Thelonious Monk / Live At Jazz Expo'67

80年代前半に、2枚組LPとして発売されたかなり怪しいレコード。そんなことを気にせず購入した自分。モンクの音源をひたすら追い求めていた時期である。ジャケット裏に記載されている録音データは、モンクの正式なディスコグラフィーから一切見つけることができない。仕方なく、収録曲から逆引きする形で調べたところ、モンクが1966年3月にフランスに渡った時の以下のライブ演奏であることが判明。

March 18, 1966 at Palais De La Mutualite, Paris, France. / March 20, 1966 at Maison De L'ORTF, Paris, France.

原盤はBYGレコードで、日本のキングレコードが買い取って発売したアルバム。当時は、音源の確かさなどはどうでもよかったのだろう。「モンクなら、今売れるから買い取れ」的な発想だったと思う。LPのライナーノーツを担当した藤本雄三氏も、録音データには懐疑的であると記している。まぁ、そうであっても、モンクがパリの地で伸び伸びと演奏した事実がここにある。ということで、タイトルJazz Expo'67は全く関係なく、ジャケットのイラストだけが、その雰囲気を伝えている。ちなみに、ジャケット裏にはイラストレーターYasuo Okumaの記載があり、その名前から検索すると、このレコードに突き当たるというメビウスの輪なのである。

1. I Love You
2. Lulu's Back In Town
3. Just A Gigolo
4. I'm Gettin' Sentimental Over You
5. Sweet And Lovely
6. Off Minor
7. Crepuscule With Nellie
8. Epistrophy

Charlie Rouse - tenor saxophone (except track 1)
Thelonious Monk - piano
Larry Gales - bass (except track 1)
Ben Riley - drums (except track 1)

Recorded on November 14, 1967.

Thelonious Monk / Straight, No Chaser

CD化によってボーナストラックが3曲追加され、全9曲をCDに目一杯詰め込んでギリギリの76分6秒となった。しかも定価1,000円なので、モンクをたっぷり聴くには最高のコストパフォーマンス。だが、よく考えてみると、LPに6曲が収まったのも不思議。Wikipediaで調べてみたら、例えばタイトル曲のStraight, No Chaserは、LPで10分31秒、CDで11分28秒。つまり、音源を切り取って6曲をLPに収めたのだ。プロデューサーはテオ・マセロ。テープにハサミを入れる職人でもある。

本作は、モンクのお気に入りメンバーによる1966年11月と67年1月の録音。注目すべきは、4曲目のJapanese Folk Songで、「荒城の月」のこと。このメンバーで66年5月に日本公演をしているので、その最中に仕入れた曲なのだろう。LPでは11分3秒だったのが、CDでは16分42秒となった。「荒城の月」を15分以上演じたのは、日本人を含めてモンクのグループだけではないだろうか。タイトルはStraight, No Chaserでよいとしても、せめてサブタイトルにKojo no Tsukiと入れて欲しかった。まぁそれよりも、マセロはハサミを入れるのに集中していたのだろう。

1. Locomotive
2. I Didn't Know About You
3. Straight, No Chaser
4. Japanese Folk Song (Kojo no Tsuki)
5. Between The Devil And The Deep Blue Sea
6. We See
7. This Is My Story, This Is My Song
8. I Didn't Know About You [alternate take]
9. Green Chimneys

Charlie Rouse - tenor saxophone (except tracks 5,7)
Thelonious Monk - piano
Larry Gales - bass (except tracks 5,7)
Ben Riley - drums (except tracks 5,7)

Recorded on November 14 & 15, 1966 (tracks 1,2,7-9), January 10, 1967 (tracks 3-6).

Thelonious Monk / Solo Monk

ジャズという音楽は、定義がなかなか難しい。清水俊彦氏は「ジャズをユニークなものにしているのは、短いフレーズ/時間に、エネルギーを圧縮することだ」(ジャズ・ノート 第Ⅱ章 完全な音楽気狂い)と書いている。フリージャズの異端児ジュゼッピ・ローガンを語る上で、清水氏はこのような観点を打ち出した。しかし、この観点だけを取り出すと、「圧縮率」が最も高いのはセロニアス・モンクではないだろうか。

モンクのソロアルバムは4枚。録音順に、Solo On Vogue(1954年6月)、Thelonious Himself(57年4月)、Thelonious Alone In San Francisco(59年10月)。そして、本アルバム(64年10月から65年3月)。この4枚の中での圧縮率の高さは、Thelonious Himselfが群を抜いている。逆に、本アルバムが最も緩い。言い方を変えればリラックスしている。5年振りの単独飛行(ソロアルバム)に、ちょっと緊張気味なジャケットの表情。

1. Dinah
2. I Surrender, Dear
3. Sweet And Lovely
4. North Of The Sunset
5. Ruby, My Dear
6. I'm Confessin' (That I Love You)
7. I Hadn't Anyone Till You
8. Everything Happens To Me
9. Monk's Point
10. I Should Care
11. Ask Me Now
12. These Foolish Things (Remind Of You)
13. Introspection

Thelonious Monk - piano

Tracks 2, 3, 4, 8 & 10
Recorded on October 31, 1964 at Los Angeles, C.A.
Tracks 1, 6, 7, 9 & 12
Recorded on November 2, 1964 at Los Angeles, C.A.
Track 11
Recorded on February 23, 1965 at NYC.
Track 5
Recorded on March 2, 1965 at Jazz Club "Village Gate", NYC.