Sarah Vaughan / I Love Brazil!

20人以上のミュージシャンを集め、5日間をかけリオ・デ・ジャネイロで録音したアルバム。レーベルはPablo Records(パブロ・レコード)。もちろん、毎日20人が集まった訳ではないだろうが、かなりの予算をつぎ込んだアルバムであることは確か。では何かの賞を取ったのかと言うと、そうでもないようだ。サラ・ヴォーンの実力を十分に発揮したアルバムではある。だけど十二分の評価は受けなかった。

Milton Nascimento(ミルトン・ナシメント)が3曲で参加。「ブラジルの声」の異名を持つMPBの代表的アーティスト。MPBとはMúsica Popular Brasileiraの略で、ブラジルの音楽形式の1つ。英語的に言うと「ブラジリアン・ポピュラー・ミュージック」のこと。パブロが本作に力を入れたことが、ここでも分かる。ところで、ネットでLP時代のジャケットに出会った。LPの評価が高くなかったので、CDではブラジル色を強く出そうとしたようだ。

1. If You Went Away
2. Triste
3. Roses And Roses
4. Empty Faces
5. I Live To Love You
6. The Face I Love
7. Courage
8. The Day It Rained
9. A Little Tear
10. Like A Lover
11. Bridges
12. Someone To Light Up My Life

Sarah Vaughan - vocals
Dorival Caymmi - vocals
Milton Nascimento, Dori Caymmi - acoustic guitar, vocals
Nelson Angelo, Hélio Delmiro - electric guitar
Danilo Caymmi, Paulo Jobim - flute
Mauricio Einhorn - harmonica, harmonica arrangements
Antônio Carlos Jobim - piano
José Roberto Bertrami - arranger, electric piano, organ
Edson Frederico - arranger, orchestration, piano
Sergio Barroso, Claudio Bertrami - acoustic bass
Novelli - electric bass
Wilson das Neves, Robertinho Silva - drums
Ariovaldo, Chico Batera, Luna, Marçal - percussion

Recorded on October 31, November 3-5 & 7, 1977 at RCA Studios, Rio de Janeiro.

坂田明 / MOOKO

ドラマーのシャノン・ジャックソンのリーダーアルバムは、Street Priestの1枚しか所有しておらず、他のアルバムも聴いてみたいと探していたら、なんと!坂田明が共演しているアルバムを見つけた。迷わず購入。坂田自身が、本作について以下のように解説している(2009年2月1日付け)。坂田がジャックソンに手紙を出したことで実現したアルバム。全文を掲載する。

1. ニッチモ・サッチモ
2. ひやし節
3. Wann Kann Ich Sie Wiedersehen?
4. 羊飼いの晩餐
5. 騎馬民族の踊り
6. 蒙古

坂田明 - alto saxophone, bass clarinet, piano, vocalism
Bill Laswell - prepared fretless bass 4. 6 & 8 string bass, sitar Bass, violin, ectar
Ronald Shannon Jackson -drums, percussion, scheollmie

Recorded on December 2 & 3, 1987 at Sorcerer Sound, New York.

* * * * *
〈Mooko〉とは言うまでもなく蒙古でありモンゴルである。録音したのは87年で、もう23年前に遡る。シャノン・ジャックソンに「一緒にレコーディングしてもらえないだろうか」と手紙を書いたら、「勿論だが、レコーディングするならビル・ラズウェルにプロデュースしてもらったほうがうまくいく」といわれ、ビルに頼むことになった。

ビル・ラズウェルとはその前年彼のLast exitに入って共演していた。シャノンがドラムスでギターがソニー・シャーロック、サックスはペーター・ブロッツマンであった。轟音が鳴っているにもかかわらず、不思議とうるさくない音に驚いた記憶がある。

私は腹巻になけなしの現金を入れてN.Y.へ飛んだのだが、ビルは大変良くしてくれた。時差ぼけに参った。最後の日には寝過ごした。あわててスタジオへ行くと「サカタ! 出来たぞ」とビルがいった。エンジニアの口バート・ムッソーと二人でもくもくとミックスをしてくれたのである。私のほうは一時が万事、失敗の山だった。

そのときビルと話をして盛り上がったのは〈モンゴリア〉だった。オルティンドーやホーミーといった雄大な草原を想起させる音楽について語った。話は「バンドでモンゴルへ行こうよ!」と大変な話になった。レコード・タイトルは文句なしに『MOOKO』とした。

その頃、私は一方では「ミジンコは凄い」といいながら、もう一方では「モンゴルは凄い」と吹聴して歩いていた。そしたら「新世界紀行」という番組のプロデューサーからお声がかかり、90年11月にホーミーの紹介を主目的でモンゴル高原へ行くことになった。

晩秋の冷え込む大草原でモンゴルの人と共にカセットテープの『MOOKO』を聴いた。音楽は不思議と風景に合っていた。彼らも「是非モンゴルヘバンドをつれてきてくれ」といってくれた。4年後の94年、国際交流基金の主催事業で私とビル・ラズウェルの率いる世界混成13人編成の「ミジンコ空艇楽団」は終にモンゴルで演奏した。N.Y.での約束から7年、快挙といってもおかしくない時代だった。今の朝青龍、白鵬らモンゴル人が日本の大相撲を席捲するとは夢にも思えない、昔のことである。

Sam Rivers / Contours

緊張感はあるのだが、曲そのものにポテンシャルを感じない。全編、サム・リバース作。掴みどころのない曲ばかり。例えば、アフロ・ブルー。最初の1小節で、聴き手は身構える。その1小節が軸となって、どういう展開になるのか期待するからだ。残念なことに、このアルバムに収められた曲には、軸となるフレーズがなく、拡散する一方のような印象を与えてしまう。タイトルContours通り、輪郭だけを設定して録音に臨んだのだろうが、主役のリバースがセッションの方向性を導き出していない。メンバーは好き勝手に演奏しているだけ。リバースの統率力のなさを露呈してしまったアルバムなのだ。

ライナーノーツで、マイケル・カスクーナが次のように書いている(行方均氏:訳)。「本アルバムで、サムはハードバップの原点に立ち戻り、新しく挑戦的な楽曲をもってその境界を押し広げている。本セッションのためにサムが集めたのは60年代のベストといえるミュージシャンたちで、彼らの試みがハードバップという言語を拡張していくのだ」。カスクーナが言うように「挑戦的な曲」と捉えることはできるが、「未完成な曲」とも言えるのである。

1. Point Of Many Returns
2. Dance Of The Tripedal
3. Euterpe
4. Mellifluous Cacophony
5. Mellifluous Cacophony [alternate take]

Sam Rivers - tenor saxophone, soprano saxophone, flute
Freddie Hubbard - trumpet
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Joe Chambers - drums

Recorded on May 21, 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.