John Coltrane / A Love Supreme

今日7月17日はコルトレーンの命日。所有するコルトレーン、いや全てのアルバムの中で、最も数多く聴いてきたのが本作。邦題『至上の愛』。4楽章で構成される組曲は、「承認」、「決意」、「追求」、「賛美」と訳された。このアルバムを聴くときは、その日にやることを全て終わらせてからだった。何かやり残しがあると、この組曲に集中できない。一人暮らしをしていた頃は、部屋の明かりを消してまで聴いた覚えもある。聴き終わったとき、何とも言えない爽快感が残る。ぎゅっと凝縮して、一気に解放されるのだ。

2002年10月23日にデラックス・エディションがリリース。1965年7月のフランスでの「至上の愛」ライブ演奏、そして、64年12月オリジナル録音の別テイクが追加された。写真入りの英文解説、読み応えのある日本語解説が入っていて、半透明のビニールケースに包まれた(2015年には別テイクを充実させたコンプリート・マスターズもリリース)。別テイクでは、オリジナルメンバー以外にアーチー・シェップとアート・デイビスが参加したが、実験で終わってしまっている。だが、この実験はアルバムAscensionのセッションで継続。つまり、「至上の愛」を録音した時、コルトレーンの中に次の構想が出来つつあったということだ。ジャケットに写るコルトレーンの鋭い眼光。「次なるものへ…」と語っている気がしてならない。そして、誰も踏み入れて来なかった、後戻りすらできない世界へ突き進んでいったのである。

Disc 1
1. Part 1: Acknowledgement
2. Part 2: Resolution
3. Part 3: Pursuance
4. Part 4: Psalm

Disc 2
1. Introduction by Andre Francis
2. Acknowledgement [live]
3. Resolution [live]
4. Pursuance [live]
5. Psalm [live]
6. Resolution [alternate take]
7. Resolution [breakdown]
8. Acknowledgement [alternate take]
9. Acknowledgement [alternate take]

John Coltrane - tenor saxophone, soprano saxophone, vocals
Jimmy Garrison - bass
McCoy Tyner - piano
Elvin Jones - drums
Archie Shepp - tenor saxophone (disc 2 tracks 8,9)
Art Davis - bass (disc 2 tracks 8,9)

Disc 1
Recorded on December 9, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Disc 2 tracks 1 - 5
Recorded on July 26, 1965 at the Festival Mondial du Jazz Antibes, Juan-les-Pins, France.

Disc 2 tracks 6 & 7
Recorded on December 9, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Disc 2 tracks 8 & 9
Recorded on December 10, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

John Coltrane / Blue World

カナダ国立映画制作庁NFBの委嘱で、映画監督Gilles Groulx(ジル・グルー)が、フランス語映画Le chat dans le sac(英題:The Cat in the Bag)を制作。その映画音楽としてコルトレーングループの録音をインパルス・レコードを通さずに依頼した。グルーは、ジミー・ギャリソンと交友関係にあったらしい。録音終了後に、グルーはマスターテープを母国カナダへ持ち帰ったのだが、録音の大部分は棚上げにしてしまった。NFBとインパルスの間での権利問題によって、録音から55年経った2019年9月27日にようやくアルバムがリリースされた。

メンバーは映画音楽用の録音と知らされていたはずだ。コルトレーンのディスコグラフィーを確認すると、タイトル曲Blue Worldは、この録音のために作った曲のようだ。それ以外は無難な選曲で、非常に抑えた演奏となっている。凄みがまったくない。グルーが棚上げにした理由は分からなくもない。それよりも、どんな演奏を依頼したのだろう。グルーは1994年8月に他界してしまい、謎のままだ。

1. Naima [take 1]
2. Village Blues [take 2]
3. Blue World
4. Village Blues [take 1]
5. Village Blues [take 3]
6. Like Sonny
7. Traneing In
8. Naima [take 2]

John Coltrane - tenor saxophone
McCoy Tyner - piano
Jimmy Garrison - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on June 24, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

John Coltrane / Crescent

失敗作である。コルトレーン自身のバラード作品を配置しながら、ブルースを1曲入れてしまった。このことで、アルバム全体のバランスが崩れている。1964年4月27日と6月1日のスタジオ録音から抜粋された全5曲であるが、他にSong Of PraiseやFeelin' Goodという曲も演奏している。なのに、なぜにブルースを組み込まなければならなかったのか。ライナーノーツでは、そんなことに一切触れていない。

「本アルバムの演奏にはバラードでありながら通常のバラード表現の域をはるかに超えた重量感といったものがあって、それがそのままコルトレーンの音楽の精神的充実を物語っている(LP:岡崎正通氏)」。「敬虔な響きと悲哀とリラクゼーションに満ちた〈クレッセント〉は、オーヴァーでも何でもなく、"20世紀の聖歌"だと真剣に思っている(CD:高井信成氏)」。この二人にライナーノーツを書かせたことも失敗である。

1. Crescent
2. Wise One
3. Bessie's Blues
4. Lonnie's Lament
5. The Drum Thing

John Coltrane - tenor saxophone
McCoy Tyner - piano
Jimmy Garrison - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on April 27 and June 1, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.