Miles Davis / Oh! MILES ―マイルスから愛をこめて―

Swing Journal Mook "Oh! MILES" ―マイルスから愛をこめて― 1985年8月1日発行 1,600円。マイルスが音楽生活40周年を迎え出版された。全236ページにマイルスの情報がぎっしり詰まっている。80年代は活字の力がまだ強かった。様々な情報源は新聞、月刊誌、単行本など。そして、ページをめぐりながら読み解く力も必要だった。

晩年、マイルスはスケッチに凝っていて、アルバムStar Peopleは自筆のスケッチ。スケッチを楽しむ様子が本書に載っている。そして、発行時点でのマイルスの完璧なディスコグラフィーを掲載。85年発行のため、本書ではアルバムYou're Under Arrestで完結している。恐らく、スイングジャーナル社は本書をマイルスに寄贈したと思うのだが、マイルス自叙伝②には、そのことは書かれていなかった。まぁ、日本語を読めるはずはないので、コメントはできなかったのだろう。そして、サブタイトル『マイルスから愛をこめて』は、ちょっと飛躍し過ぎていて、本書に対するマイルスからのメッセージなどは一切ない。

Miles Davis / マイルス・デイビス物語

スイングジャーナル社 Ian Carr(イアン・カー)著 小山さち子訳 1983年10月20日発行 1,900円。8年振りに読み直した。375ページを一気に。マイルスの音楽を深く理解するには最適な本である。著者イアン・カーは、イギリスのトランペット奏者でありジャズ評論家。75年に本書の執筆を着手し、81年に脱稿したとのこと。最後にアルバムWe Want Milesを取り上げて終わっている。

損をしているのは日本語タイトル。原題はA Critical Biography MILES DAVISなので、直訳すれば『マイルス・デイビス評伝』。『物語』では私生活を中心に書いているように思えてしまう。『マイルスの軌跡』といった内容なのだ。91年9月にマイルスが他界するまでの残り10年間を続編として期待していたが、イアン・カーの略歴を調べたところ、2009年2月25日に亡くなっていた。『マイルス最期の10年』なんて本を誰かが書いてくれないだろうか。

Miles Davis / Doo-Bop

マイルスの遺作。1回目の録音を1991年2月に終え、8月から2回目の録音を予定していたようだが、体調が悪化。9月28日に他界。だが、決して無念ではなかったのだろう。

それは、ジャケットの写真を見れば明らかである。「まずは、いい感じでペットを吹けたぜ!」とカメラに向かっている。ただ、よく見るとペットを口にしただけ。眼光は決して鋭くない。このとき65歳。自分の肉体と戦いながら、音楽の道を彷徨っていたはずだ。過去へ遡れない性格のマイルス。彼なりの新しい道を切り開こうとしていた。その過程はリスナーから理解されたものの、絶賛はされなかった。

結局、マイルスはどんどんと前へ進み、リスナーを置き去りにしてしまったのではないかと思っている。「リスナー?そんな奴らのことを考えて音楽をやってきたつもりはないぜ!」と逝ってしまった。そして、今一度ジャケット写真を見れば分かる。「これ以上、何をやればいいんだ?」と目が語っている。

だが、実際のマイルスは違った。小川隆夫氏による著書『マイルス・デイビスの真実』に、その答えがあった。マイルスへのインタビューを重ねて来た小川氏が、8月中旬頃にインタビューを申し出たが、「マイルスの体調が思わしくないので、手紙で質問を送って欲しい」とマネージメントからの連絡。質問状を送ったのは8月末、9月10日すぎには次の返事が届いたそうだ。

「今後はブロードウェイのステージに出てみたい。それから、世界中でコンサートと自分の絵によるエキシビションを同時開催したい。これから先、どのような音楽をやっていくかは、いままでもそうだったが、まったく考えていない。いつもそのときに自分が一番ヒップと感じるものをやるだけだ。いまも頭の中にはヒップな音楽が鳴っているが、それが具体的な音になるかはわからない」。マイルスは最期まで前進を続けるマイルスだったのだ。

1. Mystery
2. The Doo Bop Song
3. Chocolate Chip
4. High Speed Chase
5. Blow
6. Sonya
7. Fantasy
8. Duke Booty
9. Mystery (Reprise)

Miles Davis - trumpet
Kenny Garrett - alto saxophone
Deron Johnson - keyboards
Easy Mo Bee - programs, samples, rap
J.R., A.B. Money - rap

Recorded in January - February 1991 in NYC.