Eric Dolphy / At The Five Spot Vol.1

1曲目Fire Waltzの出だし4小節で、いきなりのカウンターパンチ。緊張感とスピード感、しかもライブ録音。エリック・ドルフィーと同時代を生きて来なかった自分は損したと思ってしまう。こんなにもエキサイティングなジャズの時代があったのかと…。長文のライナーノーツを書いた悠雅彦氏は、全く違った視点で次のように嘆いている(1978年2月6日付け)。

「ぼくには今でも、何かにつけて残念に思うことがひとつある。それは、モダンジャズ史上最大の巨人のひとりセロニアス・モンクと、60年代前半、閃光のごとく強烈な一条の光を放ったまま突如帰らぬ人となった鬼才、故エリック・ドルフィーとが、レコード吹込みはおろか、ただのいちども相まみえることなく終わってしまったということである。これはジャズ史上、少なくともモダンジャズ史上における痛恨の一事であった、と言ってよいのではあるまいか」。

Vladimir Simosko(ウラジミール・シモスコ)とBarry Tepperman(バリー・テッパーマン)の著書『エリック・ドルフィー』(訳:間 章)に、1961年7月16日のファイブ・スポットでは9曲録音されたとある。ところが、CD化でBee Vampの別テイクが加わり10曲となった。ということは、まだ他の別テイクが残されているかも知れない。

1. Fire Waltz
2. Bee Vamp
3. The Prophet
4. Bee Vamp [alternate take]

Eric Dolphy - alto saxophone (tracks 1,3), bass clarinet (track 2)
Booker Little- trumpet
Mal Waldron - piano
Richard Davis - bass
Ed Blackwell - drums

Recorded on July 16, 1961 at Five Spot, NYC.

Eric Dolphy / Far Cry

1960年12月21日。ドルフィーにとっては極めて重要な日だった。オーネット・コールマンのアルバムFree Jazzの録音にバスクラリネットで参加。そして、その日の遅くから、自分のセッションに臨んだのである(晶文社『エリック・ドルフィー』より)。このアルバムから一曲を選ぶとなると、ドルフィー自身の曲でアルバムタイトルのFar Cryが捨て難いのだが、マル・ウォルドロン作のLeft Aloneとしたい。ドルフィーの吹くフルートが、この曲の持つ情景を見事に表現している。

最初のCD化でSereneが追加。更なるCD化で別のセッション2曲も加わったものの、ラスト曲Cliff Walkにドルフィーは参加していない。

1. Mrs. Parker Of K.C.
2. Ode To Charlie Parker
3. Far Cry
4. Miss Ann
5. Left Alone
6. Tenderly
7. It's Magic
8. Serene
9. T'aint Nobody's Business If I Do
10. Cliff Walk

Tracks 1 - 8
Eric Dolphy - bass clarinet (tracks 1,7), flute (tracks 2,5), alto saxophone (tracks 3,4,6,8)
Booker Little - trumpet
Jaki Byard - piano
Ron Carter - bass
Roy Haynes - drums
Recorded on December 21, 1960 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Track 9
Eric Dolphy - alto saxophone
Benny Bailey - trumpet
Kenny Dorham - piano
John "Peck" Morrison - bass
Jo Jones - drums
Abbey Lincoln - vocals
Recorded November 1, 1960 at New York Nola Penthouse Sound Studios, NYC.

Track 10
Booker Little - trumpet
Julian Priester - trombone
Walter Benton - tenor saxophone
John "Peck" Morrison - bass
Jo Jones, Max Roach - drums
Recorded November 1, 1960 at New York Nola Penthouse Sound Studios, NYC.

Eric Dolphy / Out There

一年のケジメをつける時季となった。ケジメという言葉で思い浮かべるジャズミュージシャンの一人がドルフィー。自分が吹き終わったフレーズにはケジメをつけてしまい、次のフレーズへ向かっていく。不連続な点の集まり。そして、彼が持っていたエネルギーは外へ発信するだけでなく、内部へ蓄積していく要素が多分にある。発散と収縮とでも言えようか。

このアルバムは「収縮」である。"Out There" = 「彼方へ」なのだが、彼方とは彼自身の内面のような気がする。それを意識して作り上げたアルバムかどうかは分からないが、ピアノやギターという和音楽器を組み入れていないところに、このアルバムの一つの価値がある。しかも、ベースに加えてセロを入れた構成は、「彼方へ」のコンセプトを十分に表現できている。ましてや、ジャケットが多くのことを物語っている。

1. Out There
2. Serene
3. The Baron
4. Eclipse
5. 17 West
6. Sketch Of Melba
7. Feathers

Eric Dolphy - alto saxophone, flue, B-flat and bass clarinets
Ron Carter - cello
George Duvivier - bass
Roy Haynes - drums

Recorded on August 15, 1960 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.