Herbie Hancock / Live Under The Sky

1979年7月26日と27日のライブ。2日目、伝説の雨の田園コロシアム。伝説かどうかは別として、そこに自分はいた。大学4年の時、就職先がすでに決まっていたのかどうか覚えていない。そんな先のことより、今日のジャズという生き方だった。それは、40年以上経った今でも、本質的には変わっていない。何枚かの千円札をジーンズの右手前ポケットに突っ込んで、田園コロシアムに向かった。

炎天下のコンサート。ところが、曲が進むにつれて、一気に上空は雲に覆われ大雨となった。それでも、演奏は途切れず。そして、演奏の幕切れとなったときは、澄み切った夏の夕空となっていた。帰りの電車の切符を買おうとしたとき、ポケットに入れていた千円札がずぶ濡れ。どうやって切符を買ったのかは覚えていない。翌8月、"Live Under The Sky '79"のTシャツを着て、清里へ遊びに行った。隣に写っている人とは、今でも同居している。

Disc 1 - July 26, 1979
1. Opening
2. The Eye Of The Hurricane
3. Tear Drop
4. Domo
5. Para Oriente
6. Pee Wee
7. One Of Another Kind
8. Fragile

Disc 2 - July 27, 1979
1. Opening
2. The Eye Of The Hurricane
3. Tear Drop
4. Domo
5. Para Oriente
6. Pee Wee
7. One Of Another Kind
8. Fragile
9. Stella By Starlight
10. On Green Dolphin Street

Wayne Shorter - tenor saxophone, soprano saxophone
Freddie Hubbard - trumpet
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums

Recorded on July 26 & 27, 1979 at the Den-en Coliseum, Tokyo.

Herbie Hancock / Five Stars

自分も体験した「あの伝説の雨の田園コロシアム」。その直後にスタジオで録音されたアルバム。当時、話題を集めていたダイレクト・カッティングという方式で録音された。テープを介さずに、直接レコードに刻みを入れていく方式。確かに最高の音質を確保できるのだろうが、LPのA面・B面に収めるための時間的制約があるのは事実。

なので、超一流のジャズマンの演奏であるが、最高のパフォーマンスになっていない。CD化によって、Skaglyと Finger Paintingは2つのテイクが収録。それぞれの2つの演奏時間はほとんど同じ。Skaglyは9分58秒と10分15秒。Finger Paintingは6分45秒と6分43秒。つまり、アドリブの勝負ではなく、時間厳守が勝負所。そもそも、ライブでの一発勝負を本領にしたV.S.O.P.のメンバーをスタジオに押し込め、時間制約まで課して制作したアルバム。音質重視とは作り手の自己満足とも言えるのだ。

1. Skagly [take 2]
2. Finger Painting [take 2]
3. Mutants On The Beach
4. Circe
5. Skagly [take 1]
6. Finger Painting [take 1]

Wayne Shorter - soprano saxophone, tenor saxophone
Freddie Hubbard - trumpet, flugelhorn
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums

Recorded on July 29, 1979 at CBS Sony Studio, Tokyo.

Herbie Hancock / Herbie Hancock Trio

CD帯から。「81年の来日時にレコーディングされた珠玉のトリオアルバム。ハービー、ロン&トニーによる究極のアコースティック・ジャズ決定盤」。この短い文章に間違いが2ヵ所ある。「究極」と「決定」。安易に使ってはイケナイ漢字。

三人の最高プレイヤーによる演奏であることは間違いなし。だけど、最高のプレイヤーが三人集まれば、究極のプレイになるとは限らない。ましてや、それが決定的なはずがない。考えてみれば分かる。このアルバムの録音のためだけに、この三人が来日する訳がない。スケジュールは組まれていたのだろうが、一日で録音は終えている。つまり、やれることをやっただけ。「うまい」けど「(印象に)残らない」。最高のプレイで、最低のジャズ。しかも、トニー・ウィリアムス作のラスト曲La Maison Goreeは、唐突に終わる。尻切れトンボのアルバムでもある。

1. Stable Mates
2. Dolphin Dance
3. A Slight Smile
4. That Old Black Magic
5. La Maison Goree

Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums

Recorded on 27 July 1981 at CBS Sony Shinanomachi Studio, Tokyo.