Jutta Hipp / Jutta Hipp With Zoot Sims

Jutta Hipp(ユタ・ヒップ)のWikipediaには、次のように書かれている。「ズート・シムズとの共作〈ユタ・ヒップ・ウィズ・ズート・シムズ〉の録音後、彼女は音楽業界から突如引退する。小規模のクラブでの演奏を好んでいた事、極度のあがり症であった事、音楽で生計を立てる事にあまり関心が無く、自分が感銘を受けない音楽を演奏・録音する事に気乗りがしなかった事などが原因とされている」。

つまり、本作の録音後に引退。ジャズ評論家Leonard Feather(レナード・フェザー)の力添えで、ヒップは1955年11月18日にドイツからアメリカへ渡ったのだが、最初から音楽は趣味の一部でしかなかったのだろう。結局のところ、1年にも満たない音楽生活であった訳である。本作はヒップ引退後の57年にリリース。Reid Miles(リード・マイルス)によるジャケットは、物事が崩れ去っていくことを示しているようにも思えてしまう。シムズとしても、ヒップとの一度限りだけの共演を惜しんだに違いない。

1. Just Blues
2. Violets For Your Furs
3. Down Home
4. Almost Like Being In Love
5. Wee-Dot
6. Too Close For Comfort

Zoot Sims - tenor saxophone
Jerry Lloyd - trumpet
Jutta Hipp - piano
Ahmed Abdul-Malik - bass
Ed Thigpen - drums

Recorded on July 28, 1956 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

John Lewis / Improvised Meditations & Excursions

邦題は『瞑想と逸脱の世界』。このタイトルだけを聞けば、コルトレーンやコールマンかと思ってしまう。しかも、演奏を聴いて、どこに「瞑想」のイメージがあり、どこへ「逸脱」するのか分からない。meditationは「瞑想、思索」であり、excursionは「逸脱、脱線」なので、邦題に問題はない。そもそも、このタイトルはジョン・ルイス自身なのか、それともプロデューサーによるものなのか。

MJQを除き、このルイスのリーダーアルバムは6作目。それまでピアノトリオで通したアルバムはなかった。つまり、彼にとっては新たな取り組みだった訳である。excursionの語源は「外に走り出ること」。そこから「未知の分野などに足を踏み入れること」という意味合いが含まれる。「即興で思索しながら、初のピアノトリオ・アルバム」と受け取ったほうが良いだろう。かなり意訳になるが、「ジョン・ルイスの新たな挑戦」。こんな邦題にしていれば、売り上げ倍増。だったかも知れない。

1. Now's The Time
2. Smoke Gets In Your Eyes
3. Delaunay's Dilemma
4. Love Me
5. Yesterdays
6. How Long Has This Been Going On
7. September Song

John Lewis - piano
George Duvivier - bass (tracks 1-3,7)
Percy Heath - bass (tracks 4-6)
Connie Kay - drums

Recorded on May 7 & 8, 1959.

Janis Joplin / Pearl

このアルバムは1970年9月5日に録音を開始したが、10月4日にジャニスが薬物の過剰摂取で急死したことにより、未完成となったことは良く知られている。所有するアルバムの歌詞カードには、ジャニスが死の当日に録音する予定だったBuried Alive In The Bluesが載っていない。この曲がずっと気になっていたので、ネットで調べたところジャニスの作詞が見つかった。邦題は「生きながらブルースに葬られ」である。

All caught up in a landslide, bad luck pressing in from all sides
Just got knocked off of my easy ride, Buried alive in the blues
すべてが地滑りに巻き込まれ 周りから不運が押し寄せてくる
誘惑からは振り落とされ 生きながらブルースに葬られてしまった

何とも意味ありげな詞であるが、楽器のみの軽快な演奏。これ以上、このアルバムに関しては、今さら何も書くことはない。1970年初めに熱いロックの時代があったという事実だけで十分である。

1. Move Over
2. Cry Baby
3. A Woman Left Lonely
4. Half Moon
5. Buried Alive In The Blues
6. My Baby
7. Me And Bobby McGee
8. Mercedes Benz
9. Trust Me
10. Get It While You Can
11. Tell Mama
12. Little Girl Blue
13. Try (Just A Little Bit Harder)
14. Cry Baby

Janis Joplin - vocals, guitar on "Me and Bobby McGee"
Richard Bell - piano
Ken Pearson - organ
John Till - electric guitar
Brad Campbell - bass guitar
Clark Pierson - drums
Bobby Womack - acoustic guitar on "Trust Me"
Bobbye Hall - conga, percussion
Phil Badella, John Cooke, Vince Mitchell - backing vocals
Sandra Crouch - tambourine

Recorded in September 5 - October 1, 1970.
Recorded on July 4, 1970 in Calgary during the Canadian Festival Express Tour (tracks 11 - 14).