Thelonious Monk / Genius Of Modern Music Vol.1

このアルバムが録音された1947年末、恐ろしいことにモンクス・ミュージックがすでに出来上がっている。3つのセッションで構成された本作であるが、いずれもドラムはアート・ブレイキーなのが興味深い。モンクがブレイキーを指名したのだろうか。この頃、二人の波長は合っていたという印である。所有していたLPのライナーノーツは青木和富氏が担当。以下のように見事な分析である。

「モンクは、しばしばテーマから抜けた音(常識的な意味で)を極めて“暗示的”なやり方で補うようにしてバッキングを行なったりするが、それはリズム、メロディー、ハーモニーが一体となったモンクス・ミュージックの中では正に適切な処理であり、全く間違っていないのだ。実際一度聴けば、誰もがその処置が全く自然であると納得させられるのであり、あえていえば、そうした機知に富んだ意外性こそモンクス・ミュージックの核といえるだろう。意表をついたリズムの動き、テーマに対する整然とした“旋律的”な対置によって、全く予測できないモンクス・ワールドのスリルが生まれるのだ。それは。モンク現象と呼ぶにふさわしいだろう。モンクス・ミュージックはモンクの存在自体が発散する何かなのだといえる。ある時、モンクが全くプレイに参加しない場合でも、モンクの巨大なスリルを感じさせることもあるのだ」。

1. Humph
2. Evonce [alternate take]
3. Evonce
4. Suburban Eyes
5. Suburban Eyes [alternate take]
6. Thelonious
7. Nice Work If You Can Get It [alternate take]
8. Nice Work If You Can Get It
9. Ruby, My Dear [alternate take]
10. Ruby, My Dear
11. Well, You Needn't
12. Well, You Needn't [alternate take]
13. April In Paris [alternate take]
14. April In Paris
15. Off Minor
16. Introspection
17. In Walked Bud
18. Monk's Mood
19. Who Knows
20. 'Round Midnight
21. Who Knows [alternate take]

Tracks 1 - 6
Billy Smith - tenor saxophone
Danny Quebec West - alto saxophone
Idrees Sulieman - trumpet
Thelonious Monk - piano
Gene Ramey - bass
Art Blakey - drums
Recorded on October 15, 1947 at WOR Studios, NYC.

Tracks 7 - 16
Thelonious Monk - piano
Gene Ramey - bass
Art Blakey - drums
Recorded on October 24, 1947 at WOR Studios, NYC.

Tracks 17 - 21
Sahib Shihab - alto saxophone
George Taitt - trumpet
Thelonious Monk - piano
Bob Paige - bass
Art Blakey - drums
Recorded on November 21, 1947 at WOR Studios, NYC.

富樫雅彦 / So What - Live At Pit Inn Shinjuku

富樫雅彦、峰厚介、佐藤允彦、井野信義の4人がJ.J.Spiritsと命名したグループを旗揚げしたのは、1991年6月。アルバムPlays Be Bop Vol.1 & Vol.2を録音し、その後、ライブ活動を継続。その一つの集大成として、1994年12月の新宿ピットインでライブ録音。91年のスタジオ録音と比較すると、非常にドライブ感がある。互いの手癖がよく分かっていて、どんな方向にも舵を切れる。その安心感と期待感が、文句なしに伝わってくる。

四半世紀経った今でも、全く色褪せないアルバム。いや、聴くごとに新たな発見があるアルバム。そして、このライブに足を運ばなかった自分が今でも悔やまれるアルバムである。

1. Monk's Hat Blues - Milestone
2. All The Things You Are
3. Autumn In New York
4. It's You Or No On
5. So What - Monk's Hat Blues

峰厚介 / Kohsuke Mine - tenor saxophone
佐藤允彦 / Masahiko Satoh - piano
井野信義 / Nobuyoshi Ino - bass
富樫雅彦 / Masahiko Togashi - percussion

Recorded on December 22, 1994 at Pit Inn, Shinjuku, Tokyo.

富樫雅彦 / Plays Be Bop Vol.2

今日で富樫が他界し13年。そのとき、ブログ『日々JAZZ』はまだスタートしていなかったので、富樫の訃報についての文章は残していない。ただ、4ビートを再チャレンジし、複数のアルバムを遺してくれたことに感謝した。

ライナーノーツは瀬川昌久氏が担当し、こう書いている。「富樫独自のドラムセットには、ベース・ドラムとハイハット・シンバルを欠いているが、このカルテットの演奏における彼のシャープなリズムをきいていると、そもそもベース・ドラムのあのおもたるい響きなど、返って無い方がスイングするのではないか、とさえ思われてくる」。ハイハットがあればもっとスングするのに、と暗に言っているのだ。しかし、それは富樫に対して無い物ねだり。

1. Monk's Hat Blues - I'll Remember April
2. It Might As Well Be Spring
3. On A Slow Boat To China
4. If I Should Lose You
5. Everything Happens To Me
6. Joy Spring
7. Bemsha Swing

峰厚介 - tenor saxophone
佐藤允彦 - piano
井野信義 - bass
富樫雅彦 - percussion

Recorded on June 5, 6 & 7, 1991 at Sedic Studio, Tokyo.