Gary Burton / Gary Burton & Keith Jarrett

CD帯から。「ゲイリー・バートンとキース・ジャレット。冒険心を持ちながらも、本質的にはロマンティストであるふたつの個性が見事な融和をみせている素晴らしいアルバムである。〈中略〉すべてのトラックがゆたかな詩情あふれるものばかりで、彼らのナイーブな音楽性にたっぷりと浸ることができる」。どうにもこうにも、安っぽいキャッチコピー。「冒険心」、「ロマンティスト」、「詩情」、「ナイーブ」という言葉を並べているだけで、全く本質に迫っていない。

二人のディスコグラフィーを見ると、共演したアルバムは本作のみ。タイトルは悩むことなく、二人の名前を連ねただけ。だが、その中身はロック、カントリー、ポップス、フリージャズ的な要素をぶちまけ、一発録りの「遊び」を試みている。70年代に突入し、未だに混沌としていたジャズシーンに一石を投じようとしたのではないだろうか。本作録音の1か月前、キースは、マイルスのフィルモア・イーストの4日連続ライブに参加。そこでのマイルスグループは、ロック連中の前座だった。キースは打開策の一つとして「ぶちまけ音楽」を思い付いたに違いない。

1. Grow Your Own
2. Moonchild / In Your Quiet Place
3. Como En Vietnam
4. Fortune Smiles
5. The Raven Speaks

Gary Burton - vibraphone
Keith Jarrett - piano, electric piano, soprano saxophone
Sam Brown - guitar
Steve Swallow - bass
Bill Goodwin - drums

Recorded on July 23, 1970 at A&R Studios, NYC.

Gary Burton / A Genuine Tong Funeral

『葬送』と訳されたアルバム。LPのライナーノーツで岩波洋三氏は、ゲイリー・バートンのことより、カーラ・ブレイを多く語り、最後にこんなコメントを残している。「こうして、ドラマチックな音楽作品〈葬送〉は幕を閉じる。ここに描かれたのは、人間の死に際して現れる人生模様であろうか。きき終わって、作曲家カーラ・ブレイのなみなみならぬ才能に、あらためて感心させられた」。つまり、岩波氏と言え、「ジャズ」という音楽から、このアルバムの価値を見いだせていない。当時においては。

一方、CDでは中山康樹氏が、こう書いている(2014年7月27日付け)。「ジャズ・ロックの先駆とされるゲイリー・バートン・カルテットは、その全盛期において、一方でこのような創造性豊かな野心作をも吹き込んでいた。いまにして思えば、その振幅の大きさもまた、きわめてロック的だった」。二人の異なる視点は興味深い。視点を作曲家へ置くのか、それとも音楽シーンなのか。ただし、中山氏は録音から46年後に書いているからこそ、マクロ的な視点を持ち込めたのだと思う。

1. The Opening (Inside The grave) / Interlude: Shovels / The Survivors - But Not For Long / Grave Train - The Last Ride Is Always Vertical (A philosophical Attitude Towards Death)
2. Death Rolls - Ancestors (A warning)
3. Morning - Part One (Morning Of A death)
4. Interlude : Lament / Intermission Music
5. Silent Spring (Contemplation)
6. Fanfare / Mother Of The Dead Man (A Gesture Of Sympathy)
7. Some Dirge - Hour Of The Wolf (Funeral Preparations)
8. Morning - Part Two (Morning Of The Funeral)
9. The New Funeral March (Journey To The Grave And Last Tributes)
10. The New National Anthem - Son Of Jazz (Life Goes On - Back Into The Fray) / The Survivors

Gary Burton - vibraphone
Leandro "Gato" Barbieri - tenor saxophone
Jimmy Knepper - trombone, bass trombone
Howard Johnson - tuba, baritone saxophone
Steve Lacy - soprano saxophone
Michael Mantler - trumpet
Carla Bley - piano, organ, conductor
Larry Coryell - guitar
Steve Swallow - bass
Bob Moses (credited as "Lonesome Dragon") - drums

Tracks 1 - 4 & 6 - 10
Recorded on November 20 & 21, 1967 at RCA's Studio B, NYC.

Track 5
Recorded on January 23, 1968 at RCA's Studio B, NYC.

Gary Burton / Duster

1960年代後半にロックの要素を取り入れ、このアルバムを作ったゲイリー・バートンは、むしろ早すぎたのかもしれない。エレクトリック・マイルスの幕開けとされるアルバムIn A Silent Wayは69年7月のリリース、ウェザー・リポートの結成は70年である。Wikipediaによると、"one of the first fusion records"と位置付けているが、時代を遡ると当てはまると言うことだろう。決して、本アルバムが一つの起点となって、クロスオーバー、そしてフュージョンにつながった訳ではない。

ただ、ギター以上にヴィブラフォンという楽器は、音楽のジャンルを超えて分け入ることができると言える。ギターが持っている瞬発的な力と、ヴィブラフォンの粘り腰。この組み合わせは、ロックでもあり、ジャズでもあって、そのどちらも吸い込んでしまう掃除機Dusterのようなものだ。

1. Ballet
2. Sweet Rain
3. Portsmouth Figurations
4. General Mojo's Well Laid Plan
5. One, Two, 1-2-3-4
6. Sing Me Softly Of The Blues
7. Liturgy
8. Response

Gary Burton - vibraphone
Larry Coryell - guitar
Steve Swallow - double bass
Roy Haynes - drums

Recorded on April 18, 19 & 20, 1967 at RCA Victor's Studio B, NYC.