John Coltrane / Blue World

カナダ国立映画制作庁NFBの委嘱で、映画監督Gilles Groulx(ジル・グルー)が、フランス語映画Le chat dans le sac(英題:The Cat in the Bag)を制作。その映画音楽としてコルトレーングループの録音をインパルス・レコードを通さずに依頼した。グルーは、ジミー・ギャリソンと交友関係にあったらしい。録音終了後に、グルーはマスターテープを母国カナダへ持ち帰ったのだが、録音の大部分は棚上げにしてしまった。NFBとインパルスの間での権利問題によって、録音から55年経った2019年9月27日にようやくアルバムがリリースされた。

メンバーは映画音楽用の録音と知らされていたはずだ。コルトレーンのディスコグラフィーを確認すると、タイトル曲Blue Worldは、この録音のために作った曲のようだ。それ以外は無難な選曲で、非常に抑えた演奏となっている。凄みがまったくない。グルーが棚上げにした理由は分からなくもない。それよりも、どんな演奏を依頼したのだろう。グルーは1994年8月に他界してしまい、謎のままだ。

1. Naima [take 1]
2. Village Blues [take 2]
3. Blue World
4. Village Blues [take 1]
5. Village Blues [take 3]
6. Like Sonny
7. Traneing In
8. Naima [take 2]

John Coltrane - tenor saxophone
McCoy Tyner - piano
Jimmy Garrison - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on June 24, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

John Coltrane / Crescent

失敗作である。コルトレーン自身のバラード作品を配置しながら、ブルースを1曲入れてしまった。このことで、アルバム全体のバランスが崩れている。1964年4月27日と6月1日のスタジオ録音から抜粋された全5曲であるが、他にSong Of PraiseやFeelin' Goodという曲も演奏している。なのに、なぜにブルースを組み込まなければならなかったのか。ライナーノーツでは、そんなことに一切触れていない。

「本アルバムの演奏にはバラードでありながら通常のバラード表現の域をはるかに超えた重量感といったものがあって、それがそのままコルトレーンの音楽の精神的充実を物語っている(LP:岡崎正通氏)」。「敬虔な響きと悲哀とリラクゼーションに満ちた〈クレッセント〉は、オーヴァーでも何でもなく、"20世紀の聖歌"だと真剣に思っている(CD:高井信成氏)」。この二人にライナーノーツを書かせたことも失敗である。

1. Crescent
2. Wise One
3. Bessie's Blues
4. Lonnie's Lament
5. The Drum Thing

John Coltrane - tenor saxophone
McCoy Tyner - piano
Jimmy Garrison - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on April 27 and June 1, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

John Coltrane / Coltrane live at Birdland

今日、7月17日はコルトレーンを聴く日。そう決めて何年経っただろう。コルトレーンの命日で、没後52年。80枚近い彼のアルバムを所有するものの、聴くたびに新たな発見がある。タイトルは「バードランド・ライブ」なのだが、全5曲中3曲が1963年10月8日のバートランドでの録音で、残り2曲は同年11月18日のスタジオ録音。その間に、コルトレーングループはヨーロッパツアーに出て、ストックホルム、オスロ、ヘルシンキ、コペンハーゲン、アムステルダム、パリ、ベルリン、シュトゥットガルトと回っている。

なぜに、10月8日のライブ演奏だけでアルバムを制作できなかったのか。詳細なディスコグラフィーを確認したところ、当日の録音テープを2曲分紛失(録音ミス?)したようだ。そのためか、ツアー後の11月18日にスタジオ入りしたが、ツアー疲れだったのか録音は2曲のみ。しかも、5曲目に収録されたYour Ladyは、マッコイのアドリブの途中でフェイドアウト。そんな状況で、無理矢理にリリースしたアルバムと言わざるを得ない。しかし、エルビンのドラムを中心に聴くと、鳥肌が立ってくる。ポリリズムのエルビンを体感するアルバムなのである。

1. Afro-Blue
2. I Want To Talk About You
3. The Promise
4. Alabama
5. Your Lady

John Coltrane - tenor saxophone, soprano saxophone
McCoy Tyner - piano
Jimmy Garrison - bass
Elvin Jones - drums

Tracks 1, 2 & 3
Recorded on October 8, 1963 at Birdland, NYC.

Tracks 4 & 5
Recorded on November 18, 1963 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.