Kenny Drew / Afternoon In Europe

ジャズ・プロデューサー木全信(きまた・まこと)の著書『ジャズは気楽な旋律(平凡社新書)』にこう書いてある。1980年の春、木全氏がケニー・ドリューへ「ぼくにあなたのアルバムをプロデュースさせてくれませんか?」と切り出したそうだ。ドリューからは自分のレーベルでのリリースという条件で了解が得られ、「ぼくにはぼくの目指すレーベル・イメージがあります。それば〈ジャズは気楽な旋律〉というコンセプトです。流れていてじゃまにも、耳ざわりにもならず、聴く意思を持って聴けば十分に聴きごたえのあるジャズ。そんな音楽を世に出していくレーベルをつくりたいと考えています。この気持ちだけはわかってほしいのですが…」と伝えた。

それに対するドリューの返事。「自分も同じ考えだ。ジャズは楽しくもあり、悲しくもあり、ダイナミックでもあり、ロマンチックでもある。ある時は美しく、ある時は怒りをも感じさせる。そんないろいろな表情を醸し出せるのがジャズの面白いところだ。そうした表情をいかにイージーに表現できるか、いかに聴く人の心を響かせることができるか…自分はいつもそんな考えでピアノに向かっている」。この会話から生まれたのが本作である。しかし、アルバムにはProduced by Ivan Sundberg & Kenny Drewとしか書かれていない。どこまで木全氏が関与したのかは不明。ところで、LPではドリューの横顔を写したジャケットだったのだが、CDではイラストに変わってしまった。

1. Golden Strinker
2. Midnight Sun
3. Jeg Gik Mig Ud En Sommerday, At Hore
4. Tivoli Stroll
5. Ach Värneland Du Sköna
6. Afternoon In Paris
7. The Quiet Cathedral

Kenny Drew - piano
Niels-Henning Ørsted Pedersen - bass
Ed Thigpen - drums

Recorded on November 29, 1980 in Copenhagen, Denmark.

Kenny Drew / Dark Beauty

ジャケットとタイトルから何やらメッセージ性の強いジャズを創造してしまうが、決してそんなことはない。「静」と「動」のバランスが取れたピアノトリオの演奏である。ケニー・ドリューの作品Dark Beautyをアルバムタイトルにして、それに相応しい写真を使いジャケットをレイアウトしている。

ドリューとペデルセンは、このアルバムの1年前にデュオアルバムDuoを録音。その続編を企画し、より密度を高めるためドラマーのアルバート・ヒースを迎え入れたのだろう。ペデルセンのベースが、ドラムが入ったことで自由度が増し、前作以上に冴え渡っている。ドリューのピアノも力強い。全8曲を通して聴くと、タイトル曲Dark Beautyが最も黒っぽくない演奏。

1. Run Away
2. Dark Beauty
3. Summer Night
4. All Blues
5. It Could Happen To You
6. Love Letters
7. Silk Bossa
8. Blues Inn

Kenny Drew - piano
Niels-Henning Orsted Pedersen - bass
Albert "Tootie" Heath - drums

Recorded on May 21 & 22, 1974 at Rosenberg Studio, Copenhagen, Denmark.

Kenny Drew / Duo

上質。いや、上品と言ったほうが良いかも知れない。ピアノとベース。最高の緊張を強いられる組み合わせ。一曲目でアルバム全体の雰囲気が伝わってくる。CD帯では「最小の編成でのインタープレイからニュアンスゆたかに生み出されるジャズとフォーク・タッチの美しい響き。稀有なデュオによる稀有な傑作」と表現。

ペデルセンのベースは極めて正確なピッチで、無駄な音が全く無い。ペデルセンがリードを取る箇所などでは、ケニー・ドリューはエレキピアノをさりげなく使用。アルバムが単調にならない工夫をしている。どの曲も素晴らしいが、極めつきは10曲目のHush-A-Byeだろう。CDでは、最終曲にボーナストラックが追加されたが、本来はこのアルバムの最後を飾る曲だった。

1. I Skovens Dybe Stille Ro
2. Come Summer
3. Lullabye
4. Kristine
5. Serenity
6. Det Var En Lørdag Aften
7. Do You Know What It Means To Miss New Orleans?
8. Wave
9. Duo Trip
10. Hush-A-Bye
11. I Skovens Dybe Stille Ro [alternate take]

Kenny Drew - piano, electric piano
Niels-Henning Ørsted Pedersen - bass

Recorded on April 2, 1973 at Wifoss Studios, Copenhagen, Denmark.