてしまった。全編、ズートのテナーサックスが鳴り響くが、一曲だけアルトサックスに持ち替えている。それが、「ボヘミア・アフター・ダーク」。直球を7つ投げて、変化球を1つ。この変化球が、見事に決まっている。あっさりと3分半で終わっていることも、計算済みだったのだろう。

この曲は、ベーシストOscar Pettiford(オスカー・ペティフォード)の作品。1955年8月にアルバムAnother Oneに収録している。そして、ドラマーKenny Clarke(ケニー・クラーク)も同年6月にアルバムBohemia After Darkに収録。どちらもフロント陣を5管ないし4管と厚くして録音。二つのアルバムは55年内にリリース。シムズは二人と共演の経験があるから、アルバムは聴いていたのだろう。一本のアルトで軽い感じを出そうとしたに違いない。

1. 9:20 Special
2. The Man I Love
3. 55th And State
4. Blue Room
5. Gus's Blues
6. That Old Feeling
7. Bohemia After Dark
8. Woody'n You

Zoot Sims - tenor saxophone, alto saxophone
John Williams - piano
Knobby Totah - bass
Gus Johnson - drums

Recorded on October 12, 1956 in Chicago, IL.